公開日:2019.10.09 | 最終更新日:2024.09.24
離婚するときに子供の親権を獲得するまでの流れ
離婚をする際に問題になるのが、子どもの親権です。
未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、子どもの親権者はどちらか一方に決めなければいけません。
夫婦間の話し合いで解決するなら親権者はすぐに決まりますが、どちらも親権を譲らなければ、第三者が間に入っての話し合いや、裁判にまで発展することも少なくありません。
夫婦で子どもの親権を争う場合、なるべく有利な状況を作ることで親権を取りやすくなります。
ここでは、離婚の際、子どもの親権を取る方法と有利になるポイント、不利になるポイントを解説します。
1.親権とは?
親権とは、未成年の子どもを持つ親が、社会的に未成熟な子どもを守り、育てていくための権利や義務のことです。
子どもの親権を持つ人は親権者と呼ばれ、子どもに対して下記の権利を与えられます。
①居所指定権
未成年の子どもが住む場所を指定できる権利。
②懲戒権
未成年の子どもに対して、子どもの利益や教育上のために叱ることができる権利。
③職業許可権
未成年の子どもが働くことに対して、許可することや辞めさせることができる権利
④身分行為の代理権
未成年の子どもが法的な手続きをする際に同意することや、代理人になることができる権利
⑤財産管理権
未成年の子どもが所有している財産を管理できる権利
子どもと一緒に住むことができる権利は居所指定権です。親権が無くなると、子どもと一緒に住むことができなくなるため、面会交流権をつかって面会するときにしか会うことができなくなります。
2.親権を得るまでの流れ
親権者を決める際は、話し合いですぐに決まる場合もあれば、そうでない場合もあります。
夫婦が離婚する際に、子どもの親権者を決める場合は、下記の段階によって進んでいきます。
(1)協議
離婚する際に、子ども親権について夫婦で話し合い、親権者を決定する方法です。親権者が決まったら離婚届の「未成年の子の氏名」の欄に、「夫が親権を行う子」または「妻が親権を行う子」のどちらか一方に子どもの氏名を記入します。あとは、離婚届けを役所に提出し受理されれば、子どもの親権者が決まります。
子どもの親権者を協議で決める場合、口頭で確認するだけだと証拠が残らないため、財産分与や慰謝料、子どもの養育費や面会頻度などの条件は、離婚協議書を作成して残しておきましょう。
(2)調停
離婚する際、子どもの親権を夫婦のどちらも譲らず、協議で決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停では、家庭裁判所で編成された調停委員が夫婦の間に入り、お互いの主張を確認し、合意に向けた提案と話し合いを行います。調停での話し合いの結果、夫婦の合意が得られれば、子どもの親権者が確定します。
調停の間は、夫婦がお互いに顔を合わせて話し合うことがありません。そのため、自分の主張を相手に伝えやすくなります。
また、調停では親権者だけでなく、子どもの養育費や面会などの条件も含めて裁判所が作成した調停調書に残されます。調停調書は、裁判所の判決と同じ効力があるので、条件が守られなかった場合、強制執行などの対応がとれます。
ただし、調停を申し立てて親権を取るには、主張や条件を調停委員に正しく説明しなければいけません。調停委員との受け答え次第では不利になってしまうおそれがあるため、弁護士を立てることをおすすめします。
弁護士を立てることで、当事者に代わって調停委員との話し合いを進めてくれるため安心です。
(3)審判
調停による話し合いでも合意を得られず、子どもの親権者が決まらない場合は、審判によって親権者を決めます。審判とは、当事者から提出された書類や調査に基づいて、裁判官が判断を決める方法です。
そのため、審判では、調停のような夫婦の主張は一切考慮されません。裁判官は、夫婦それぞれから提出された書類や調査に基づいて、どちらが親権者として相応しいかを決定するだけです。
ただし、相手が裁判所の決定に納得できない場合、審判の決定が出てから2週間以内に裁判所へ異議申し立てを行えば、決定を無効にすることができます。
審判では、異議申し立てをすることで簡単に決定が無効化できてしまうため、調停で親権者が決まらなかった場合は、審判ではなく訴訟に移行することが多くなっています。
(4)訴訟
親権者が決まらない場合に、最終的に行うのが訴訟(裁判)です。訴訟では、親権者にふさわしいことを証明するための証拠が必要です。そのため、審判同様に書類や調査による資料が必要です。裁判官はその資料を基に判決を下します。
また、訴訟は、調停をしていなければ行うことができないため、協議で解決しなかったからすぐに裁判を起こすということはできません。
訴訟をする場合には、法的書面の準備や、裁判所で発言する必要があります。そのため、準備をする時間が無い人や、自身の無い人は、弁護士を立てて当事者の代わりに動いてもらうことをおすすめします。
3.親権を獲得するのに有利なポイント
協議以外で親権を争う場合は、母親の方が有利であることが多いです。裁判所が発表している、「平成28年度『離婚』の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち未成年の子の処置をすべき件数―親権者別―全家庭裁判所」によると、平成28年度に行われた調停離婚,協議離婚届出の調停成立又は調停に代わる審判による審判離婚の事件は、全部で20,691件です。
そのうち、母が親権者になったのは19,314件で全体の90%以上になっています。これは、子どもにとって母親の存在が重要であるとした母性優先の原則があるからです。
また、子どもの育児に関わった時間も親権を決める大きなポイントになり、父親よりも母親の方が長い傾向があるため、親権を得られる確率が高くなっています。
しかし、母性優先の原則は有利になる一つの要因であり、それ以外にも親権を得るために有利になるポイントがあります。
①子どもの意思
子どもの親権が夫婦のどちらかになるかは、子ども自身の意思も尊重されます。そのため、子どもが自分の意向を伝えられる年齢であれば、どちらを親権者として選ぶのかを裁判所が子どもに確認することで、親権を選ぶ際に反映します。
ただし、親の圧力によって、子どもの意向と反することを無理矢理言わされている場合がるので、裁判所が確認する際は、親のいないところで慎重に調査を進めていきます。
②収入がある
子どもを健全に育てるためには、衣・食・住に必要な収入が必要です。そのため、無収入よりは、働いており収入が少しでもあったほうが有利です。
4.親権を取るために不利になるポイント
親権を取るには、子どもをきちんと育てられるか証明できることが重要です。そのため、下記のような習慣がある人は、親権争いで不利になる場合があります。
・虐待や育児放棄の疑いがある
・ギャンブルや飲酒、喫煙などに依存している
・健康状態が良くない
・経済的な余裕がない
不倫や浮気などの不貞を行った場合は、離婚理由にはなりますが、親権を得るために不利になる可能性は低いです。それよりも、不貞を行っている間にきちんと育児を行っていたかという点が親権を取ることに影響します。
5.親権を取られたら二度と取り返せない?
離婚の際に失った子供の親権は、裁判所に親権者変更の申立を行うことで、取り戻せる可能性があります。
ただし、親権者変更をするには、子どもの親権者が、子どもに対して虐待を行っていたり、育児放棄をしていたりと、親権者として不適切であると証明することが必要です。
単に、子どもと一緒に居たいなどの理由では親権者変更をすることは困難です。
6.まとめ
子どもの親権は、一度取られてしまうと取り返すことが難しくなります。そのため、親権を取るためには万全の準備が必要です。
また、親権争いが長期化することで、子どもの成長にも悪影響があるおそれがあります。そのため、問題を早期に解決するためにも、まずは弁護士に相談をしてください。
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