公開日:2018.11.06 | 最終更新日:2024.09.24
遺産分割協議書は自分で作れる? 協議書が必要なケースと作成の注意点、サンプルをご紹介します
1.遺産分割協議書ってどんなもの?
(1)遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは、簡単にいうと、「遺産分割協議の結果を明らかにする書面」のことです。
相続の大原則として、被相続人の意志が尊重されるので、遺言書がある場合は、遺産分割協議書の作成は必要ありません。
また、相続人が1人しかいない場合や法定相続分に基づいて相続する場合も、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
①遺言書がなく
②相続人が複数いる場合
③法定相続分とは異なった持分で相続する場合
このようなときは、遺産分割協議書を作成します。
(2)遺産分割協議書とは?
①あとのトラブルを防止する
遺産の分割は、相続人全員が納得の上で、行う必要があります。
1人でも納得しない人がいれば、遺産を分割することができません。
分割協議がまとまった場合は、きちんと書面にして、署名・捺印しておかないと、あとで違う意見が出たり、後々トラブルになることがありますので、ご注意ください。
②遺産分割の内容を明らかにする
遺産分割協議書は、契約書と同じであると考えてください。
口約束では、内容を忘れてしまったり、後々意見が食い違う場合が多いですし、内容をきちんと履行してもらうことは難しいです。
きちんと書面にすることで、お互いに内容を理解して、スムーズに手続きを進めることにつながります。
③遺産分割協議の内容を正確に保存する
遺産分割協議書は、相続人全員で署名・捺印をして、各自1通ずつ保管します。
それによって、あとで違う意見が出たり、遺産分割協議書の改ざんをしないように、きちんと管理することができます。
④相続の手続きを進める
不動産の相続登記や、相続税の申告の場合等に、遺産分割協議書が必要です。
役所はチェックが細かいので、遺産分割協議書の記載内容に注意して、形式に沿ってきちんと作成することが必要です。
(3)遺産分割協議書の効力とは?
①相続人間の契約書
遺産分割協議書は、相続人間で後々トラブルになった場合、遺産分割内容を証明する証拠になります。
きちんとした書面を、作成しておきましょう。
②相続手続きに使う証明書
遺産分割協議をした場合、不動産の相続登記や相続税の申告をする際に、遺産分割協議書の添付が必要です。
相続登記は法務局に、相続税の申告は税務署に対して行います。
役所に、どのような内容の分割協議を行ったのかを証明する必要があるため、遺産分割協議書を添付します。
不正を防ぐために、相続登記の場合は、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書に加えて、印鑑証明書の添付も必要です。
2.遺産分割協議書が必要なケースは?
(1)遺産分割協議書がない場合のデメリット
①不動産の名義変更等ができなくなる
前述のとおり、遺産分割を行った場合、不動産の相続登記手続きに遺産分割協議書が必要です。
そのため、遺産分割を行ったにも関わらず、遺産分割協議書を作成していない場合は、不動産の名義変更ができなくなってしまいます。
元々、被相続人と同居していて、相続財産である不動産に住んでいる場合でも、不動産名義は自分のものではない状態になってしまい、売却することもできません。
②他の相続人等に自分の財産を処分される可能性がある
遺産分割をしない限り、相続財産は、相続人の共有もしくは準共有状態にあります。
遺産分割をしないでいると、その間に、勝手に相続財産を処分してしまう相続人が出てきてしまう可能性があります。
その場合、損害賠償請求等のために訴訟をしなくてはならず、訴訟が終了するまで長い期間を要したり、勝手に相続財産を処分してしまった相続人がすでに金銭を消費していて、現実には回収ができないなどの問題が生じる可能性もあります。
③相続税の控除を受けられない可能性がある
相続税には納付期限があります。
相続開始の翌日から、10ヶ月以内です。
10ヶ月を過ぎても納付しない場合は、延滞金がかかってしまいます。
遺産を相続税の申告期限までにきちんと分割することで、相続税の納付をスムーズに行うことができ、配偶者控除等の控除を受けることもできます。
控除を受ける場合と受けない場合では、相続税の納税額に大きく差が生まれてくることがあります。
相続税の申告期限内にきちんと遺産分割を終えて、遺産分割協議書を作成されることをおすすめします。
(2)遺産分割協議書が必要または不要の判断は?
①遺産分割がまとまったが、あとあと紛争になる恐れがある場合は必要
遺産分割協議がまとまった場合に書面化しないでいると、あとで意見が食い違ったりして、紛争になる場合があります。
遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成して、きちんと署名・捺印をして保管しましょう。
②法定相続分以外で不動産を相続する際は必要
相続財産内に不動産(土地・建物・マンション等)がある場合は、法務局に「相続登記」を申請する必要があります。
その際、法定相続分(法律で決まっている相続持分)で相続する場合は、遺産分割協議書を添付する必要はありません。
遺産分割をして、実際に住む方のみが不動産を相続する場合等、法定相続分以外で不動産を相続する際は、法務局に遺産分割協議書を提出する必要がありますので、作成が必要になります。
③法定相続分で相続する場合は不要なケースも
法定相続分とは違う持分で相続したい場合に、遺産分割協議をすることになります。
そのため、法定相続分のままで相続する場合は、遺産分割協議を行わないので、遺産分割協議書の作成は不要です。
ただ、完全に法定相続分どおりに遺産を分割することは難しいので、遺産分割協議を行う場合が多いです。
④遺言書がある場合は不要なケースも
相続財産は、基本的に被相続人が自由に処分していいものなので、遺言書がある場合は、遺言書に従うのが原則です。
遺言書に従って相続をする場合は、遺産分割協議をする必要がないので、遺産分割協議書の作成も不要になります。
ただ、遺言書とは違う持分にしたい場合は、遺産分割協議をすることも可能です。
その場合は、遺産分割協議書の作成が必要になります。
3.遺産分割協議書のサンプル(雛型)と作成上の注意点
(1)遺産分割協議書のサンプル(雛型)
遺産分割協議書
被相続人 甲野一郎(昭和〇年〇月〇日生まれ)
死亡日 平成〇年〇月〇日
本籍地 東京都〇〇
最終の住所地 東京都〇〇
被相続人甲野一郎の遺産相続について相続人全員が遺産分割協議を行い、下記のとおり被相続人の遺産を分割することに合意した。
1.下記不動産については、被相続人の妻甲野愛子が相続する。
記
所在 東京都渋谷区〇〇
地番 〇番○
地目 宅地
地積 〇平方メートル
所在 東京都渋谷区〇〇
家屋番号 〇番〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建て
床面積 1階部分 〇㎡
2階部分 〇㎡
2.下記預貯金は、長男甲野太朗が相続する。
記
〇銀行〇支店
普通預金 口座番号〇〇
口座名義人 甲野一郎
3. 本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産については、相続人甲野太朗がこれを取得する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証明するため、本協議書を2通作成し、相続人全員が署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。
平成〇年〇月〇日(作成日の日付)
住所 東京都
相続人 (妻)甲野愛子 実印
住所 東京都
相続人 (長男)甲野太朗 実印
協議書に記載する項目
遺産分割協議書に記載すべき事項は、主に以下3点です。
- 被相続人の表示
誰の相続かを明らかにするために、名前・本籍・死亡日・最後の住所地等を記載することで、被相続人を特定します。 - 相続人の表示
誰が、どの相続財産を相続するのかを明らかにすることが必要です。
また、相続人全員の住所・氏名を記載して、相続人を特定します。
遺産分割協議書には、相続財産を取得する、しないに関わらず、相続人全員が署名・捺印する必要がありますので、注意してください。
必ず本人が署名し、実印で捺印するようにしましょう。 - 相続財産の表示
相続財産の表示については、不動産については登記簿のとおり、自動車は登録証により、正確に記載する事が必要です。預貯金、株式、生命保険解約金等の金融商品は、証券や通帳のとおりに、正確に特定して記載してください。
(2)作成上の注意
遺産分割協議書の書き方には特定の決まりはなく、手書き、パソコンどちらでも作成可能です。
下記事項に気をつけて作成してください。
- 被相続人の表示、相続人の表示、相続財産の表示を、きちんと記載する
- 住所、署名は自筆の方が適切。押印は実印でおこなう
- 相続財産の処分内容を具体的に記載する
4.まとめ
遺産分割協議書の作成には、さまざまな注意点があります。
作成の過程で相続人の間でトラブルが発生し、手続きがうまく進まない場合もあります。
そのため、遺産分割協議書の作成にあたり、ご不明点や不安なことがあれば、できるだけ早くご相談ください。
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