公開日:2019.12.29 最終更新日:2024.09.24

不動産を財産分与したときの税金はいくらかかるのか?

財産分与は、夫婦の共有財産を離婚する際に清算する目的で行われるため、原則として税金はかかりません。
そうすると、婚姻中に購入した住居用のマンションや戸建て住宅、土地などの不動産は、夫婦の共同財産として、離婚をする場合には財産分与の対象となりますので、財産分与として上記の不動産を相手方に分与するときには、税金がかからないようにも思えます。しかし、不動産を財産分与するときの状況によっては、税金がかかるケースがあるため確認が必要です。

ここでは、不動産を財産分与したときにかかる税金について解説します。

1.不動産を財産分与したときにかかる税金

不動産を財産分与したときにかかる税金は、「不動産を財産分与する側」と「不動産を財産分与される側」という立場の違いによって種類が変わります。

それぞれの立場に関わってくる税金は下記の通りです。

■不動産を分与する側
・譲渡所得税

■不動産を分与される側
・登録免許税
・固定資産税

なお、財産分与は、所有している夫婦の共有財産を離婚時に清算するためのものです。そのため、不動産の財産分与では、財産を無償で受け取ったときにかかる贈与税や、不動産を購入したときにかかる不動産所得税の支払いは原則としてありません(ただし、贈与税については下記5も参照してください。)。

2.不動産を財産分与する側にかかる税金-譲渡所得税

不動産を分与する側には、譲渡所得税が課税されることがあります。この譲渡所得税とは、土地・建物・株式など資産を譲渡した際の利益(譲渡所得)に対して課税される税金です。

(1)譲渡所得(課税譲渡所得金額)の計算式

譲渡所得の有無(課税譲渡所得金額)は、下記の計算式で決まります。

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額

(2)収入金額

(1)の計算式にいう「収入金額」とは、通常土地や建物を売ったことによって買主から受け取るお金の額になりますが、財産分与の場合には分与した時の土地・建物の時価になります。
たとえば、婚姻中に夫が購入したマンションが、財産分与したときの時価が4,000万円であった場合、4,000万円が収入金額になります。

(3)取得費及び譲渡費用

(1)の計算式にいう「取得費」とは、譲渡(分与)した土地・建物を買った時の購入代金や仲介手数料の合計額になります。また、「譲渡費用」とは、不動産の売却の事例であれば、仲介手数料、測量費など土地・建物などを売るのに直接要した費用、貸家の売却に伴って支払った立退料、建物を取り壊して土地を売ったときの取壊し費用になります。

(4)特別控除額

土地・建物を譲渡した場合の特別控除にはいくつかのものがありますが、財産分与との関係で適用がありそうなものは、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例になります。この特例により、マイホームなどの居住用財産を譲渡したときは、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を控除することができます。

なお、この特例は居住用財産を譲渡した場合に適用されるため、別荘には適用されません。また、この特例は、親子や夫婦といった特別な関係のない方に居住用財産を譲渡したときに適用されます。そのため、離婚をする前に夫婦の一方が他方にマイホームを譲渡したときには、この特例は適用されません。

例えば、ある夫婦が離婚をし、財産分与として婚姻中に夫が購入したマイホームを妻に分与する場合、マイホームの分与時の時価が4,000万円、取得費が3,000万円であり、特別控除により最高3,000万円の控除を受けたとしますと、課税譲渡所得金額は0円となり譲渡所得税の課税はないことになります。
他方、上記不動産が別荘だとしますと、特別控除の適用がないため、課税譲渡所得金額は時価額4,000万円-取得費3,000万円の1,000万円となります。

離婚する夫婦がそれまで居住していた自宅については、この特別控除の適用があり、時価額が購入時の金額を3,000万円以上上回るケースはまれなため、実際には譲渡所得税の課税されるケースはほとんどないことが分かります。

(5)税率

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって変わります。
財産分与する不動産の所有期間が5年以内であれば「短期譲渡所得」となり、譲渡所得税の税率は39%(住民税9%)です。他方、不動産の所有期間が5年以上であれば、「長期譲渡所得」になるため、軽減税率が適用されることで税率は20%(住民税5%)となります。さらに、令和19年までは、復興特別所得税として2.1%が併せてかかります。

(1)から(5)まででお分かりいただけるとおり、財産分与に際して譲渡所得税が課されるかどうかは、税金に関わる法律の正確な知識が必要となりますので、弁護士・税理士といった専門家にご相談されるのがよいと思います。

3.財産分与で不動産を分与される側が支払う税金

財産分与で不動産を分与される側が支払う税金には、「登録免許税」と「固定資産税」の2つがあります。

財産分与で不動産を受け取った後に税金の支払いで困らないようにどれくらいの税金がかかるのか確認しておきましょう。

(1)登録免許税

財産分与の際に不動産の所有者を変更する場合、法務局へ不動産の登記申請を行います。その登記申請の際に支払うのが登録免許税です。登録免許税は、建物や土地の状況によって税率が異なりますが、財産分与では、すでに所有者がいる中古の建物の登記申請を行うため、税率は土地と建物の評価額に対して2%です。

たとえば、土地と建物を合わせた評価額が1,000万円の不動産を財産分与して登記を変更する場合、登録免許税は1,000万円×2%=20万円になります。ただし、登録免許税は不動産の築年数や設備によっては軽減税率が適用されることがあるため、弁護士に相談することをおすすめします。

(2)固定資産税

財産分与によって不動産の所有者になった場合、固定資産税の支払いが必要になります。
固定資産税とは、不動産の所有者に毎年課せられる税金です。固定資産税の標準税率は、不動産の評価額の1.4%です。

たとえば、評価額2,000万円のマンションを所有している人は、2,000万円×1.4%=28万円の固定資産税を毎年支払います。固定資産税の税率は、住んでいる地域によって変わるため、都市部などでは1.4%よりも高くなることがあるので、お住まいの役所へ確認が必要です。

4.財産分与する不動産の住宅ローンはどうなるのか?

住宅ローンの残債がある不動産は、財産分与をして不動産の所有者が変わったとしても、住宅ローンの契約者が返済を続けます。住宅ローンは、金融機関と契約者の間の問題なので、不動産の所有者が変わることは関係ないからです。

たとえば、夫婦が婚姻中に購入したマンションの名義人と、購入時に組んだ住宅ローンの契約者がどちらも夫だった場合、財産分与でマンションの名義人が妻になったとしても、住宅ローンの契約者は変わらないので夫が返済を続けます。

財産分与するときの住宅ローンの返済については「夫婦が抱えている借金は離婚したらどちらが返済するのか? 」のコラム記事を参考にしてください。

5.財産分与だと認められない場合は贈与税がかかることがある

財産分与の場合であっても贈与税がかかるケースとして、国税庁の公式サイトには下記の内容が記載されています。

1 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合
この場合は、その多過ぎる部分に贈与税がかかることになります。
2 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
この場合は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。
引用:国税庁公式サイト

贈与税の税率は、受け取った財産の金額によって下記のように変動します。

【一般贈与財産の税率】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

引用:国税庁公式サイト

財産分与では、一般的に財産を折半しますが、妻が専業主婦などで経済的に弱い立場にいる場合、離婚後の生活を考えて財産分与の割合を増やすことがあります。しかし、婚姻中の夫婦生活の貢献度や様々な事情を考慮しても、財産分与の割合が一方に偏っている場合は、贈与税がかかってしまうことがあるのです。

婚姻中の夫婦生活によって財産の金額が違うため明確な基準はありませんが、財産分与する際は、注意する必要があります。

6.まとめ

不動産の財産分与は、弁護士に依頼することで財産分与の金額の算出や面倒な手続きを行うだけでなく、相手との話し合いもしてくれるため、スムーズに終わらせることができます。

不動産の財産分与について気になる人は、弁護士の無料相談を利用してみましょう。

新小岩法律事務所では、予約により平日20:00開始の無料相談も行っております。当事務所は新小岩駅南口徒歩1分の場所にありますので、小岩、新小岩、平井、亀戸、錦糸町など、総武線沿線の地域にお住まいの方は、仕事帰りにぜひご活用ください。当事務所では、上記の地域だけでなく市川、船橋や松戸の方からもご相談をいただいております。

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