公開日:2023.03.16 最終更新日:2024.09.24

不貞行為に該当する行為と立証するための証拠

不貞 行為

配偶者の不倫や浮気が発覚したときに「慰謝料をもらって離婚した」というのは、よく聞く話です。

配偶者に離婚や慰謝料が請求できるのは、不倫や浮気が不貞行為に該当していることが理由です。不貞行為とは具体的にどのようなことをいうのでしょうか。該当する行為や立証するための証拠について解説します。

1.不貞行為とは

不貞行為とは、夫婦のどちらか一方が、配偶者以外の人と自らの意思で性的関係をもつことです。性的関係は、一般的に肉体関係があったことをいいます。

不貞行為は法律で禁止されているわけではないため、不貞行為をしただけで罰せられることはありません。しかし、民法770条1項1号によって法的に認められる離婚の理由に定められているため、配偶者の不貞行為が発覚した場合は離婚を請求できます。

また、結婚している夫婦には、お互いに自分以外の人と性的関係を持たないように要求する貞操権があり、不貞行為はこの権利を侵害する不法行為に該当します。そのため、不法行為をされた人は、権利を侵害する行為を受けたとして相手に慰謝料を請求できます。

なお、不貞行為は、夫婦だけでなく婚約中や内縁関係にあるカップルでも責任が問われます。

(1)慰謝料は不貞行為の相手にも請求できる

配偶者の不貞行為が発覚した場合、不貞相手にも慰謝料を請求できます。不貞行為により、夫婦関係の破綻や離婚した場合、婚姻生活を送る権利を相手の不法行為で侵害されるためです。

慰謝料は、不法行為で受けた精神的苦痛に対する損害賠償のため、その原因をつくった配偶者とその相手の両方に慰謝料を請求することができるのです。

(2)不倫・浮気との違い

不倫や浮気は、配偶者以外の人との関係性をあらわすときに使う言葉です。どちらも配偶者以外の人に好意を寄せることや、親密な関係になることを意味します。それぞれの言葉に明確な区別はありませんが、既婚者に対しては不倫が使われることが多いです。

不貞行為は、不倫や浮気のなかで起こる行為のひとつのため、より狭い範囲で使われます。たとえば、配偶者が異性と恋愛関係にあっても肉体関係がなく、キスや腕組みをしただけででは不貞行為に当たらないとされるのが一般的でしょう。

このように、配偶者が浮気や不倫をしていても、必ずしも不貞行為になるとは限りません。

(3)風俗店の利用も不貞行為に該当する

不貞行為は、肉体関係があった相手に自由意志があったかどうかは考慮されません。配偶者と相手との間に恋愛感情がなくても、肉体関係があれば不貞行為になります。

そのため、配偶者がいながら風俗店の利用をすることは、不貞行為に該当する可能性が高いです。

ただし、不貞行為の相手が風俗店の従業員だった場合は、慰謝料を請求する際に注意が必要です。不貞行為による慰謝料の請求は配偶者と相手方の両者にできますが、このようなケースでは、不貞相手は対価をもらい業務上のサービスとして肉体関係を行ったにすぎません。

そのため、風俗店の従業員に対して不貞行為を理由に慰謝料請求をすることは難しいと考えられています。
また、風俗店の従業員は、相手が既婚者であることを知らない可能性が高いため、このような理由からも配偶者に離婚と慰謝料の請求はできても、その相手に慰謝料を請求するのは難しいでしょう。

2.不貞行為を立証する証拠

不貞行為があったことを配偶者が認めない場合、相手との間に肉体関係があったことを明確にする証拠が必要です。不貞行為の証拠は数多くありますが、代表的なものは次のとおりです。

  • 肉体関係があったことが分かる画像や動画
  • 配偶者と相手との音声
  • 不貞行為を認めた念書や音声
  • LINEやメール、SNSのやり取り
  • 興信所の報告書
  • ラブホテルのレシートや領収書

不貞行為が疑われる証拠が見つかったら、必ずファイルのコピーやスクリーンショットなどで保存して、自分のスマートフォンやパソコンに転送しておきましょう。

配偶者に不貞行為を追求しても、証拠がなければはぐらかされるおそれがあります。さらに離婚や慰謝料の請求を逃れるために、証拠隠滅を図るかもしれません。そのため、不貞行為を立証して離婚や慰謝料を請求するには、入念な準備が必要です。

(1)不貞行為が客観的にわかる証拠を集めることが大切

不貞行為の証拠は、第三者が見ても事実であったことが分かることが重要です。夫婦の話し合いで配偶者が不貞行為を認めず、離婚や慰謝料の支払いにも応じない場合は、調停の申立てや訴訟の提起をすることになります。

調停では調停委員が当事者の主張を聞きながら、解決策を見つけていきます。そこで、不貞行為があったことを立証するには、調停委員が納得する証拠が必要です。
訴訟(裁判)を提起したとしても裁判官が不貞行為を認めるのに十分な証拠を提出しなければ不貞行為を認めてもらうことはできません

提出した証拠が、鮮明ではない写真や動画、相手を特定できないLINEやメール、店名や住所が判別できない領収書やレシートだけでは、不貞行為があったことを証明するのは難しいでしょう。

そのようなリスクを回避するためにも、有効性の高い証拠を集めることが大切です。

3.不貞行為による離婚や慰謝料の請求が難しいケース

配偶者の不貞行為が発覚しても、下記のケースでは離婚や慰謝料の請求ができないことがあります。

  • 肉体関係を持った回数が少ない
  • 不貞行為を立証する証拠が少ない
  • 別居中の不貞行為
  • 脅迫や暴力などによって肉体関係を強制された

上記の例はあくまで傾向のため、配偶者の有責性があったことを立証できれば、請求できる可能性があります。ただし、それには入念な準備が必要です。焦って行動すると希望する結果につながらないおそれがあります。何から準備をすればいいかわからず不安な場合は、弁護士に相談しましょう。

(1)肉体関係を持った回数が少ない

不貞行為は、法律で定められた離婚原因になるため、たとえ1回でも離婚と慰謝料を請求できます。ただし、配偶者が離婚に納得せず調停に進んだ場合、調停委員は夫婦関係を再構築すべきという方向性で話を進める傾向があります。

1回の不貞行為であっても精神的苦痛によって一緒に暮らすことが困難になった場合は、婚姻関係が破綻したと判断されるため、回数に関係なく離婚と慰謝料が請求できる可能性があります。

(2)不貞行為を立証する証拠が少ない

夫婦の話し合いで配偶者が不貞行為を認め、離婚と慰謝料の支払いに合意すれば証拠は必要ありません。しかし、調停になった場合は、不貞行為を立証するための証拠が必要です。

不貞行為を証明するための証拠が揃っていなければ、配偶者の有責性が判断できないため、慰謝料と離婚の請求が認められる可能性が低くなります。また、証拠が少ない場合、有責性が認められても、精神的苦痛が少ないとして、慰謝料を減額されることがあります。

(3)別居中の不貞行為

別居中の夫婦は、客観的にすでに婚姻関係が破たんしていると判断されるため、不貞行為による離婚や慰謝料の請求が認められる可能性は低いです。

不貞行為によって離婚や慰謝料が請求できるのは、不貞行為が原因で精神的苦痛を受けた場合です。つまり、別居中の不貞行為は、すでに夫婦がお互いに興味や愛情がない状態で起きているため、精神的苦痛が起きないと考えられます。

ただし、単身赴任や子どもの養育、両親の介護などが理由の別居であれば、婚姻関係が破たんしているとはいえません。また、別居期間が短い場合も、婚姻関係が破たんしていると認められないことがあるため、不貞行為が発覚した場合は、離婚と慰謝料を請求できます。

(4)肉体関係を強制された

不貞行為にあたるのは、配偶者が自らの意思で性的関係をもった場合です。配偶者に意思がないのに、相手から肉体関係を強制された場合は不貞行為になりません

もし、脅迫や暴力によって肉体関係を強制されていた場合、強制性交等罪が成立する場合があるため、すみやかに警察に被害を届けるなどの対応が必要です。

4.不貞行為での離婚や慰謝料の請求は弁護士に相談する

配偶者の不貞行為が発覚したら、まずは冷静になって証拠を集めるなどの準備を進めましょう。感情的になって暴力や暴言などをすれば、慰謝料を減額されるだけでなく、反対に配偶者から請求されてしまうかもしれません。

不貞行為に対してどのように行動すべきかわからないという人は、弁護士にご相談ください。有効性の高い証拠の集め方や、適切な慰謝料が請求できる方法についてアドバイス致します。

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