公開日:2021.06.14 | 最終更新日:2024.09.24
離婚でマンションを売却するときの注意点
夫婦が離婚するときには、財産分与をして共有財産を分配しますが、その中にはマンションも含まれます。
マンションを財産分与する方法は、「売却して現金を夫婦で分ける」「夫婦のどちらかが住み続ける」などがありますが、なるべく早く済ませるなら、売却して、現金化するほうがよいでしょう。
しかし、マンションの財産分与は金額が大きいため、トラブルにつながることが少なくありません。そのため、きちんと準備をしておく必要があります。
ここでは、離婚する時にマンションの財産分与をするときにトラブルを回避するために確認しておくべき注意点について解説していきます。
1.離婚時にマンションを売却する流れ
離婚にともなうマンションの売却は、下記の流れで行うことが一般的です。
(1)マンションの売却について夫婦で合意を得る
マンションを売却して財産分与をすることについて夫婦で協議し、お互いの合意を得ます。共有財産は、夫婦が協力して築きあげた財産になるため、マンションの名義が夫婦のどちらであっても権利は同じです。名義人の意見が優先されるわけではないので、対等な立場で協議を行いましょう。
(2)住宅ローン残債の確認
マンションを売却する前に、住宅ローンがいくら残っているのかを把握しておきましょう。詳細は後述していますが、住宅ローンが残った状態ではマンションを売却することが基本的にできないためです。売却価格の査定がでても、住宅ローンの残額がわからなければ、次に進むことができないため、予め確認しておくことが必要です。
(3)売却価格の査定
不動産業者などに依頼して、マンションの売却価格の査定をだしてもらいます。市場価格はありますが、業者によって金額が異なるため、少しでも高く売るには、複数社へ依頼して比較することが大切です。
不動産業者が確定したら、マンション売却の仲介依頼をするために媒介契約を結びます。
(4)マンションを財産分与するための条件を夫婦で協議する
マンションの財産分与の割合などを夫婦で協議します。一般的には折半になりますが、結婚前に購入していた場合や、両親などから金銭の援助があった場合には、割合が変わることがあります。
(5)マンションの売却
マンションの買い手が決まったら、引き渡しとなります。買い手が見つかるまでは、内覧などに対応する必要があります。内覧は、土日や祝日に集中することが多いため、対応できるように準備をしておきましょう。
(6)条件通りに財産分与を行う
マンションの財産分与は、売却価格から住宅ローン残債などを差し引いた後に、残った金額を折半するのが基本です。売却金額の査定は行いますが、財産分与の正確な金額は、実際にマンションを売却するまで分かりません。
マンションの売却には、長ければ半年ほどの期間がかかるため、マンションを財産分与したお金を離婚後の生活資金に充てる予定であれば、早い時期から動きだしましょう。
2.マンションを売却せずに財産分与をする方法
マンションの財産分与では、必ずしも売却するとは限りません。
離婚した後に夫婦のどちらかがマンションに住み続けるケースや、マンションの売却価格が住宅ローンの残額よりも少ない「オーバーローン」のケースなどでは、売却せずに財産分与をすることもあります。
ただし、マンションを売却せずに財産分与する場合、手続きが少し複雑になるため、確認しておきましょう。
(1)夫婦のどちらか一方が離婚後もマンションに住むケース
夫婦のどちらかが、離婚した後もマンションに住み続けるケースでは、マンションに住み続ける方が、財産分与に相当する金額を相手へ支払います。財産分与に相当する金額は、マンションの評価額から住宅ローンの残債を差し引いて、夫婦で折半した部分です。
たとえば、マンションの評価額が1,800万円で住宅ローンの残債が1,000万の場合、残った800万円を夫婦で折半するとそれぞれ400万円が受け取れます。離婚した後にマンションに住み続ける人は、この400万円を相手へ支払うことで、マンションの財産分与が完了します。
ただし、400万円は、必ずしも現金で支払う必要はありません。
財産分与は他の財産と一緒に算出されるため、他に財産分与される預貯金や有価証券などの財産と相殺できます。
■マンションの評価額はトラブルにつながりやすい
マンションの評価額は、算出する方法によって金額が変わるため、トラブルの原因になりやすいです。
夫婦のうち、離婚した後もマンションに住み続けるほうは、評価額が低いほうが支払う金額が少なくなります。しかし一方で、マンションに住まないほうは、評価額が高ければ受け取れる金額が多くなるからです。
マンションの評価額を算出方法には、下記があります。
- 路線価
- 固定資産税評価額
- 公示地価
- 実勢価格(時価)
評価額の算出は、不動産会社にも依頼できますが、会社によっても金額が異なる場合があるため、どの評価額を適用するのかを夫婦でよく協議する必要があります。
■住宅ローンの借り換えが必要になる場合がある
マンションの住宅ローンや所有権の名義人ではない人が、離婚した後もマンションに住み続けるなら、住宅ローンの借り換えをしたほうがいい場合があります。
住宅ローンの返済義務は、離婚に関係なく名義人のため、完済するまで名義人へ請求されます。そのため、住宅ローンの返済が離婚後も問題なく行われていればよいですが、滞納などの問題が発生した場合、その度に名義人への催促が必要です。
もし、住宅ローンの滞納が続き競売になれば、住み続けることができなくなります。このようなリスクを抑えるためにも、離婚した後は、住んでいる人が住宅ローンの名義人になるように借り換えをしておくと安心です。
(2)マンションがオーバーローンになっているケース
「オーバーローン」とは、マンションの売却価格よりも住宅ローンの残債が多い状態をいいます。反対に、売却価格のほう高い場合は、「アンダーローン」です。
財産分与は、基本プラスの財産が対象になるため、オーバーローンのマンションは対象から外れます。そのため、とくに夫婦間の取り決めがなければ、離婚した後に、夫婦のうち住宅ローンの名義人になっている方が住宅ローンを完済まで払い続けます。
ただし、離婚するときにオーバーローンのマンションを売却したい場合、下記2つの方法があります。
- 売却価格と住宅ローンの差額を補填して売却する
- 任意売却を利用して売却する
それぞれの方法を解説します。
■売却価格と住宅ローンの差額を補填して売却する
オーバーローンのマンションは、売却価格と住宅ローンの差額を現金で補填して、住宅ローンが完済できる状態であれば売却することが可能です。
オーバーローンのマンションをそのまま売却できないのは、債権者による抵当権が設定されているからです。抵当権とは、住宅ローンの返済が滞ったときのために、債権者が建物や土地を借り入れの担保として設定する権利です。債権者が抵当権を実行すれば、担保であるマンションを競売で売却し、住宅ローンの返済に充てることができます。
抵当権が設定されたマンションを売却することは法律上可能ですが、購入者にとってリスクが高いため、抵当権を抹消しなければ買い手がつくことはほとんどありません。
そのため、オーバーローンのマンションを売却するためには、住宅ローンを完済して抵当権を抹消する必要があるのです。
3.財産分与のためにマンションを売却するときの注意点
離婚するときにマンション売却して財産分与をする場合、注意すべき点があります。
マンションを売却して財産分与をする場合、必ずお金を受け取れるとは限りません。財産分与が請求できないことや、負債を抱えてしまうことがあるため、確認しておきましょう。
(1)マンションの売却は離婚前に完了させる
財産分与のためのマンション売却は、離婚する前に済ませておきましょう。離婚した後だと、元配偶者と連絡が取りにくくなることや、財産の把握が難しくなる場合があるからです。
また、マンションの売却には、夫婦で協議する内容が多くなりますが、離婚後に別々の場所で暮らしていると、協議をするタイミングが合わないため、売却までに時間がかかることがあります。
財産分与が請求できるのは、離婚が成立した日から2年間です。2年を過ぎると財産分与ができなくなるおそれがあります。離婚したあとは、新しい生活の準備などで時間があっという間に過ぎてしまうため、財産分与ができないまま期限を迎えてしまうことも少なくありません。
マンションの財産分与は金額が大きくなる場合が多いため、期限内に受け取れるように準備をすすめておきましょう。
(2)マンション売却の取り決めは公正証書で残す
マンションの売却について夫婦で取り決めた条件は、必ず公正証書に残してきましょう。公正証書は、記載された約束事を守らなかった場合に、強制執行を行うことができる契約証書のことです。
夫婦で取り決めたマンション売却の条件は、口約束やただ書面に残しただけでは、嘘をつかれたり、条件を守られなかったりしても証明することができません。
しかし、取り決めた条件を公正証書にしておくことで、約束が守られなかった場合でも、裁判を行わずに、財産を差し押さえて回収することができます。
なお、公正証書は、公証役場で作成することができます。
4.マンションの売却がうまくいかないときは弁護士に相談する
マンションの財産分与について、「配偶者が条件に納得しない」、「財産分与の計算方法が分からない」という人は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、マンション売却や財産分与に関する交渉を配偶者と行うため、時間の節約やストレスの軽減が期待できます。また、マンションの財産分与に関しては、折半よりも多くの金額を受け取れるケースもあるため、離婚したあとの生活を準備するための時間と資金を確保しやすくなります。
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