公開日:2018.11.09 | 最終更新日:2024.09.24
自己破産のデメリットを知って、自己破産の制度を上手く活用するには
1.自己破産をすることで起こるデメリット
「毎日借金の返済のことで頭がいっぱい」、「債権者からの電話や訪問などの取り立てが怖い」など、借金のことで悩んでいると普通の生活を送ることが難しくなりますよね。
そういった方の負担を軽減できるのが債務整理です。
なかでも自己破産は、多額の借金を抱えた方が借金の返済を免除してもらい、新たな人生をスタートできるように国が設けた救済措置になります。
もちろん、メリットだけでなく債務者が負うデメリットも存在しますので、自己破産を正しく理解して検討をしていきましょう。
(1)ブラックリストに載りローンが組めずクレカも作れなくなる
自己破産をすると、信用情報機関に金融事故情報として記載されます。これが、いわゆるブラックリストに載るということになります。データは5~7年ほど残り、その間は新たにローンを組むことや、クレジットカードを作ることができません。
また、自己破産をしても今住んでいる賃貸アパートやマンションはそのまま住み続けることができますが、新たに賃貸契約をする場合は、保証会社の審査が通らない場合があります。
金融事故情報のデータが削除されれば、制限は無くなり普通の人と同じ生活を送ることが出来ます。
(2)家や車などの財産は没収される
自己破産した場合、所持している財産は没収され、現金に換えられてから債権者に分配されます。ですから、高価な持ち家や車は継続して保有することはできません。
また、生命保険や学資保険の解約払戻金が20万円以上ある場合も没収の対象になってしまいます。
ただし、価値が20万円以上無いものは没収されないので、多くの日用品や家具家電はそのまま使い続けることができますのでご安心ください。
(3)一部の資格や職業で制限を受けることや資格はく奪の可能性もある
破産手続きを開始すると、破産者という扱いになり一部の職業や資格に制限が発生します。
制限がある間は資格を使うことができなくなり、その仕事に就くこともできなくなります。
代表的な職業は下記になります。
- 弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの士業
- 生命保険募集人
- 警備員
- 旅行業務取扱の申請者
- 貸金業者の登録者
制限がかかるのは自己破産の手続きをしている間だけです。裁判所に申立てを行ったあとに免責決定がでて借金が免除されると制限が解除されます。制限される期間は一般的に3カ月~6ヶ月ほどになります。
(4)官報に破産情報が載る
破産手続きをすると、国の機関紙である官報に住所、氏名、裁判所などが記載されます。ただし、官報を見ている一般の方は少ないと言われており、自己破産したことが周囲に知られる可能性は非常に低いので、あまり心配する必要はありません。
(5)引っ越しや旅行に行く場合は裁判所の許可が必要
破産手続中の引っ越しや長期の旅行をする場合は、裁判所の許可が必要になる場合があります。
もし、自己破産をするときに持ち家や車、有価証券などの財産を持っていた場合は、破産手続きをする管財事件という扱いになり、裁判所から選ばれた破産管財人が財産の調査をし、清算して債権者に配当します。
その際の手続きを円滑に進めるためにも、破産者の所在地を把握する必要があるので、引っ越しや長期の旅行に行く場合は裁判所の許可が必要になるのです。
また、居住地が制限される理由としては、破産者が逃亡したり財産を隠したりするのを防止するためだと言われています。
財産が無い場合は、破産管財人が必要ないので、破産手続きの開始と廃止を同時に行う同時廃止事件として扱われます。この場合は、引っ越しや旅行は自由に行くことができます。
(6)手続きには弁護士費用がかかる
債務者自ら破産の申し立てをすることも可能ですが、一般的には弁護士に依頼することが多いです。
弁護士に依頼するときにかかる費用は、依頼時に発生する着手金と、依頼した事件が成功した場合に払う報奨金があります。依頼すればそれなりの費用が発生するのですが、債権者からの取り立てを止めたり、煩わしい手続きを代わりにやってくれたりと大きなメリットがあるのは確かです。
2.家族や職場など周囲への影響
(1)職場にはばれないが家族に内緒は難しい
自己破産をしても会社からお金を借りていなければ、基本的にばれることはありません。
ただし、自己破産の手続きには給与明細や源泉徴収票を裁判所に提出しなければいけないので、書類を入手する際には会社に理由を説明しなければならないこともあります。
自己破産をすると家や車などの財産を没収されてしまうので、家族に内緒で破産手続きを進めるのは難しいでしょう。そのため、手続き前にはきちんと説明をして理解をしてもらうことが大切です。
(2)家族が連帯保証人の場合は借金が移る
自己破産をすれば、借金は免除されます。しかし、連帯保証人がいれば、その人に借金が移ることになります。その結果、保証人も返済ができずに自己破産してしまうケースも多く見受けられます。自己破産をすると連帯保証人に迷惑がかかってしまうことを理解しておきましょう。
連帯保証人になっていなければ破産者の家族でも借金を返済する必要はありません。
もし、債権者が取り立てをしてきた場合は違法行為になります。
(3)持ち家は没収される
自己破産をすると、持ち家や土地などの不動産は競売にかけられます。買い手が見つかるまでは住み続けることができますが、見つかれば手放さなくてはなりません。
しかし、賃貸アパートやマンションは借りることができるので、住む場所が無くなってしまうということはありません。
(4)破産手続き後に復権できなければ資格はく奪により失業も
破産手続き中は一部の資格や職業に制限がでることがあります。
多くの場合は、破産手続き後に裁判所が免責を許可し、借金が無くなると同時に職業上の資格もはく奪されます。
ブラックリストには5~7年掲載されますが、資格の場合はブラックリストに掲載されているかどうかとは別問題です。自己破産後、一定の期間を得たあとに、資格の復権を申請し、認められれば再びその職業に就くことができます。
一定の期間については、資格ごとに定められており、どのような条件で復権できるかも異なります。「〇年経てば復職できる!」と一概には言い切れないので注意が必要です。
3.自己破産でよくある間違った情報
(1)戸籍や住民票に記録が残る?
戸籍や住民票に自己破産した事実が記載されることはありません。
例えば、結婚を考えている場合、自己破産をしたことを相手に申告をしない限りは影響がありません。ただし、自己破産した後の5年~7年はローンやクレジットカードの審査が通らないため、きちんと伝えなければいけない場面があるかもしれません。
(2)選挙権がなくなる?
選挙権は、18歳以上で日本国籍があれば、全員に平等に与えられた権利なので、自己破産したからといって権利が無くなるわけではありません。
(3)パスポートが没収されて海外旅行に行けなくなる?
自己破産をしてもパスポートは発行できますし、今持っているパスポートを没収されることもありません。また、パスポートに自己破産をした事実が記載されることもないので、入出国の審査が厳しくなるということもありえません。
ただし、管財事件の場合、破産手続き中は海外旅行へ行くのに裁判所の許可がいるなどの制限がかかることはあります。
(4)自己破産後に生活保護は受けられない?
自己破産をした後でも生活保護を受けることができますし、生活保護を受けている方が自己破産をすることもできます。
そもそも自己破産と生活保護は関係が無いので、生活保護を受給できる条件が整っていれば問題ありません。
生活保護を受給するには下記の条件に合っている必要があります。
- 援助してもらえる家族や親戚がいない
- 資産や財産を持っていない
- ケガや病気などが理由で働くことができない
- 毎月の収入が市町村の定める基準を下回っている
この条件が満たされていれば、自己破産をした後でも生活保護が受給できる可能性があります。
(5)クレジットカードは使えなくなる?スマホや携帯は解約?
今持っているクレジットカードは使用できなくなります。
クレジットカードで分割払いやキャッシングをしている場合、破産手続きを開始するとすぐに信販会社に連絡がいき契約が解除されてしまいます。
その後、信用情報機関に金融自己情報が載っている5~7年間は新規にクレジットカードをつくることはできません。
どうしてもクレジットカード払いが必要な場合は、口座の残高と連動しているデビットカードであればつくることが可能です。デビットカードは口座残高以上の支払いはできないので安心して使うことができます。
お持ちの携帯電話、スマートフォンはそのまま使用できます。
また、毎月の利用料金は公共料金と同じ扱いになるので、支払いをしても問題ありません。
ただし、利用料金の滞納や端末購入時の割賦が残っている場合は、破産債権として申請する必要があります。
そのため、滞納した利用料金は免責により自分で支払うことができなくなるので、契約は解約になり、通話や通信をすることができなくなります。また、割賦が残っている携帯端末は返却する必要はありませんが、制限がかけられるので、使用することも売却することもできなくなります。
免責許可がでれば再度契約をすることは可能ですが、端末は割賦で購入することができなくなるので一括で購入する必要があります。
4.自己破産する前に判断するポイント
(1)家や車などの大きな財産があるか
自己破産をすると、家や車など大きな財産は全て没収されてしまいます。
もし、失う財産が多すぎる場合は他の債務整理を検討されたほうが良い場合もあります。
例えば、個人再生という債務整理であれば家や車を残したまま借金を大幅に減らすことも可能です。もちろん、免除ではないので残った借金は返済する必要がありますが、負担は大きく減らすことができます。
(2)固定収入がある場合は返済の目途をつける
自己破産は、借金が全て免除される代わりに財産を没収されてしまうなど、代償がとても大きくなります。そのため、多額の借金があり返済の目途が立たない方がするための最終手段だと思ってください。
もし、ある程度の収入があるのなら、他の債務整理を検討し返済を計画的におこなったほうが、失う財産が少なくなる可能性があります。
(3)長期返済をしていれば過払い金による債務整理もできる
2010年以前から返済を続けている方は、法律で決められた利率よりも高額な利息を払っている可能性があります。その場合は、債務整理をし、過払金返還請求をすることで、払いすぎていた利息を元本の返済にあてることができます。さらに、過払金が多かった場合は元本から差し引いたときに完済になってしまうこともありますし、元本を上回っていた場合は払いすぎたお金が返ってくる可能性もあります。
(4)失う財産が少ない場合は自己破産の選択も有効
自己破産をしても99万円以下の現金と20万円以下の預貯金は手元に残すことができますし、価値が20万円以下の家具家電や生活必需品はそのまま使うことができます。
債権者からの取り立てや、返済のことで頭を悩ませているのであれば、自己破産をすることも有効な手段です。すぐに手続きをして、取り立てと借金を無くし、新たなスタートを切った方が生活の立て直しも早くなります。
まとめ
今回は、債務整理の中の自己破産のデメリットについてお伝えしました。
借金が膨らんで返済ができないからと言って安易に自己破産を選択してしまうと、大切な財産を失ってしまったり、周りの人に迷惑をかけてしまったりすることも考えられます。
借金のことでお悩みであれば、まずは弁護士に相談をしてみてください。その場で最適な債務整理の方法が見つかる可能性があります。
新小岩法律事務所は、債務整理に関する無料相談をおこなっております。土日も相談に対応しておりますので、お気軽にご連絡ください。