公開日:2023.03.16 | 最終更新日:2024.09.24
離婚原因に対する慰謝料の相場と増額の条件。請求できないケースの対策とは
夫婦が離婚をするとき、配偶者に責任があれば慰謝料を請求できます。
請求する金額に制限はありませんが、実際にいくらもらえるかは、離婚原因によって相場がある程度決まっています。
適切な慰謝料をもらうには、配偶者からうけた精神的苦痛を事実に基づいて説明できる準備が必要です。離婚原因に対する慰謝料の相場と増額できる条件について確認しておきましょう。
1.離婚原因に対する慰謝料の相場
離婚の原因となる要因と請求できる慰謝料の相場は次のとおりです。
離婚の原因 | 慰謝料の相場 |
---|---|
不貞行為 | 100~300万円 |
DV・モラハラ | 50~300万円 |
性の不一致 | 10~100万円 |
一方的な別居 | 50~300万円 |
離婚するときに慰謝料を請求できるのは、配偶者が有責行為をしたと判断された場合です。
有責行為とは、不貞行為、悪意の遺棄(一方的な別居など)、身体的・精神的DVといった、夫婦生活の義務に違反する行為です。
慰謝料の金額に幅があるのは、夫婦それぞれの主張や証拠などさまざまな要素が考慮して決まるためです。配偶者の有責行為が認められたとしても、請求した金額がそのままもらえるとは限りません。
(1)協議離婚の慰謝料は自由に設定できる
夫婦の話し合いだけで離婚を成立させる協議離婚では、双方の合意があれば離婚条件を自由に決められます。慰謝料も同じで、仮に1,000万円や1億円といった相場よりも高い金額を請求しても、相手が同意すれば問題ありません。
ただし、離婚の原因や受けた苦痛の程度などの事情を考慮しても、慰謝料が高すぎると税務署に判断された場合、もらいすぎた分に対して贈与税が課されることがあります。
贈与税が課せられた場合、慰謝料をせっかく勝ち取っても手元に残るお金が減ってしまいます。このようなリスクを回避するために、税務署から説明を求められた際、慰謝料の額が適切であることを説明できる準備をしておきましょう。
2.慰謝料がもらえないケース
慰謝料は、離婚するときに必ずもらえるものではありません。離婚の慰謝料には「離婚自体慰謝料」または「離婚原因慰謝料」の2種類があり、配偶者から慰謝料をもらうためにはどちらかの条件に該当している必要があります。
離婚自体慰謝料:離婚することで受けた精神的苦痛を償うための損害賠償
離婚原因慰謝料:離婚の原因となった有責行為で受けた精神的苦痛を償うための損害賠償
そのため、次のケースでは条件に該当せず、慰謝料をもらえないことがあります。
- 配偶者の有責行為が軽い
- 有責行為を証明できる証拠がない
- 慰謝料を請求できる期限が過ぎている
- 夫婦のどちらも有責行為がない
なお、夫婦の双方に有責行為が認められた場合、有責性の割合が大きいほうから小さいほうへ慰謝料を支払うケースが多いです。
(1)配偶者の有責行為が軽い
離婚の原因が配偶者の有責行為であったとしても、程度が軽いと判断されると慰謝料がもらえないことがあります。有責行為の程度が軽すぎると、慰謝料を払うほどの精神的苦痛がないと判断されるためです。
しかし、配偶者から受けた精神的苦痛が客観的に軽いと判断されても、受けた本人は相当な苦しみを乗り越えてきていることもあります。そのため、調停や裁判では、精神的苦痛があったことを証明する証拠を集めて、適切に判断してもらえるように準備を進めましょう。
(2)有責行為を証明できる証拠がない
有責行為をした配偶者から慰謝料をもらうには、有責行為があったことを証明する証拠が必要です。証拠がない状態で慰謝料を請求しても、配偶者が事実を認めなければ、もらうことはできません。
また、有責行為の証拠だと思って集めていたものが、無効になることがあります。たとえば、配偶者が不倫をしていた場合は、不倫の現場を撮影した写真や動画は証拠として有効ですが、そのときに利用した飲食店のレシートだけでは不十分です。
証拠集めが不十分のまま慰謝料を請求すれば、慰謝料をもらえないだけでなく、有責行為の証拠を消されてしまうおそれもあります。
再び証拠を集めることが困難になるため、どのような証拠を集めたらよいかわからない場合は、当事務所にご連絡ください。
(3)慰謝料を請求できる期限を過ぎている
配偶者に慰謝料を請求できるのは、離婚が成立した日から3年間です。期限を過ぎると時効が成立するため、慰謝料を請求しても相手が任意で応じない限りもらうことはできません。
ただし、時効が成立する前に内容証明郵便で相手に慰謝料を請求すれば、時効期間が半年間延長されます。さらに、裁判を起こせば時効が中断するため、時効が成立するギリギリであっても慰謝料をもらえる可能性は十分にあります。
(4)夫婦のどちらも有責行為がない
離婚の慰謝料は、配偶者の有責行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。そのため、双方に有責行為がない離婚の場合は、慰謝料を請求してももらえる可能性が低いです。
たとえば、離婚原因のなかで割合の多い「性格の不一致」は、有責行為に該当しないため、慰謝料が認められることは基本的にありません。
ただし、離婚原因が性格の不一致だと思っていても、実際は配偶者の精神的DVなど有責行為に該当しているケースがあります。
自己判断をする前に、一度弁護士に相談してみましょう。
3.慰謝料を増額するための条件
離婚の慰謝料は、離婚原因によって相場がある程度決まっています。しかし、慰謝料がもらえるのは一度だけなので少しでも多くもらいたいものです。
慰謝料を増額するための条件には次のものがあります。
- 有責性が高いことを証明できる証拠がある
- 精神的苦痛を受けた期間がながい
離婚の慰謝料は、配偶者の主張なども考慮されるため、条件がそろっていても増額が必ず認められるとは限りません。しかし、準備をしておくことで可能性が高くなるため確認しておきましょう。
(1)有責性が高いことを証明する証拠がある
慰謝料を増額するために重要なのが、配偶者の有責行為を証明するための証拠です。慰謝料は、配偶者から受けた精神的苦痛が大きいほど、増額される傾向があります。
そのため、証拠についても有責性が高いと判断されるものを集めることが重要です。
たとえば、離婚の原因が配偶者の不倫であれば、不倫相手と会っていた回数や不倫をしていた期間を証明できる証拠があれば、有責性が高いと判断される可能性があります。
また、身体的DVであれば、ケガの状態を写した写真、当時の状況を記録したメモの他に、警察等への相談記録や医療機関の受診記録があれば有責性が高くなる可能性があります。
どれくらいの証拠があれば慰謝料が増額されるのかは、個人では判断が難しい場合があります。すでに十分な証拠があるのに、さらに証拠を集めようとすれば、精神的苦痛によって体調を崩すおそれもあります。
早期解決を目指すには、少しでも早いタイミングで弁護士などの専門家に相談しましょう。
(2)精神的苦痛を受けた期間が長い
配偶者から受ける有責行為は、期間が長くなるほど精神的苦痛も大きくなる傾向があります。そのため、有責行為の期間は、慰謝料の増額に必要な条件です。そのため、精神的苦痛がいつから始まったのかを記録しておくことで慰謝料が増額される可能性が高いです。
ただし、期間は条件のひとつにすぎません。短期間でも有責性が高いことが認められると慰謝料が増額される可能性があります。
慰謝料のために結婚生活を無理に続けると心身に大きな負担がかかってしまうため絶対にやめましょう。
4.適性相場の慰謝料を受け取るなら弁護士に相談する
離婚の慰謝料は、原因によって相場がある程度決まっていますが、配偶者の有責性が高いことを証明できれば増額される可能性は十分にあります。
しかし、希望する慰謝料をもらうには、請求する慰謝料が配偶者から受けた精神的苦痛に対して適切であることを調停や裁判で証明する必要があります。それには法的な知識が求められるため、不安があれば弁護士にご相談ください。慰謝料の増額に必要な証拠集めや、調停、裁判を有利に進めるお手伝いをいたします。
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