公開日:2022.12.30 | 最終更新日:2024.09.24
専業主婦(主夫)が財産分与を求めるのはおかしいことではありません
離婚をするときの財産分与は、夫婦が結婚生活のなかで協力して築いた財産を分け合うものです。夫婦の一方が収入のない専業主婦(主夫)であっても、財産の形成に貢献していると判断されるため、財産分与を請求する権利があります。
ここでは、専業主婦(主夫)が財産分与を請求する方法を解説します。すでに財産分与が終わってしまった人に向けて、やり直しができるかについても触れていますのでご参考にしてください。
1.専業主婦(主夫)でも財産分与の権利がある
財産分与とは、夫婦が離婚するときに持っている財産を分け合う制度です。分け合うときの割合は、原則2分の1ずつになります。
また、財産分与は、財産の名義や夫婦のどちらの収入でつくられたかは問われません。
たとえば、妻が専業主婦で収入がなく、財産のすべてが夫の収入で形成されていても、財産分与をするときは原則2分の1ずつです。これは、夫が収入を得られたことや財産をつくれたのは、妻の協力があったからと判断されるからです。
仮に夫から「自分の収入でつくった財産だから、一切渡さない!」と言われても、法律で定められているため、妻は財産分与を請求して受け取る権利があります。
(1)話し合いで解決しなければ調停を申し立てる
財産分与の割合は原則2分の1ずつですが、夫婦の話し合いで合意があれば変えることもできます。しかし、それが原因でお互いに条件を譲らず、話がまとまらないケースも少なくありません。
夫婦の話し合いだけで財産分与の条件が決まらない場合、解決するために行うのが調停です。調停は、夫婦の間に裁判官と調停委員が入り問題解決に向かった話し合いをすることをいいます。
調停をするには、裁判所に申立てをする必要がありますが、財産分与に関する調停は離婚をする前と後で内容が異なります。離婚をする前に裁判所に申立てるのが「離婚調停(夫婦関係調整調停)」です。離婚調停では、財産分与だけでなく、慰謝料や親権など、離婚を成立させるための条件全般を話し合います。
一方、離婚後に財産分与を請求する調停は「財産分与調停」です。財産分与調停は、財産分与の条件のみを話し合う調停です。財産分与の条件について合意ができたら調停が成立し、取り決めた内容で財産を分け合います。
どちらの調停でも話し合いで合意ができない場合は、調停が不成立となり手続が終了します。もっとも、離婚調停では不成立後に裁判(離婚訴訟)をする必要があるのに対して、財産分与調停では自動的に審判手続に進み裁判官が解決案を示してくれます。
離婚そのものは夫婦双方が合意しているという場合には、財産分与の合意の前に先に離婚だけしてしまい、あらためて財産分与調停を申立てするという進め方も検討して良いでしょう。
(2)共有財産のみが対象になる
財産分与は、夫婦が所有するすべての財産が対象になるわけではありません。財産分与の対象となるのは、結婚している間に夫婦が協力してつくられた財産です。このような財産を「共有財産」と呼びます。
共有財産に含まれる財産には、預貯金や株式、債権、マイホーム、自動車などがあります。結婚している間に契約をした生命保険の解約返戻金や、年金、退職金も共有財産となるため財産分与の対象です。
夫の趣味で購入したゴルフクラブや釣具、カメラ、パソコン、キャンプ用品なども共有財産です。
一方、財産分与できない財産が「特有財産」です。
特有財産は、夫婦の協力とは関係なくつくられた財産をいいます。結婚する前から持っていた財産や、離婚した後に作った財産は特有財産となるため、財産分与の対象外です。また、結婚している間でも、親族から相続や贈与された財産は、夫婦の協力とは関係ないため、特有財産になります。
特有財産は、特有財産であることを証明できないと共有財産として扱われます。特に現金や預貯金は、特有財産であることを証明するのが難しいため、事前に準備が必要です。
共有財産と特有財産については下記のコラムも参考にしてください。
■共有財産について
>>財産分与の対象となる共有財産とは?該当する財産について解説
■特有財産について
>>財産分与の対象外となる特有財産とは?条件と守り方について解説
(3)財産分与が請求できるのは離婚から2年以内
財産分与が請求できるのは、離婚が成立した日から2年以内です。さまざまな事情から、一刻も早く離婚を成立させたい場合は、離婚したあとで財産分与を請求することもできます。
ただし、夫婦が離婚をして住む場所が離れてしまうと、話し合いができずに財産分与が長引くことや、相手の財産を把握しにくくなるおそれがあります。
離婚したあとで財産請求をする場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士に依頼すれば、依頼者の代わりに財産分与の話し合いを行うため、連絡を取るストレスがありません。
また、所有する財産は、弁護士会照会という制度を利用して正確に把握できるため、財産を隠して財産分与を逃れることもできなくなります。
(4)有責による離婚でも原則は2分の1ずつ
離婚の原因が、配偶者による不倫、DV、別居など一方的なものであったとしても、財産分与の割合が変わることは原則ありません。財産分与は、夫婦の共有財産を離婚するときに分け合う制度のため、離婚の原因は考慮されないからです。
ただし、離婚の原因が離婚事由に該当する場合は、慰謝料を請求できることがあります。離婚事由は、民法で定められている離婚の理由となり、下記の5つが該当します。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- 婚姻を継続しがたい重大な事由
2.財産分与の割合が変わるケース
財産分与の割合は、次の理由によっては割合が変わることがあります。
- 配偶者の特殊な技能で共有財産が形成された
- 共有資産を浪費していた
原則は夫婦で2分の1ずつですが、場合によっては受け取る財産が減ることがあります。どのような場合に割合が変わるのか確認しておきましょう。
(1)特殊な技能で得た収入で財産が形成されている
共有財産の大部分が配偶者の特殊なスキルで形成されていた場合は、財産分与の割合が減ることがあります。
たとえば、配偶者が弁護士、医師、スポーツ選手、会社経営者など、特定の資格やスキルが必要な職業に携わり、共有財産のほとんどを配偶者の収入で形成しているケースです。
このようなケースでは、共有財産の形成に関して配偶者の貢献度が高いと判断され、財産分与の割合が多くなるケースがあります。
(2)共有資産を浪費していた
夫婦の一方が、共有資産を浪費していた場合、財産分与の割合を減らされることがあります。たとえば、夫婦がそれぞれ200万円ずつ預貯金を持っていて、夫がギャンブルで預貯金を全て使い切っていた場合、100万円ずつの財産分与ではあまりに不合理です。
そのため、夫が財産分与として共有財産の2分の1を請求してきた場合、調停や裁判で主張することで割合が認められないことがあります。
ただし、財産分与の原則は2分の1ずつなので、共有財産の浪費があったとしても、必ず考慮されるわけではありません。
3.財産分与はやり直しできることがある
財産分与は、一度取り決めた内容を配偶者の合意無しに変更することは原則できません。しかし、次のケースに該当する場合は、配偶者の合意なしでも財産分与のやり直しができることがあります。
- 財産分与をしたあとに財産隠しが発覚した
- 脅迫をされて財産分与をしなかった
財産分与のやり直しに対して配偶者が合意しない場合、調停や裁判をする必要があります。その際には、証明するための証拠が必要になるため、メモや録音などの証拠を集めておきましょう。
(1)財産隠しをされた
財産分与を行ったあとに配偶者が財産を隠していたことが発覚した場合は、財産分与をやりなおせる可能性があります。財産隠しがあった場合、財産分与が適切な形で行われなかったことになるからです。
財産分与のやり直しをするには、財産隠しがあったことを証明する証拠が必要になるので準備をしておきましょう。もっとも、相手が意図的に財産隠しをしていたことを証明する必要があるため、証明のハードルはかなり高いと考えておきましょう。
(2)脅迫された
財産分与の際、配偶者の脅迫によって不利な条件で進められた場合は、取り決めた後にやり直せる可能性があります。暴力や脅迫などで強制的に取り決めた条件は、自由な意思で決めた条件ではないため効力がないからです。
ただし、このケースであっても財産分与をやり直すには、暴力や脅迫によって強制的に取り決められたことを証明するための証拠が必要です。
4.弁護士に依頼をする
専業主婦は収入がないため、財産分与の際は立場が弱くなりやすく、不利な条件で取り決められるケースが少なくありません。しかし、結婚生活のなかで形成した財産は、夫婦が協力したからこそ築けたものです。
原則2分の1は受け取る権利があるため、適切な財産分与ができるように準備をしておきましょう。
財産分与の割合に対して合意を得られない場合は、弁護士に依頼することも検討してください。弁護士に依頼することで、配偶者の財産を正確に把握できるだけでなく、少しでもよい条件で財産分与ができるように交渉を進めます。多くの弁護士事務所では、無料相談を行っていますので、そのような事務所を選ぶことで、費用をかけずに相談できます。
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