公開日:2023.03.31 最終更新日:2024.09.24

離婚届を代筆する方法と注意点

離婚届 代筆

夫婦が離婚をするときは、離婚届を書いて役所に提出します。離婚届には、夫婦がお互いに自署をする欄がありますが、さまざまな理由から配偶者が署名できない場合があります。

このようなケースでは、離婚届を代筆することはできるのでしょうか。

結論を言えば、離婚届の代筆は認められます。ただし、代筆した離婚届が受理されるには条件を満たす必要があります。また、注意点もあるため確認しておきましょう。

1.離婚届が受理される条件

離婚の種類には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがあります。どの場合も離婚届を夫婦の本籍地または所在地を管轄する役所の担当窓口に提出する必要があり、受理されると成立します。

離婚届が受理されるには、提出時に次の条件を満たしている必要があります。

  • 記載事項が漏れなく正確である
  • 必要書類がそろっている
  • 離婚不受理届が提出されていない

離婚届が受理されると、戸籍の書き換えが行われ、身分事項に「離婚」が記載されます。新しい戸籍が取得できるのは、離婚届が受理されてからおよそ1~2週間後です。

(1)離婚届の代筆は配偶者の合意が必要

離婚届には、離婚する夫婦がそれぞれ署名する届出人署名の欄があります。届出人署名は「本人が自署してください」と記載がある通り、本人が書くのが原則です。

しかし、身体上の都合や住んでいる場所が離れているなどの理由から、本人が署名できないときは、代筆できることが戸籍法施行規則62条で定められています

戸籍法施行規則62条

届出人、申請人その他の者が、署名すべき場合に、署名することができないと市町村長において認めるときは、氏名を代書させるだけで足りる。

2.前項の場合には、書面にその事由を記載しなければならない。

代筆が認められるのは、夫婦がお互いに離婚に合意していて、署名をしたくてもできないときです。代筆をしたときは、離婚届に理由を必ず書く必要があります。

(2)偽造した離婚届を代筆・提出すると罰せられる

離婚届を提出するときは、筆跡や夫婦の合意を確認されることは基本的にありません。提出自体も1人でできるため、配偶者の合意なしで書いた離婚届であっても、離婚届に不備がなく形式的な条件を満たしていれば受理されます。

ただし、配偶者の合意がないのに離婚届に勝手に代筆で署名した場合、離婚届の偽造になるため、有印私文書偽造罪(刑法159条)に該当します

さらに偽造した離婚届を提出すると有印私文書行使罪(刑法161)、提出後に受理され戸籍に記載されると公正証書原本不実記載罪(刑法157条)にあたるため、絶対にやめましょう。

なお、離婚届の代筆が犯罪行為に該当するのは、協議離婚の場合のみです。調停離婚、裁判離婚では、すでに離婚の成立がしているので、配偶者の署名なしで提出しても受理されます。

2.離婚届を代筆するときの注意点

離婚届の代筆は、配偶者が離婚に合意しており、署名ができない正当な理由があれば認められます。ただし、正しい方法で行わないと、あとからトラブルにつながるおそれもあるため、注意点を確認しておきましょう。

(1)配偶者が代筆に合意した証拠を残しておく

離婚届を代筆するときは、配偶者が代筆に同意したことがわかる証拠を残しておきましょう。

離婚の代筆は、配偶者の合意があれば認められています。しかし、合意したあとに配偶者の気が変わり、代筆を認めていないと主張するかもしれません。代筆のやり取りが口頭だけだった場合、合意がしたことを証明するのは難しくなります

このようなトラブルを避けるためにも、代筆に合意したことを、録音や書面などを証拠として残しておくようにしましょう。

(2)証人欄は代筆ができない

協議離婚では、離婚届に2人以上の証人から署名押印をもらうことが民法第764条によって定められています。離婚届の証人欄は代筆が認められていないため、証人以外の人が署名した離婚届は無効です

離婚届に証人が必要な理由は、虚無の離婚届が受理されるのを防ぐためです。協議離婚は、夫婦が話し合いをして合意すれば成立します。しかし、その話し合いが本当に行われたのか、離婚に対してお互いの合意があったのかは第三者がいなければ確認できません。

証人は、離婚に対する夫婦の意思や離婚届が正しく作成されたことを確認する役割があります。そのため、代筆が認められていないのです。

18歳以上の人であれば特別な資格がなくても証人になれます。証人になれる人がいない場合は、弁護士または証人代行サービスの依頼も検討してみましょう。

なお、調停離婚、裁判離婚では、離婚届を提出する際に、裁判所が作成した書類を添付すれば証人欄の記入がなくても受理されます。

3.配偶者の合意なしで離婚をする方法

配偶者と話し合いをしても離婚の合意が得られない人や、肉体的精神的DVが怖くて話し合いをしたくない人は、離婚届の代筆を考えてしまうかもしれません。

しかし、仮に偽造した離婚届が受理された場合、役所から配偶者宛に離婚届の受理通知が届くため、結局は発覚する可能性が高いです。

合意がない離婚届は無効になるだけでなく、偽造した離婚届を勝手に提出されたことに対して、損害賠償を請求するおそれもあります。

配偶者の合意なしで離婚するなら、離婚調停を検討してみましょう。離婚調停は、夫婦の間に家庭裁判所が選任した調停委員が入り、争いの解決に向けた話し合いをする手続きです。

さらに、調停でも合意が得られない場合は、訴訟を起こして離婚裁判を行います。離婚裁判では、夫婦それぞれの主張を裁判官が聞き、判決という形で決定的な判断を下します。配偶者の合意がなくても、強制的に離婚が成立します

(1)法律上の離婚事由に該当している必要がある

離婚調停から離婚裁判に進むには、家庭裁判所に訴訟を提起する必要がありますが、それには離婚を求める理由が、法律上の離婚事由に該当していることが必要です。法律上の離婚事由とは、法律で定められた離婚を認める事由のことを言います。法律上の離婚事由に該当する婚原因は下記の5つです。

法律上の離婚事由に該当する離婚原因と具体例
離婚原因 具体例
不貞行為 配偶者以外の異性と肉体関係を持った
悪意の遺棄 正当な理由がないのに別居をしている
生活費を渡さない
3年以上の生死不明 配偶者と連絡が取れず、生死が不明の状態が3年以上続いている
回復の見込みのない強度の精神病 配偶者が回復する見込みのない強度の精神病にかかり、
夫婦として共同生活を続けていくことが困難な状態
婚姻の継続が難しい重大な事由 精神的や肉体的なDV
性の不一致
長期間の別居など

婚調停や離婚裁判を裁判所に申し立てる場合、離婚原因が法律上の離婚事由に該当していることを証明するための証拠が必要です。

4.配偶者との話し合いが難しければ弁護士に依頼する

離婚届の代筆は、配偶者が離婚に合意していて署名ができない状態で認められています。合意していない状態で勝手に代筆をすれば、離婚が無効になるだけでなく罪に問われることや、損害賠償を請求されるおそれがあります。

もし、配偶者と離婚をしたいけれど、なかなか合意を得られないという場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士に依頼すれば、代理人として配偶者との話し合いを行います。

また、調停や裁判に進んだ場合、専門的な知識が必要になりますが、弁護士が各種手続きや裁判所でのやり取りなどを行うため、手間を省き有利に進められます。多くの弁護士事務所では、無料相談を行っておりますので、離婚について何から始めたらいいかわからず不安な人は、まずは相談してみましょう。

弁護士法人新小岩法律事務所では、予約により平日20:00開始の無料相談も行っております。当事務所は新小岩駅南口徒歩1分の場所にありますので、小岩、新小岩、平井、亀戸、錦糸町など、総武線沿線の地域にお住まいの方は、仕事帰りにぜひご活用ください。当事務所では、上記の地域だけでなく市川、船橋や松戸の方からもご相談をいただいております。

また、土日の相談にも対応しておりますので、お気軽にご連絡ください。

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