公開日:2020.09.02 | 最終更新日:2024.09.24
交通事故の賠償金に税金はかかるのか?
交通事故の被害に遭った場合、被害に応じた賠償金を加害者に請求することが可能です。賠償金の金額は、加害者との示談交渉や、裁判をすることで決まります。
この交通事故の賠償金については、金額に関係なく原則非課税です。しかし、賠償金を受け取ることによって利益が発生する場合や、受け取るタイミングなどによっては、課税対象となるケースもあるので確認しておきましょう。
1.交通事故の賠償金は原則非課税
交通事故の被害によって加害者に請求できる賠償金は、交通事故で負った怪我の治療や、仕事が出来なくなったことにより減少した収入などを補填する目的であれば非課税になります。
金銭を受け取った場合には、金額に応じた税金が課税される場合が多いです。しかし、交通事故の賠償金は、交通事故の被害によって受けた損害を補填するために受け取るため、利益が発生しないことから課税対象にはならないのです。
交通事故の賠償金のうち非課税になる項目の代表例は以下の通りです。
- 怪我の治療費
- 通院するための交通費
- 見舞金
- 逸失利益
- 休業損害
- 慰謝料
また、慰謝料は直接的な補填ではありませんが、交通事故の被害によって受けた肉体的や精神的な苦痛に対して支払われる賠償金のため、課税されることはありません。
これらの賠償金が非課税であることは、国税庁のサイトでも、以下の通りに記載されています。
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そのため、加害者から受け取った賠償金は、たとえ全額使ってしまっても、後から税金の支払い請求が来ることはありません。
(1)被害者が死亡した場合に遺族が受け取る賠償金も非課税になる
交通事故により被害者が死亡した場合に支払われる賠償金は、受け取りが遺族になった場合でも非課税の対象です。通常、加害者に賠償金を請求する権利「損害賠償請求権」を持つ被害者本人が、加害者と示談交渉をして金額が決定した後に受け取ります。
しかし、被害者が死亡した場合は加害者との交渉ができないため、損害賠償請求権は、被害者の遺族が取得し、被害者本人の代わりに加害者と示談交渉をして賠償金の金額を決め、被害者の遺族が加害者から直接受け取ります。
ですから、被害者が死亡した場合は、被害者の遺族が加害者へ賠償金の請求から受け取りまでを直接行うため、被害者本人が加害者から賠償金を直接受け取るのと同じ意味合いになるので、通常の賠償金と同じ扱いになるため非課税となります。
2.賠償金に税金がかかるケース
交通事故の賠償金は、補填のために支払われる場合は、原則非課税です。しかし、賠償金を受け取ることで利益が発生する場合や、賠償金を受け取る人によっては、課税対象になることがあります。それでは、どのようなケースで賠償金が課税対象になるのか確認しておきましょう。
(1)遺族が損害賠償請求権を相続した場合
被害者本人と加害者との示談交渉が終わり、賠償金の金額が確定してから賠償金が支払われるまでの期間中に被害者が死亡してしまうと、支払われる賠償金は遺族が受け取ります。しかし、本来、被害者本人が受け取るはずだった賠償金を遺族が受け取ることで、賠償金が課税対象になることがあります。
損害賠償請求権は金銭債権であるため、権利を取得した被害者本人が死亡すると、遺族に相続されるからです。
たとえば、被害者本人と加害者とで示談交渉で賠償金の金額が決まった後、受け取るまでの期間中に病気で死亡した場合などが該当します。損害賠償請求権は、賠償金を受け取る権利となり、相続することで「相続財産」となるため、相続税の対象となります。そのため、損害賠償請求権が被害者本人から遺族に相続された後に受け取った賠償金については相続税が発生するのです。
損害賠償請求権の相続については国税庁のサイトに以下の記載があります。
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示談交渉によって納得のいく賠償金の受け取りが確定したとしても、相続税が課税されてしまうと受け取れる金額が減少してしまいます。そのため、賠償金の受け取りが確定した場合には、なるべく早く支払いをしてもらうようにしましょう。
なお、相続税の税率は、賠償金の金額によって異なるため、国税庁サイト「No.4155 相続税の税率」でご確認ください。
(2)受け取った賠償金に補填以外の理由がある場合
加害者から受け取った賠償金に交通事故による被害の補填以外の理由がある場合、賠償金について課税されることがあります。
たとえば、加害者から受け取った見舞金が、交通事故の被害に対して受け取る金額の相場よりも高額である場合などは注意が必要です。補填以外の賠償金は利益になると判断されるため、所得税の対象になる可能性があります。
それ以外にも、交通事故の被害に対して受け取った賠償金が補填以外の理由で受け取ったと判断された場合は、所得税の課税対象になることがあります。ただし、課税対象になる金額や受け取った理由については、はっきりとした基準が設けられていないため、心配な人は弁護士に相談してみましょう。
(3)経費を補填するための賠償金を受け取った場合
加害者から受け取る賠償金の中に、確定申告をする際に、経費として計上できる分については、課税対象になることがあります。これは、税金の二重控除を防ぐためです。
たとえば、交通事故の被害によって、車に積んでいた商品50万円分が破損した場合、損失分を加害者に賠償金として請求できます。しかし、商品の仕入れは、確定申告のときに経費として計上できるため、賠償金で補填された金額で再度商品50万円分を仕入れた場合、実際は、50万円分しか仕入れていないのに、100万円分(50万円×2回)の仕入れを控除できてしまいます。
そのため、商品金額は賠償金で補填してもらったのにも拘わらず、控除金額が増えることで税金の支払いを減らすことで利益が発生してしまうため、経費を補填する場合の賠償金については所得税が課税されることがあります。
3.賠償金が課税対象になるか不安なときは弁護士に相談してみる
交通事故の被害に対して受け取った賠償金は、原則非課税です。しかし、受け取った金額やタイミングについては課税対象になることがあります。分からずにそのままにしておくと、延滞による追徴課税が発生するおそれがあります。賠償金を受け取っても税金を差し引かれることで受け取れる金額が少なくなってしまうため、心配な人は、早めに弁護士に相談してみましょう。
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