公開日:2020.06.08 最終更新日:2024.09.24

任意整理のメリットとデメリットについて解説

任意整理とは、借金の返済が困難になった場合に、債権者と直接交渉して、返済の負担を減らしてもらうための手続きです。借金の元本を減らすことは基本的にできませんが、将来利息の免除や返済期間の延長、毎月の返済額の減額などが期待できます。

将来利息や返済期間の延長について債権者と和解することができれば、月々の返済額を減らせるため、完済までの負担が減らせます

ただし、任意整理には、メリットだけでなくデメリットも存在します。任意整理をすることで日常生活に一時的に制限が発生することがあるので、手続きをする前に確認しておきましょう。

1.任意整理のメリット

任意整理のメリットには、下記5つがあります。

  1. 将来利息が免除される
  2. 返済期間を延長することで毎月の返済額を減らせる
  3. 家族や職場に内緒で進められる
  4. 対象の債権者を選択できる
  5. 過払い金があれば元本を減らせる

ひとつずつ確認しておきましょう。

(1)将来利息が免除される

任意整理では、借金返済の負担を減らすために、将来利息の免除を債権者と交渉するケースが多いです。将来利息とは、元本を返済するまでに発生する将来の利息のことです。任意整理によって将来利息が免除されると、元本だけを返済すれば完済できるため、負担を減らせます

将来利息の免除については、債権者が必ず交渉に応じてくれるわけではありません。しかし、債権者からすれば、債務者が借金の返済ができずに個人再生や自己破産をすることで、元本の回収ができなくなるおそれがあるため、交渉に応じる可能性が高いです。

(2)返済期間を延長することで毎月の返済額を減らせる

任意整理では、借金返済の負担を減らすために、返済期間の延長と毎月の返済額の調整を債権者と交渉します。返済期間は、原則3年、特別な事情があれば5年に延長されるのが一般的です。

返済期間が延長されることで、完済までの期間は伸びますが、月々の返済額を減額できるため、負担を減らせます。

(3)家族や職場に内緒で進められる

任意整理を行ったことは勤め先や家族に知られることはありません。任意整理は裁判所を介さないで行われるため、債権者と債務者、債務者の代理人になっている弁護士以外は知ることができないからです。また、個人再生や自己破産と違い、国が発行する官報にも掲載されないので名前がどこかに出ることもありません。

ただし、「従業員貸付制度」や「家族が連帯保証人になっている債務」を任意整理の対象にすると、知られてしまうので注意が必要です。

(4)対象の債権者を選択できる

任意整理は、個人再生や自己破産と違い、対象の債権者を選べるため、没収されたくない財産に関しては、任意整理の対象から外すことができます。たとえば、住宅ローン、マイカーローン、カードローンのキャッシングがあった場合、任意整理ではカードローンのキャッシングだけを対象にできます。

全ての債権者が対象になる個人再生や自己破産では、債務の残っている財産を没収されますが、任意整理ではそのリスクを回避できます。

(5)過払い金があれば元本を減らせる

任意整理をすると、過払い金が発生することがあります。
過払い金は、法律で定められた利率の上限を越えて返済していた利息分の金額です。過払い金が見つかった場合、過払金返還請求をすることで返還されます。返還された過払い金は、元本から差し引けるため、返済額を減らせます。また、過払い利息の金額が元本を上回っていた場合は、お金が返ってくることもあります。

過払い金は、算出するために複雑な計算が必要になり、さらに債権者と交渉して和解を得なければ返還されないため、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。

2.任意整理のデメリット

任意整理のデメリットには、下記4つのデメリットがあります。

  1. ブラックリストに載る
  2. 任意整理後に返済を滞納すると残債が一括請求される
  3. 銀行口座が一時的に凍結される
  4. 安定した収入がなければ任意整理ができない

ひとつずつ確認しておきましょう。

(1)ブラックリストに載る

任意整理が成立すると、借金の返済に問題が発生したと判断されるため、個人信用情報機関に金融事故情報が登録される、いわゆるブラックリストに載った状態となります。

ブラックリストに載っている期間中は、返済能力が無いと判断されるので、クレジットカードの新規発行やローンを組むときの審査にとおりにくくなります。

また、任意整理の対象になったクレジットカードは、すぐに使えなくなりますが、対象外のクレジットカードもいずれは使えなくなります。そのため、クレジットカードで引き落としをしている支払いは、なるべく早く口座振替や請求書払いに変更しておく必要があります。

なお、ブラックリストから消えるには、任意整理をしてから5年程かかると言われていますが、正確な期間は公開されていません。信用情報の内容は、個人信用情報機関に情報開示を依頼すれば見られるので、任意整理後にクレジットカードの発行やローンを組む場合は、審査前に確認しておきましょう。

(2)任意整理後に返済が滞ると残債が一括請求される

任意整理の交渉においては、債権者からも条件を出されることがあります。一般的な条件は、期限の利益喪失です。期限の利益喪失とは、任意整理後に取り決めた条件を守らなかった場合、期限の利益(債務者の請求)がなくなってしまうことです。

たとえば、任意整理後の返済を2回滞納すると、期限の利益喪失になるという条件を取り決めた場合、2回目の返済を滞納した時点で期限の利益を喪失するため、残債を一括で請求されます。

この時に一括請求される残債には、将来利息も含まれています。将来利息の免除や返済期限の延長は、債権者の条件を守ることが前提になるためです。

さらに、返済を滞納したことによる遅延損害金も発生するため、返済の負担が大きくなります。滞納の回数は債権者との交渉によって変わりますが、2回滞納した場合に、借金の残債が一括請求されるケースが多いです。

返済を滞納して一括請求をされたときは、債権者と再び任意整理の交渉をすることで、将来利息の免除や長期分割が認められることがありますが、一度約束を破っているため、1回目の交渉よりも合意を得ることが難しくなります。

任意整理後に収入や支出の変化により返済が滞りそうな場合は、早めに弁護士に依頼しましょう。

(3)銀行口座が一時的に凍結される

銀行が取扱っているカードローンや、フリーローンを任意整理した場合、銀行口座が一時的に凍結されることがあります。銀行が口座を凍結するのは、借入残高と口座残高と相殺することで元本を回収するためです。

口座が凍結されると、口座内の残高を引き出すことができなくなり、給料などの振込みもできなくなります。そのため、任意整理をする前には、生活に必要なお金を引き出しておくことや、給料の振込み口座を変更しておくなどの対策が必要です。

(4)安定した収入がなければ任意整理ができない

任意整理は、安定した収入がなければすることができません。債権者と交渉する際、返済に当てる収入がなければ、完済するまでの期間や毎月の返済額を提示できないからです。

返済の計画がないのに、任意整理をしようとしても、債権者の合意を得られる確率はとても低いでしょう。ただし、給料など安定した収入があれば、正社員でなくても構いません。契約社員やアルバイトなど、雇用形態に関係なく任意整理をすることができます。

また、借入をしてからの期間が短く、返済回数が少ない場合は、任意整理ができないことがあります。任意整理を前提でお金を借りたと疑われてしまうためです。任意整理ができる返済回数は借入先によって異なるため、返済回数が少ない場合は、弁護士に相談してみましょう。

3.任意整理の流れ

任意整理は債権者が返済の条件について合意しなければ成立しません。個人で交渉に臨んでも債権者が応じない確率が高いため、弁護士などに依頼をして代理人を立てることが一般的です。

下記は、任意整理を弁護士に依頼して解決する手順です。

  1. 弁護士に依頼をする
  2. 債権者へ受任通知を送る
  3. 取引履歴の開示請求と引き直し計算をする
  4. 和解案の作成と債権者との交渉をする

弁護士は、任意整理の依頼を受けると、必要な手続きのほとんどを債務者の代わりに行います。そのため、弁護士に任意整理を依頼した後は、債務整理の手続き中であっても今までの日常と同じように過ごすことができます

なお、任意整理が終わるまでの期間は、債権者の数にもよりますが、弁護士に依頼をしてから3か月~6か月が一般的です。

(1)弁護士に依頼をする

弁護士に任意整理を依頼するには、弁護士と依頼者との間で委任契約を結びます。委任契約を結ぶ際には、任意整理に対して行う弁護士の業務や発生する費用など、取り決めた内容を記載した委任契約書へ署名が必要です。

委任契約書に署名をして弁護士と契約を結ぶと、着手金が発生し問題解決に向けて動きます。そのため、契約の範囲や費用などに相違点がないかを委任契約書で確認し、不明点や疑問点があれば契約前に必ず聞くようにしましょう。

■必要な情報は全て伝える

弁護士と委任契約を結ぶ前には、任意整理に必要な情報を全て伝えておくことも重要です。契約後に必要な情報が出てきた場合、別途費用が発生するおそれがあるため、契約前に伝え忘れていることがないかを確認してください。

弁護士は依頼人の借入状況を把握するために、いくつかの書類などの収集をお願いすることがあるので準備しておきましょう。

【任意整理を弁護士に依頼するときに必要な資料の例】

  • 身分証明書
  • 債権者一覧表
  • 消費者金融のキャッシング用カード
  • 借入先のクレジットカード
  • 印鑑

なお、弁護士を初めて利用するという人は、いきなり依頼をするのではなく、まずはご自身の債務状況について相談をしてみましょう。多くの法律事務所では、相談のみの受け付けも行っているため、弁護士が借入と返済の状況を判断したうえで生活を立て直すための適切な方法を聞くことができます。

(2)債権者へ受任通知を送る

弁護士は、任意整理の依頼を受けると、すぐに依頼人の債権者へ受任通知を送ります。
受任通知とは、弁護士が債務者の代理人となり債務整理の手続き行うことを債権者に伝えるための通知です。

受任通知には、債権者が債務者へ直接取立てを行うことを停止する内容が記載されています。そのため、弁護士が受任通知を送付すれば、債権者からの取立てや催促をすぐに止めることができます。さらに、債権者と和解するまでの期間は、実質的に返済を止めることができるので、債務の完済に向けた資金作りをしやすくなります。

(3)取引履歴の開示請求と引き直し計算をする

弁護士は、受任通知の送付と同時、または送付後に債権者へ取引履歴の開示を請求します。取引履歴には、債務者へ貸付けた金額や日時、また返済を受けた金額や日時が記載されています。

取引履歴の開示は法律で定められているため、依頼があった場合、消費者金融や銀行などは、提出する義務があるため拒否することはできません。

取引履歴が開示されたら、弁護士はその情報をもとに引き直し計算を行います。引き直し計算とは、過去に行われた取引が、法定金利の範囲内で行われていたかを確認するための計算です。

仮に、法定金利の上限よりも高い金利で貸付けをしていた場合、任意整理の際に元本から差し引かれるため、返済額が少なくなることがあります。さらに、払いすぎた金利が元本以上であれば、差し引かれて余った金額が過払い金となるため債務者へ還付されます。

(4)和解案の作成と和解交渉をする

弁護士は、集めた資料を基に、債権者と交渉するための和解案を作成します。

そして、和解案をもとに債権者と交渉を行います。和解案の中に返済期間の延長や将来利息の免除が含まれていれば、返済期間を3年にするのか5年にするのか、将来の利息は免除してもらえるのかといった話し合いを進めます。

弁護士は、和解案を基に債権者と交渉した末、和解が成立すると和解契約を締結して任意整理が終わります。

なお、債権者との和解交渉は、弁護士が行うため、依頼者が立ち会う必要はありません。

4.任意整理にかかる費用

任意整理をするのに必要な弁護士費用は、債権者1社につき、着手金5万円程度と、減額報酬として10%程度が目安です。ただし、法律事務所によって異なるため、相談時や委任契約書で確認しておきましょう。

なお、当事務所で任意整理を依頼された場合は、債権者一社ごとに着手金として3万円(税別)、報酬金として債務総額からの減額分の10%が費用としてかかります。

また、借金を完済しており、債権者へ過払い金請求をする場合は、着手金0円で、報酬金として、過払い金回収額20%と3万円の費用がかかります。

5.任意整理をするなら弁護士に依頼する

任意整理をして借金の返済の負担を減らすなら弁護士に依頼しましょう。債務整理は、個人でもできますが、弁護士に依頼することで、面倒な手続きや債権者との交渉を債務者の代わりに行うため、手間をかけずに終わらすことができます。

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