公開日:2021.01.03 最終更新日:2024.09.24

離婚した後の保険証の取り扱いについて

婚姻中に配偶者の健康保険に入っていた人は、離婚すると保険証が使えなくなります。離婚後に新たな保険証を発行する場合、健康保険に加入するための手続きが必要です。手続きが遅れると、健康保険が適用されず、医療費が全額負担になるおそれがあります。

日本では、公的医療保険制度が定められており、「国民健康保険」と「健康保険(社会保険)」のどちらかに加入する義務があります。離婚後に加入する健康保険によって手続きが変わるため確認しておきましょう。

1.配偶者の健康保険(社会保険)の保険証を発行するまでの流れ

配偶者が勤める会社の健康保険(社会保険)に、被扶養者として加入している人は、離婚をすると保険証が使えなくなります。被扶養者から削除されるため、健康保険(社会保険)の資格を喪失するためです。保険証は、被扶養者から削除された後に配偶者が勤める会社へ返納します。手元に残すことはできません。

被扶養者を削除する手続きから、新しい保険証を発行するまでの流れは下記の通りです。

  1. 離婚成立後に、配偶者の勤める会社へ被保険者異動届を提出する
  2. 配偶者の勤める会社へ保険証を返納する
  3. 被扶養者異動届と保険証が受理され、被扶養者から削除される
  4. 離婚の成立日から14日以内に、配偶者の勤める会社から「健康保険資格喪失証明書」を発行してもらう
  5. 新たに国民健康保険か健康保険(社会保険)へ加入する

被扶養者異動届は、被保険者である配偶者の被扶養者に変更があった際、会社へ提出する書類です。被扶養者異動届が受理されると、離婚が成立した日に被扶養者から削除されます。

被扶養者異動届を提出する際は、離婚をした事実、そして、離婚が成立した日を証明する必要があるため、離婚届受理証明書などの書類を準備しておく必要があります。

(1)被扶養者の削除から14日以内に公的医療保険に加入する

被扶養者から削除された後は、削除日から14日以内に、新たに公的医療保険に加入する必要があります。

14日を過ぎてから、公的医療保険に加入するまでの間に発生した医療費は、原則、全額負担です。後から公的医療保険に加入しても、やむをえない場合を除き、さかのぼって給付を受けることができません。

そのため、離婚が成立した後は、すみやかに公的医療保険の加入手続きを行うようにしましょう。

(2)保険証の発行手続きは離婚後に加入する健康保険によって異なる

離婚成立後、被扶養者の削除により保険証を返納した後は、下記3つの方法のいずれかで、新たに保険証を発行します。

◆親族が加入している健康保険(社会保険)の被扶養者になる

離婚成立後、親族が加入している健康保険(社会保険)の被扶養者になれば、保険証が発行できます。この場合、被保険者となっている親族が、三親等以内であることが条件です。それ以外の親族が被保険者になっていても、被扶養者になることはできません。

また、ご自身の両親、祖父母、曽祖父母、子、孫、兄弟、姉妹のいずれか被保険者となる健康保険(社会保険)に加入した場合、同居をしていなくても被扶養者になることができます。

◆勤め先の健康保険(社会保険)に加入する

パートやアルバイトなどの雇用形態で会社に勤めている人は、被扶養者の削除後に、ご自身が勤めている会社の健康保険(社会保険)に加入し、保険証を発行できる場合があります。

健康保険(社会保険)は、下記の条件を満たしていれば加入することが可能です。

  • 1週間あたりの労働時間が20時間以上ある
  • 1か月あたりの賃金が88,000円以上ある
  • 1年以上の雇用期間が見込める
  • 学生ではない
  • 従業員数が501人以上の企業に勤めている(または、従業員数が500人以下の企業に勤めていて、社会保険に加入することが労使で合意がなされている)

条件を満たしている場合は、健康保険(社会保険)へ加入することを社内の担当者に伝えて手続きをしてもらいましょう。

なお、勤めている会社の健康保険(社会保険)に加入する場合、公的医療保険に加入してないことを証明するため、「健康保険資格喪失証明書」の提出が必要です。

◆国民健康保険に加入する

被扶養者の削除後に国民健康保険に加入する場合、最寄りの役所で加入手続きができます。

国民健康保険証の発行手続きには、健康保険(社会保険)の資格を失効したことを証明する「健康保険資格喪失証明書」が必要です。また、運転免許証やマイナンバーカードなど本人確認ができる身分証明書の提出を求められることがあります。

国民健康保険の加入手続きが完了すれば、多くの場合、当日に国民健康保険証が発行されます。

国民健康保険証の発行に必要な書類は、お住まいの役所によって異なるため、手続きをする前に確認しておきましょう。

(3)子供の保険証は離婚後も使い続けることができる

子どもが配偶者の健康保険(社会保険)に加入している場合、離婚後も保険資格が継続されるため、保険証はそのまま使えます。配偶者と離婚をして、ご自身が子どもの親権者になったとしても、子どもは、配偶者の扶養者に該当するからです。

離婚後も、子どもが保険証をそのまま使う場合、手続きなどは必要ありません。ただし、被保険者と被扶養者が別居する場合、遠隔地証を発行するための手続きが必要になる場合があります。

2.離婚後の国民健康保険の手続き

配偶者が国民健康保険に加入しており、離婚後も国民健康保険に加入する場合は、役所で世帯変更の手続きを行い、ご自身を世帯主とした国民健康保険に加入し直します。国民健康保険は、世帯主が世帯全体の保険料を納めることを定めているからです。

子どもがいる場合は、世帯主として国民健康保険に加入した後、被保険者として加入させます。離婚後に世帯変更をしない場合、元配偶者に保険料の請求が行くことがあるため、早めに手続きを行いましょう。

(1)ひとり親世帯は国民健康保険の減額や免除をうけられる

離婚後に世帯収入が減ったことで生活に困窮し、国民健康保険料の支払いが困難な場合は、役所に相談してみましょう。前年と比べて収入が大幅に減少している場合、保険料の減額や免除を受けられる可能性があります。

なお、保険料の減額や免除の基準は、役所によって異なります。お住まいの地域を管轄している役所の担当窓口で確認してください。

3.公的医療保険の切り替えでトラブルが発生したら弁護士に相談する

離婚した後の健康保険の変更手続きは、必ずしもスムーズにいくとは限りません。

「配偶者が健康保険の変更手続きに応じてくれない」「配偶者が子どもを被扶養者から外すことを拒否する」といったトラブルにつながることもあります。

健康保険の変更手続きで配偶者とトラブルになった場合は、一度、弁護士に相談することをおすすめします。

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