公開日:2020.05.01 | 最終更新日:2024.09.24
自己破産をするための手順
借金の返済で苦しんでいる人の救済措置のひとつに自己破産があります。自己破産の手続きを行い免責許可が下りれば、借金が免除されるため、経済的な再建を行うことができます。
しかし、自己破産は、手続きをすれば必ず借金が免除されるわけではありません。さらに、自己破産の手続きには、複雑な手続きや法律の知識が必要になるため、弁護士に依頼する場合が多いです。そのため、ここでは、弁護士に依頼をして自己破産を行い借金の免責を受けるため手順を解説します。
1.自己破産をするための手順
自己破産で借金の免責を受けるための手順は、下記の通り行います。
- 弁護士に依頼する
- 債権者へ受任通知書を送る
- 書類作成
- 破産手続きの申し立て
- 破産手続きの開始と終了
- 免責審尋
- 免責許可
自己破産によって借金が免除されるまでの期間は、弁護士に依頼してから早くても半年ほどかかります。ただし、書類の不備や情報不足があれば、さらに延びるおそれがあるため、借金を免除して新しい生活のスタートを早く切るためには、事前の準備が大切です。
(1)弁護士に依頼する
自己破産手続は、複雑な書類作成や法律の知識が必要になるため、弁護士に依頼するのが一般的です。弁護士は、それぞれに得意分野が違うため、複数の弁護士事務所に相談をして、自己破産などの債務整理に詳しいところで決めてください。
また、弁護士に自己破産の手続きを依頼すると、借金が免除されるまでに何度も連絡のやり取りをするため、人柄や相性を考慮して選ぶことも大切です。
弁護士は相談者から自己破産手続を依頼されると、相談内容をもとに委任契約書を作成します。その後、相談者と弁護士が委任契約を結ぶことで、正式な依頼となります。
委任契約書には、依頼内容や費用などの条件が記載されています。弁護士によって、自己破産の手続きにかかる費用や内容が異なるため、内容に相違点が無いか必ず目を通しておきましょう。
(2)債権者へ受任通知書を送る
弁護士は、自己破産手続の依頼を受けると、すぐに債権者へ受任通知書を送ります。受任通知書とは、「債務者から委任を受けたので、今後の連絡は全て弁護士が対応します。債務者に直接連絡をしないでください」という内容を記載した書面です。
債権者は、弁護士からの委任通知書を受け取ると、依頼人(債務者)へ直接の取り立てが法律上できなくなります。そのため、弁護士との契約が締結されている間は、債権者からの請求や督促などの連絡が来ないので、破産手続の準備や生活基盤を整えるための準備に集中できます。
(3)書類作成
弁護士は債権者へ受任通知書を送った後、自己破産手続申し立てるための書類作成に取り掛かります。書類作成の際に依頼者がすることは、必要な資料を集めることです。必要な資料は依頼内容によって異なりますが、代表的なものは以下の通りです。
【自己破産手続きの書類作成に必要な資料の例】
- 収入が分かる書類(給料明細書、源泉徴収票)
- 債権者と借入金の明細
- 預金通帳の写し
- 生命保険の証券の写し
- 居住形態が分かる書類(賃貸契約書、不動産登記簿)
弁護士は、依頼者からの資料を基に書類を作成しますが、申告漏れや、特定の情報を隠している場合、正確な書類が作れません。もし、書類の作成中に進めているときに新たな事実が発覚すると、再調査による追加費用の発生や、自己破産が認められるまでの期間が延びるおそれがあります。
書類作成に必要な資料は、持っている財産や借入先によって異なるため、弁護士に資料を提出する際は、漏れがないように確認しておきましょう。
(4)破産手続開始の申し立て
自己破産手続に必要な書類が完成したら、破産手続開始の申し立てを行うために裁判所に行き書類を提出します。ただし、裁判所への申し立ては、代理人だけでも行えるので、弁護士に依頼していれば、本人が裁判所に行く必要はありません。
(5)破産手続開始決定と終了
破産手続開始の申し立てが裁判所に認められると、「破産手続開始決定」が行われます。破産する人に財産がある場合、破産手続開始決定後に「管財事件」として扱われ、財産の換価を行い、債権者に分配・配当する手続きが行われます。
破産する人の財産の換価や債権者への分配・配当を行うのは、破産手続開始決定後に選定される破産管財人と呼ばれる人です。破産管財人は、破産する人が裁判所に提出した財産一覧だけでなく、申告していない財産についての調査も行います。調査の結果、万が一申告していない財産が見つかった場合、詐欺破産罪に問われることがあるため、絶対にやめましょう。
管財事件は、破産管財人が、破産する人の財産を全て換価し、債権者に分配・配当を行うと「破産手続終了」となります。
■財産が無い場合は同時廃止事件となる
破産する人に、債権者に分配・配当を行う財産が無い場合、同時廃止事件として扱われます。同時廃止事件では、「破産手続開始決定」と同時に破産事件が廃止されます。破産管財人の選定や財産の換価も行われないため、管財事件よりも早い期間で破産手続が終了します。
(6)免責審尋
破産手続が終了した後は、免責審尋(めんせきしんじん)が行われます。免責審尋とは、裁判所が破産する人の借金を免責してもよいかを判断するための聴収手続きのことです。免責審尋の結果、免責許可が下りれば、破産する人の借金が免除されます。
免責審尋の期日は、裁判所によって決定されます。免責審尋では、弁護士だけでなく破産する人も裁判所に出頭する必要があります。免責尋問では、裁判所に提出した資料の中で不明な点などを確認されます。免責審尋の中で、裁判所が、破産した人は借金の支払いが困難であると判断した場合、免責許可決定が下ります。
■免責が認められない場合
免責審尋の結果によっては、免責不許可となり、借金が免除されないことがあります。免責不許可になる場合の多くは、破産法252条に定められている免責不許可事由に該当していることが原因です。免責不許可事由の代表的なものは以下の通りです。
【免責不許可事由の代表的な例】
- 財産を隠していた
- 財産を故意に壊して価値を減少させた
- クレジットカードの現金化を行った
- パチンコや競馬などのギャンブルで作った借金がある
- 株やFXなどの取引で作った借金がある
- 娯楽での浪費で作った借金がある
- 過去7年以内に自己破産による免責許可を受けている
ただし、借金を作った理由が免責不許可事由に該当している場合、必ず免責不許可になるわけではありません。破産手続の申し立てに至った経緯や事情が考慮されることで、免責許可が下る可能性があります。
(7)免責許可
裁判所から免責許可が下りれば、破産した人の借金が免除されます。しかし、免責許可が下りても、下記の債務は、例外として免除されないため、自己破産をした後も支払いが必要です。
【自己破産をしても免除されない可能性があるもの】
- 税金の未納分
- 公共料金の滞納分
- 罰金
- 養育費など
また、自己破産で免除される借金は、申立てをする際、裁判所に提出した書類に記載されている債権者の分だけです。債権者の漏れがあった場合、免責許可が下った後も借金は免除されないので注意しましょう。
2.自己破産した後に残る財産
自己破産をした場合、全ての財産が無くなってしまうわけではありません。一定の価値がある財産は、破産管財人によって換価され債権者に分配・配当されますが、下記は、自由財産として認められているため、自己破産をしても手元に残しておくことができます。
【自己破産をしても残るもの】
- 生活に必要な家具・家電
- 99万円以下の現金
1品の価値が20万円未満である財産や総資産で99万円を超えない財産であれば、自己破産後に残すことができます。ただし、ローンの支払いが残っており、所有権がローン会社などになっている財産は、手元に残すことができません。家や土地などの不動産であっても、一定の価値を超えていなければ、手元に残しておけます。
また、携帯電話やスマートフォンも、料金の滞納がなければ自己破産後も使い続けることができます。
3.借金の返済で苦しんでいるなら弁護士に相談してみる
自己破産をするために必要な借金の額に基準はありません。収入や資産状況によっては、借金の額がそれほど多くなくても、自己破産をして借金が免除される場合もあります。
そのため、自己破産をして新しい生活のスタートを切りたいという人は、弁護士に相談してみましょう。
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