公開日:2020.04.19 | 最終更新日:2024.09.24
離婚した後に生活保護を受給する方法と制限されること
離婚した後に生活していけるだけの収入が確保できない場合、生活保護を受給するという方法があります。生活保護を受給できれば、毎月の生活扶助だけでなく、住宅扶助や医療扶助などが必要に応じてもらえるので、生活を維持することができます。
ただし、生活保護を受給するには、条件や受給後の制限などがあるため、事前に確認してから行動しましょう。
ここでは、離婚した後の生活費を確保するために生活保護を受給するための条件と、受給後の制限について解説します。
1.離婚後に生活保護を受給するための条件
生活保護を受給するには、住んでいる地域を管轄する福祉事務所に申請をしてから、審査に通る必要があります。審査を通るためには、一定の条件を全て満たさなければいけないため、離婚後の生活資金が不足していても、必ず受給できるわけではありません。また、審査には、金融機関や保険会社などにも確認するため、条件を満たしていないことを隠して申請することはできません。
生活保護を受給するための条件は、どのようなものがあるのか確認しておきましょう。
(1)収入が少ない、または無い
離婚した後の収入が最低生活費に達していない場合、生活保護を受給できる可能性があります。最低生活費とは、厚生労働大臣が定めている基準で計算された、生活するために必要な最低限の費用のことです。
つまり、収入が全くない人だけでなく、働いていて毎月の安定した収入がある人でも、収入が最低生活費よりも低い場合は、生活保護の受給が可能です。収入がある人は、最低生活費から収入額を差し引いた金額が支給されます。
たとえば、毎月の最低生活費が15万円で、収入が5万円だった場合、15万円から5万円を差し引いた10万円が受給額です。
ただし、生活保護が受給できるのは、病気やケガなどが原因で働くことができない、または収入が低いと判断された場合です。心身共に健康で、働ける状況にあると認められる人は、生活保護を受けることが難しいです。
(2)家族や親族の支援がうけられない
離婚後に不足した生活費を、家族や親族から援助してもらえない人は、生活保護を受給できる可能性があります。ただし、生活保護を申請したあとの審査では、3親等内の家族や親族へ申請者に支援ができないかという扶養照会が行います。そのため、家族や親族に内緒で生活保護を受給することはできません。
なお、扶養照会は元配偶者にも行われるため、生活保護を申請することを知られてしまいます。
(3)資産がない
生活保護の受給は、預貯金や不動産や、車などの資産を持っていないことが条件です。預貯金の額や、資産の内容は、ケースバイケースなので、明確な基準はありません。
ただし、離婚するときに配偶者から慰謝料を受け取ったり、財産分与をして現金だけでなく、車や家などの資産を分与したりすると、最低限の生活ができる資産を持っているという判断がされる可能性が高いため、生活保護の受給はむずかしくなります。
また、貯蓄型の生命保険なども、解約するとお金が戻ってくる解約返戻金があれば、資産とみなされます。そのため、加入している場合には、生活保護を受給することができません。
(4)生活保護以外の公的支援では生活できない
自治体が行っている生活支援は、生活保護以外にもあります。
たとえば、離婚後に未成年の子供の親権者になったけれど、仕事に就いて収入を得るまでの生活資金が無いという場合、母子家庭対象に低金利で貸付けを行う、母子福祉資金貸付金が利用できます。
また、働きたくても就職活動をするための資金が無いという人には、生活困窮者自立支援制度という制度が利用できます。
生活保護は、それらの公的支援を行っても最低限の生活ができないと判断された場合に受給できることがあります。
(5)借金がない
消費者金融のカードローンや、クレジットカードのキャッシングなど、借金がある人は、生活保護を受給できません。なぜなら、生活保護は、最低限の生活を送るために受給される費用なので、借金の返済には利用できないからです。そのため、借金がある人は、借金を無くしてから生活保護の受給を申請する必要があります。
ただし、奨学金や生活福祉資金、母子父子寡婦福祉資金などの公的機関からの借り入れであれば、生活保護を受給できる可能性があります。
2.養育費はもらっていても受給できる
離婚したあとに、元配偶者から子どもの養育費を受け取っている場合でも、生活保護の受給はできます。養育費は、世帯の収入と見なされますが、養育費を含めた世帯収入が最低生活費に満たなければ、生活保護の受給条件に当てはまるからです。
ただし、生活保護の受給額は、最低生活費から収入を引いた額なので、養育費分が差し引かれた金額が受給されます。養育費を受け取っていることを福祉事務所に申告せずに、養育費分の生活保護費をもらっていたことが判明すると、生活保護費の不正受給となります。不正受給が発覚すると、該当する金額の返還を求められることがあるので、必ず申告をしましょう。
3.生活保護を受けることで制限されるもの
生活保護を受給できた場合、生活が制限されることがあります。制限を守らないと、生活保護の受給が打ち切られるおそれがあります。
(1)預貯金
生活保護を受給すると、預貯金額に制限がかかることがあります。明確な金額は決まっていませんが、預貯金が多いと、生活に充分な資金があると判断されるため、生活費が打ち切られるおそれがあります。ただし、社会復帰のための資金作りなど、預貯金をするための明確な目標があれば、ケースワーカーに相談することで認められる場合があります。
(2)借金
生活保護を受給している間は、借金をすることができません。そもそも、ローンなどの審査が通る可能性も低いですが、仮に新たな借金をした場合、最低限の生活ができる収入があると判断されるからです。福祉事務所は、生活保護受給者の資産を管理しているため、借金が発覚した場合は、受給の打ち切りや受給済みの生活保護費の返還を求められることがあります。
(3)資産
生活保護を受けていると、資産を持てないおそれがあります。資産とは、家や土地などの不動産、車、生命保険などです。
資産が持てない。また、住宅ローンなどが残っていると、生活保護が受けられません。生活保護費を住宅ローンの返済に当てることで、資産形成につながるため、生活保護費の使用目的が変わってくるからです。
(4)生命保険
生活保護費を受給すると、加入できる生命保険に制限がでる場合があります。たとえば、個人年金や貯蓄型の解約返戻金のある生命保険などは資産と見なされるため、加入していることが発覚した場合は、受給を打ち切られるおそれがあります。
ただし、掛け捨ての生命保険は加入が認められている場合があるので、加入前にはケースワーカーに相談する必要があります。
(5)住む場所
生活保護を受給している人が住めるのは、賃貸住宅の場合、毎月の家賃が住宅扶助の金額内で収まるところだけです。そのため、自分の好きな場所を選ぶことができません。また、離婚後、婚姻中に住んでいた家を離れて賃貸住宅に住んでいた場合、そこの家賃が住宅扶助の金額よりも高かった場合、引っ越す必要があります。
4.申請前には弁護士に相談する
離婚した後の生活資金に不安があり、生活保護の受給を検討している人は、事前に弁護士に相談してみましょう。離婚の際、配偶者から養育費や慰謝料、財産分与などの金額を受け取ることができれば、離婚後の生活費に使える資金を手にいれられる可能性があります。
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