公開日:2020.01.27 最終更新日:2024.09.24

離婚するときに行う年金分割について仕組みと申請方法を解説

夫婦が離婚する際、話し合っておくべきことの一つに年金分割があります。

年金分割は、婚姻中に夫婦が支払った年金の一部を離婚時に分け合うことができる制度です。婚姻中の年金支払い額が配偶者よりも少なかった人は、年金分割をすることで、配偶者が支払った年金の一部を自分の年金にすることができます

年金分割は離婚が成立した日から一定期間経過すると申請できなくなるため、離婚する際は期間内に忘れずに申請をしておきましょう。

ここでは、年金分割の仕組みと申請する方法について解説します。

1.年金分割とは

年金分割は、2007年4月に施行された制度です。

夫婦が支え合って老後の生活資金のために保険料を納付したのに、離婚した後老後に受け取る受給額が違うのは不平等になるという観点から制定されました。

分割した保険料は、自分自身の名義で年金をもらえるようになるため、元配偶者が死亡した場合でもご自身がもらえる年金に影響はありません。

なお、支給される年金を分割するわけではないので、元配偶者が年金をもらえる年齢になったからと言ってご自身も年金をもらえるわけではないので注意しましょう。

(1)年金分割で受け取れる金額

年金分割の対象になるのは、年金のうち厚生年金(共済年金も含む)の部分だけです。国民年金(基礎年金)や厚生年金基金に支払った金額は対象外です。また、企業や個人で加入している確定拠出年金も年金分割の対象に含まれません。

さらに、年金分割できるのは婚姻中に支払った厚生年金のみです。婚姻前に支払った年金は年金分割の対象外です。

年金分割の按分(あんぶん)割合は、上限が50%となっています。50%以下であれば、夫婦の話し合いによって自由に決められますが、按分割合は上限の50%にすることが一般的で
す。また、離婚する際、夫婦のどちらか一方が有責配偶者であっても、年金分割の按分割合は変わりません。

(2)国民年金のみに加入している場合は年金分割できない

年金分割は、夫婦が婚姻中に支払った厚生年金が対象になるため、配偶者が国民年金のみに加入している場合は、年金分割をすることができません

たとえば、配偶者が自営業者や農業従事者などで国民年金しか納めていない状態だと、年金分割をするための記録がないので、年金を分け合うことができないのです。

また、年金分割をした場合でも、年金分割をした側が年金の支払い期間を25年以上継続しなければ、年金が受給されないため、年金分割を受けた側も年金分割を受けた分を受給されなくなってしまいます

(3)離婚成立日から2年以上経過すると年金分割が請求できない

年金分割請求が請求できるのは、離婚成立日から2年以内です。それ以降は、請求することができなくなります。ただし、年金分割請求は双方の合意が必要になるため、離婚後に協議をすると住んでいる場所が離れているなどして協議が難しくなることがあります。

2.年金分割の種類

年金分割には、合意分割と3号分割の2種類があります。合意分割とは、夫婦が協議をして年金分割の条件を決めて合意を得る方法です。協議で決まらない場合は調停や裁判で決定します

一方で、3号分割は、第3号被保険者※が申請をすれば、配偶者の合意が無くとも50%の割合で自動的に年金分割される制度です。ただし、3号分割の対象となる期間は、平成20年4月以降に第3号被保険者になっていた場合のみです。

それ以前に年金分割の対象となる期間がある人は、合意分割をしたほうが年金分割で受け取れる年金が多くなる可能性があります。

また、3号分割は事実婚でも請求ができます。婚姻関係がなかったとしても、第3号被保険者であることの証明ができれば、3号分割の請求ができます。

※会社員や公務員など厚生年金保険の加入者(第2号被保険者)の扶養に入っている配偶者のこと。

3.年金分割するための手続き

年金分割分を受給するには、年金事務所に行き年金分割請求の手続きを行う必要があります。離婚しただけでは年金分割はされないため、手続きを忘れずに行いましょう。

(1)情報提供通知書を請求する

年金分割をするためには、必要な情報がまとめて記載された「年金分割のための情報提供通知書」という書類が必要です。

情報提供通知書を請求するには、「年金分割のための情報提供請求書 」を作成し、年金事務所に提出します。

情報提供請求書の提出する際、他に下記の書類を一緒に提出します。

  • 請求者本人の国民年金手帳、年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 婚姻期間等を明らかにすることができる市町村長の証明書または戸籍の謄本若しくは抄本
  • 事実婚関係にある期間に係る情報提供を請求する場合は、世帯全員の住民票の写し等

引用:日本年金機構
情報提供通知書の請求は、夫婦2人分を同時にすることもできますし、夫婦のどちらか一方だけにすることもできます。

請求してから一週間ほどで、「年金分割のための情報提供通知書」が郵送されてきます。

(2)年金分割について夫婦で協議する

情報提供通知書が交付されたら、夫婦で年金分割の条件について話し合います。話し合う内容は、「年金分割の請求の有無」と「分割する場合の按分割合」についてです。

年金分割の話し合いをどのように進めればいいか分からない人は、事前に弁護士に相談しておきましょう。離婚案件を多く扱う弁護士に相談することで、的確なアドバイスを受けることができるため、話し合いをスムーズに進められる可能性が高くなります。

夫婦の話し合いで合意が取れたら、年金分割と按分割合について合意したことが分かるように、条件が記載された用紙に自署をしてもらいましょう。

(3)年金分割の請求手続き

最後に年金事務所に年金分割の請求手続きを行います。請求手続きを行うには、下記の書類を年金事務所に提出する必要があります。

  • 標準報酬額改定請求書
  • 年金分割に合意したことが分かる書類
  • 請求者本人の国民年金手帳、年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 婚姻期間を証明するための書類(戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書など)

請求書の書き方や、必要な書類を用意するのが不安な人は、年金事務所の担当者に確認してもらいながら手続きを進めることをおすすめします。

(4)夫婦の話し合いで年金分割の合意が取れなかった場合は調停や裁判を申し立てる

年金分割や按分割合について、夫婦の話し合いで合意が取れなかった場合は、調停を申し立てることができます。さらに、調停でも決まらない場合は、審判手続きを申し立てることで審判によって按分割合が決められます。審判手続きを行った場合、審判で決まる按分割合は、ほとんど上限の50%です。

按分割合を求める調停や審判を申し立てられるのは、離婚が成立した翌日から2年以内です。期日を過ぎてしまうと申し立てることができなくなるため、確認しておきましょう。

4.まとめ

離婚する際、慰謝料や財産分与、子供の養育費などの請求に目が行きがちですが、年金分割の請求もしっかり行っておきましょう。婚姻期間が長ければ長いほど、年金分割をすることで将来受け取れる年金額が多くなるため、老後の生活資金に役立てることができます。

年金分割の請求や、按分割合についての夫婦の話し合いで悩んでいる人は、弁護士の無料相談を利用してみましょう。

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