公開日:2022.04.17 最終更新日:2024.09.24

離婚成立後に財産分与を行うときの注意点

離婚時の財産分与は、離婚届を提出する前に条件などを決めておくと、離婚後の生活資金を確保できるため安心です。しかし、さまざまな理由により離婚を急がなければいけないケースも少なくありません

財産分与は、離婚後であっても請求できるので、離婚後の生活が安定してから財産分与を行うことも可能です。ただし、離婚後に財産分与を請求する場合、注意すべき点がいくつかあります。適切な額の財産分与を受けるためにも確認しておきましょう。

1.財産分与を離婚後に行う際の注意点

離婚後に財産分与を行う場合の注意点は下記の通りです。

  • 離婚から2年が経過すると請求できなくなる
  • 元配偶者の現住所が分からないと請求できないことがある
  • 財産分与の確定まで時間がかかることがある

財産分与を適切な額の財産分与を受けるためにも注意すべき点を確認しておきましょう。

(1)離婚から2年が経過すると請求できなくなる

財産分与は、除斥期間(じょせききかん)が2年間となっており、離婚が成立した日から2年以内に請求しないと権利がなくなってしまいます。除斥期間とは、権利が行使されないまま一定の期間が経過した場合に、権利が消滅するという制度です。中断や延長は基本的にできないため、期間内に財産分与を請求する必要があります。

ただし、除斥期間中に家庭裁判所で「財産分与請求調停」を申し立てておけば、2年が経過しても、財産分与を受けることが可能です。

なお、除斥期間中に財産分与調停を申し立てていても、期間終了後に審判を取り下げてしまうと、財産分与請求権は消滅します。

■相手が任意で応じれば2年が経過しても財産分与ができる

財産分与の除斥期間が過ぎると元配偶者に請求する権利が消滅するため、「財産分与請求調停」などは受付けてもらえません。しかし、権利が消滅しても元配偶者が任意で財産分与に応じた場合は、財産分与を受けることができます

除斥期間を過ぎてから財産分与を行った場合、額によって贈与とみなされるので贈与税が課される可能性があるため注意が必要です。

■隠し財産が発覚した場合は2年が経過しても損害賠償を請求できる

財産分与を請求する権利が消滅した後、元配偶者が共有財産を隠していることが発覚した場合、損害賠償を請求して財産の引き渡しを求めることも可能です

ただし、損害賠償を請求するためには、共有財産を隠したという証拠の提出が求められます。そのため、請求前に調査をして証拠をまとめておきましょう。

(2)元配偶者の現住所が分からないと請求できないことがある

調停や裁判で財産分与を申し立てる場合、元配偶者の住所と電話番号が必要です。
離婚したあとに元配偶者がどこに住んでいるかわからないという状態では、申し立てができないため、調査をして明確にしておく必要があります

もし、ご自身での調査が難しい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士は依頼を受けた事件について、証拠や資料の収集や事実調査のため官公庁や企業などの団体に対し調査・照会ができる「弁護士会照会」を利用できます。弁護士照会で照会を受けた相手には、原則、回答をする義務があります。そのため、元配偶者の住所や連絡先を確認することができるのです。

なお、弁護士照会は法律で定められた権利ですから、個人情報保護法に反することはありません。

(3)財産分与の確定まで時間がかかることがある

財産分与において双方の合意を得るまでには何度も協議を重ねることがあります。とくに不動産に関する財産分与は住宅ローンの関係もあり時間がかかるケースが多いです。

離婚する前で同じ家に住んでいれば、財産分与の協議も頻繁に行うことができます。しかし、離婚をして元配偶者と住んでいる場所が離れていると、日程調整や時間の制約などにより、協議ができないことも珍しくありません。

また、元配偶者が除斥期間を過ぎるまでわざと財産分与の協議を長引かせるケースもあり、離婚前に協議をするよりも財産分与が終わるまでに時間がかかる可能性があります。

そのため、時間がかかりそうであれば早めに「財産分与請求調停」の申し立ても検討しましょう。

2.離婚後に財産分与をする手順

離婚後に財産分与を行う場合、下記の手順で進めていくことが一般的です。

  1. 共有財産の洗い出し
  2. 元配偶者と協議をして合意を得る
  3. 財産分与を受ける

手順は、離婚前に財産分与の合意を得る場合と同じです。ただし、離婚後に財産分与を行う場合、元配偶者との協議に時間がかかることがあるため確認しておきましょう。

(1)共有財産の洗い出し

離婚後に財産分与を行う場合、まずは対象となる財産の洗い出しが必要です。財産分与の対象になるのは、婚姻期間中に築いた共有財産です。

離婚後に元配偶者が財産を処分して現物がなくなっていたとしても、財産に相当する金銭を請求することができます。しかし、婚姻期間中は元配偶者が財産管理をしていて把握できていないというケースや、婚姻期間中の財産を把握するための資料が手元に無いというケースも珍しくありません。

共有財産の洗い出しが難しい場合は、弁護士に相談してみてください。
弁護士に依頼することで、弁護士会照会によって元配偶者の財産を照会できるため、共有財産が把握できる可能性が高くなります。

(2)元配偶者と協議をして合意を得る

財産分与の対象となる共有財産が確定したら、元配偶者と協議をして財産分与について合意を得ます。配偶者の合意を得られたら、取り決めた条件を公正証書に残しておきましょう。公正証書に残しておくことで万が一条件が守られなかった場合、証拠資料として調停や裁判で役立てられます。協議をしても元配偶者の合意がなかなか得られない場合は、調停や裁判に進むため、除斥期間内に家庭裁判所に「財産分与請求調停」を申し立てておきましょう。

(3)財産分与を受ける

財産分与が確定したら条件に沿って受け取ります。
条件通りに受け取れない場合は、裁判所を通じて元配偶者に請求を行います。財産分与が確定した場合、通常の債権と同じ扱いになるため請求できる権利が10年間になります

3.離婚後に財産分与をするなら弁護士に相談すると安心

離婚した後に元配偶者に財産分与を請求する場合、婚姻期間の共有財産が正確に把握できないことや、元配偶者とスケジュールを合わせて協議の場を設けることが難しいケースがあります。そのため、離婚する前に財産分与を進めるよりも時間がかかることが多いです。

しかし、財産分与には2年間の除斥期間があることから、いつか確定できればという訳にはいきません。権利を消滅させないためにもなるべく早い期間に確定をしておく必要があります。

もし、ご自身で解決することが難しい場合は一度弁護士に依頼することも検討しましょう
財産分与を弁護士に依頼することで、共有財産の洗い出しから元配偶者との協議も代わりに行うため、解決までの時間を大幅に短縮できる可能性が高いです。

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