公開日:2022.06.13 | 最終更新日:2024.09.24
財産分与の対象外となる特有財産とは?条件と守り方について解説
夫婦が離婚をするときは、財産分与をして所有する財産をお互いに分け合います。
このとき、夫婦が所有する財産は、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した「共有財産」と、配偶者とは関係なく形成された「特有財産」の2種類に区分されます。
財産分与は、夫婦が婚姻生活を送る中で形成した財産を公平に分けることを目的としているため、対象となるのは共有財産のみです。特有財産と判断された財産は原則として財産分与の対象にはなりません。
ただし、所有する財産が特有財産であっても、証明ができなければ共有財産となり財産分与の対象になる場合があります。所有する特有財産を守るには、配偶者に証拠を提示して立証できる準備をしておくことが重要です。
ここでは、財産分与の対象外となる「特有財産」の条件と守り方について解説していきます。
1.特有財産と判断される財産の条件
所有する財産が下記の条件に該当する場合は、特有財産と判断される可能性が高いです。
- 結婚前から所有していた財産
- 婚姻期間中に相続または贈与された財産
特有財産については、民法第762条において次のように定められています。
(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
引用元:民法
特有財産は個人で形成された財産になるため、共有財産との違いは財産の形成に夫婦の協力があったかどうかです。配偶者の収入や行動が財産の形成に関わっていなければ、特有財産と判断される可能性が高くなります。
では、どのような財産が特有財産となるのか確認しておきましょう。
(1)結婚する前から所有していた財産
結婚前から所有していた財産は、特有財産として認められる可能性が高くなります。夫婦の協力に関係なく形成された財産は個人財産になるため、共有財産には該当しないと判断されるからです。
仮に結婚前に購入した不動産や自動車を婚姻期間中に夫婦で使用した場合でも、婚姻期間中に夫婦のどちらか一方の収入が財産に使われていなければ、財産分与の対象になる可能性は低いです。
ただし、結婚前に購入した財産にローンの残債があり、婚姻期間中に返済をした場合は財産の一部が共有財産となるケースがあります。
たとえば、結婚前に3,000万円のマンションをローンで購入し、2,500万円を返済した時点で結婚。残りの500万円を婚姻期間中に返済した場合、財産分与時の評価額に対して2,500万円分の割合が特有財産となり、500万円分の割合が共有財産と判断される可能性があります。
このように共有財産と特有財産が混在している財産では、共有財産と認められた分を配偶者と分け合う必要があるため、財産分与の際は財産の割合を正確に算出しておく必要があります。
(2)婚姻期間中に相続または贈与された財産
婚姻期間中であっても、自己の名で相続または贈与された財産については特有財産と判断される可能性が高くなります。
両親や祖父母等の親族など夫婦以外の第三者から相続や贈与された財産は、夫婦が協力して形成したわけではないため、共有財産とは分けて考えられるからです。
株式や不動産など価値の変動する財産を相続した場合、婚姻期間中に価値が高騰するケースもあります。しかし、特有財産では取得時から高騰した分の差額が財産分与の対象になることはありません。
(3)特有財産から発生する収入はケースバイケース
特有財産から発生する収益については、財産分与の明確な基準はありません。
特有財産として所有する不動産からの家賃収入や株式からの配当が、配偶者の協力が全くない状態で形成されていれば、特有財産として判断される可能性が高いです。
しかし、特有財産からの収入が、配偶者の協力によって発生している場合には共有財産と判断されることがあります。たとえば、特有財産として所有している不動産の管理や帳簿の管理などを配偶者が手伝っている場合は、そこから発生する家賃収入は夫婦の共有財産となる可能性が高いため、財産分与の対象になることがあります。
共有財産となる範囲は、判断が難しいケースが多くトラブルにもつながりやすいため、弁護士に相談することをおすすめします。
2.特有財産を証明できなければ財産分与の対象になる
所有する財産が特定財産であっても配偶者に証明できない場合は、原則として共有財産となり財産分与の対象になります。
これは、民法762条においても下記のように定められています。
(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 2
夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
引用元:民法
所有する財産が特有財産であることを主張しても配偶者が納得せず、さらに立証する証拠もなければ、財産分与の際に分けあうことになります。
特有財産を守るためには、相続された財産であれば遺産分割協議書、贈与された財産については贈与契約書など、財産分与について協議する際に立証するための証拠を準備しておきましょう。
(1)財産隠しが発覚すると損害賠償を請求されるおそれがある
特有財産であることの証明ができないため、財産を隠して財産分与を逃れる、いわゆる「財産隠し」をするケースは珍しくありません。しかし、財産隠しをしたことが配偶者に発覚した場合、財産分与の請求だけでなく、損害賠償を請求されるおそれもあります。
配偶者が水面下で財産の把握をしていたり、弁護士会照会や調査嘱託を利用したりすれば、財産を隠しても見つかってしまう可能性が高いです。
財産隠しをすることで結果的に不利になることもあるため、財産分与では正直な財産額を提示するようにしましょう。
3.特有財産はご自身で管理することが重要
配偶者による特有財産の使い込みや持ち出しは少なくありません。使い込みに対して配偶者が認めてくれれば、財産分与の際に割合を調整することもできますが、預貯金などは、使い込まれていても立証することが難しいため取り返すことが困難です。
このような事態を回避するためにも、特有財産に関する書類や預貯金を管理している銀行口座などはご自身で管理しておくことが大切です。
また、配偶者が特有財産を持ち出して財産隠しを行った場合は、弁護士に依頼することで見つけられる可能性があります。特有財産を配偶者に持ち出されて悩んでいる方はご検討ください。
4.財産分与のトラブルは弁護士にご相談ください
財産分与では、夫婦がお互いに少しでも多くの財産を手元に残したいと思っているケースが多いため、特有財産の有無がトラブルにつながるケースも少なくありません。
また、財産については夫婦であっても個人情報の関係から情報開示ができないこともあり、財産の把握をすることが難しい場合があります。
財産分与についてご自身で解決することが難しい場合は一度弁護士に依頼することも検討しましょう。財産分与を弁護士に依頼することで、共有財産の洗い出しから元配偶者との協議も代わりに行うため、解決までの時間を大幅に短縮できる可能性が高いです。
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