公開日:2020.09.02 | 最終更新日:2024.09.24
交通事故による「むちうち症」は賠償金を請求できる
交通事故被害の中でも多いのが「むちうち症」です。むちうち症は、交通事故による強い衝撃を受けることで、首(頚部)や腰(腰部)を損傷してしまうことを言います。むち打ち症は、首の痛みだけでなく、頭痛や吐き気、めまいなど、人によって様々な症状がでるため治療が必要です。
交通事故の被害により、むちうち症になった場合、加害者に治療費を請求することができます。また、むちうち症が治癒(完治)せず、後遺障害(後遺症)が残った場合には、賠償金を請求できます。
ただし、むちうち症は、外見から分かりづらいため、適切な賠償金を請求できるように症状を伝えるための準備が必要です。
1.むちうち症で加害者に請求できる費用
交通事故被害に遭ったことが原因で「むちうち症」になると、治癒までにかかった費用を加害者に請求できます。
【むちうち症になったときに請求できる費用の代表例】
- 治療費
- 通院費
- 休業損害
加害者に請求できる費用の中には、一時的に被害者が負担しなければいけないものがあるため確認してきましょう。
■治療費
むちうち症を治療するために医療機関でかかったは診察料、検査料、入院料、投薬料、手術料などの治療費は、加害者に請求することができます。治療費が支払われる期間は、担当の医師から治癒(完治)の診断をされるまでです。症状の改善が見込めない場合、症状固定と診断されるまでになります。
交通事故被害に遭った場合、原則は加害者側の保険会社が病院に直接支払ってくれるため、被害者が立て替える可能性は低いです。
もし、病院から診察料などを請求された場合、交通事故が原因の診察であることを伝えると、支払いを一旦待ってもらえることもあります。対応は病院によってことなるため、支払い前に、病院または加害者側の保険会社に確認しておきましょう。
加害者側に請求できる治療費は、必要性があると認められた範囲内の金額になるので注意が必要です。たとえば、むちうち症の治療で入院する際、個室を希望しても、加害者側の保険会社に、必要性がないと判断されると、その分の治療費は、支払われないことがあります。
どうしても個室などを利用しなければいけない場合は、加害者側の保険会社と交渉する必要があります。
■通院費
むちうち症の治療のために通院する際、かかった交通費は加害者に請求できます。通院までの交通手段は、バスや電車などの公共交通機関だけでなく、自家用車で通院する場合でも、通院費が支払われます。
また、むちうちの症状がひどくて、公共交通機関や自家用車での通院が困難であると判断されると、タクシーでの通院が認められる可能性があります。
ただし、通院費は、被害者が一旦支払ったあとで請求する場合があるため、金額を証明するための領収書が必要です。領収書がないと加害者に請求できないおそれがあるため、必ず保管しておきましょう。自家用車で通院する場合は、ガソリン代や高速代、駐車料金などの領収証が必要です。
■休業損害
むちうち症の治療のために仕事を休んでしまい収入が減ってしまった場合には、減少した分の給与の金額を休業損害として加害者に請求できます。
休業損害は、1日あたりの収入を計算して、仕事を休んだ日数分を請求できます。
1日あたりの収入は、被害者の事故前の給与3か月分を90日で割って算出します。給与は総支給額です。手取りの金額ではありません。
たとえば、給与27万円のサラリーマンの場合の1日あたりの収入は下記の計算式で算出します。
81万円(27万×3か月)÷90=9,000円(1日あたりの収入)
さらに、むちうちの治療のために、10日間仕事を休んだ場合は、9万円の休業損害を加害者に請求できます。
なお、休業補償は、有給を使った場合でも仕事を休んだ日数に含まれます。
2.むち打ちによる後遺障害(後遺症)になると賠償金を請求できる
交通事故被害による「むちうち症」は必ずしも治癒(完治)するとは限りません。治療を続けても、むちうち症の症状がこれ以上の良くならないと医師が判断すると、症状固定と診断され、後遺症として残ることもあります。交通事故が原因のむちうち症によって後遺障害(後遺症)が残った場合には、加害者に賠償金として慰謝料と逸失利益を請求できます。
慰謝料は、被害者の身体的または精神的苦痛を金銭に換算し、加害者が償うものです。また、逸失利益とは、被害者が交通事故被害に遭わなければ、得られていた収入や利益のことを言います。
加害者に請求できる賠償金は、後遺障害等級によって異なります。後遺障害等級とは、交通事故の後遺症の症状によって認定される級です。1級から14級に分けられており、等級が上がるほど症状が重くなります。また、加害者に請求できる賠償金も等級が高いほど高額になる傾向があります。
交通事故被害が原因のむちうち症で後遺症が残った場合、12級13号・14級9号のいずれかの後遺障害等級に認定されます。
それぞれの等級による後遺障害の症状は下記の通りです。
後遺障害等級 | 症状 |
---|---|
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
むちうち症は、外見から症状の重さが分かりにくいため、後遺障害が認定されにくい傾向があります。後遺障害として認定されるためには、症状を伝えるだけでなく、症状があることを証明するための証拠が必要です。ただし、後遺障害の症状がある中で証拠を集めるのは困難な場合があるため、弁護士に相談することをおすすめします。
(1)加害者に請求する慰謝料は弁護士に依頼すると増額される可能性がある
むちうち症で障害者等級が認定された場合、加害者側との示談によって受け取れる慰謝料の金額が決まりますが、交渉をする際に弁護士に依頼することで増額できる可能性があります。
後遺障害に対して受け取れる慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類の基準があり、後遺障害等級14級と12級で受け取れる慰謝料の目安は下記の通りになります。
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準 | 裁判基準(弁護士基準) |
---|---|---|---|
12級 | 94万 | 保険会社によって異なる | 290万 |
14級 | 32万 | 110万 |
金額を比較すると、自賠責基準が最も金額が低く、弁護士基準が最も高いです。任意保険基準の金額は、保険会社もよって異なりますが、自賠責基準と弁護士基準の間になる場合が多いです。
被害者個人で、加害者側の保険会社と示談交渉をする際、提示されるのは、任意保険基準になります。
しかし、示談交渉を弁護士に依頼することで、弁護士基準の賠償金を受け取れるように示談交渉を進めます。弁護士基準は過去に行われた裁判の判例を基準にしているため、根拠がしっかりとあります。保険会社も訴えられればその金額が認められることをしっているため、弁護士基準で支払いことを素直に認める場合が多いです。
そのため、示談交渉は弁護士に依頼することで慰謝料の金額を増額できる可能性があります。
(2)認定された後遺障害等級に納得いかない場合は異議申し立てができる
むちうち症は、外見からは正確な症状が判断しづらいため、認定される等級と、症状が異なる場合があります。もし、後遺障害等級が12等級に認定される症状でも、14級に認定されると、受け取れる賠償金の額が少なくなってしまいます。
認定された後遺障害認定に不服がある場合は、等級認定を再度決めるための手続きをすることができます。
ただし、後遺障害等級を再度認定してもらい、等級を上げてもらうには、後遺障害等級の認定が事実と異なることを証明するには、医師の診断書などの資料が必要になります。
もし、資料を集めるといった時間が無い、裁判所で上手く説明できる自信が無いという人は、弁護士に依頼してみましょう。
3.交通事故被害でむちうち症になったら早めに弁護士に相談する
交通事故被害によりむちうち症になった場合、治療に必要な費用は加害者に請求できます。ただし、加害者側の保険会社は、治療費の支払いをなるべく抑えたいと考えているため、支払う費用を全て親切丁寧に教えてくれるとは限りません。そのため、どのような費用が請求できるのかを把握することが大切です。
また、むちうち症による後遺症が残った場合には、示談交渉を個人で行うか弁護士に依頼するかで受け取れる賠償金の金額が大きく変わります。そのため、むちうち症になった場合には、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。
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