公開日:2023.06.24 | 最終更新日:2024.09.24
離婚準備の手引き│安定した生活を手に入れるためにすべきこと
離婚を有利な条件で成立させ、安定した生活を送るには入念な準備が不可欠です。しかし、離婚準備の必要性は知っていても、具体的な内容をイメージすることは難しいかもしれません。
ここでは、離婚を円滑に進めるための準備と、離婚後に安定した新生活を送るために必要な準備について詳しく解説します。
1.離婚を円滑に進めるための準備
離婚を考えている場合は、下記の準備を進めておきましょう。
- 離婚理由をまとめる
- 有責行為の証拠集め
- 離婚条件の整理
- 所有する財産の把握
- 必要書類の取得
配偶者に離婚の意思を伝えた時、理由に関係なく離婚に同意してくれて、離婚条件もすべて要求どおりになるなら準備は必要ないかもしれません。
しかし実際は、離婚の同意を得たり、離婚条件を取り決めたりするために配偶者と何度も話し合いをするケースが多いです。準備ができていないと、話し合いの回数や時間が増えてしまい、離婚成立までに時間がかかることがあります。
また、準備ができていないと配偶者との話し合いのなかで交渉がうまくいかず、不利な条件で離婚してしまうリスクがあるため、必要な準備を確認しておきましょう。
なお、配偶者から離婚を切り出された場合の対応については下記のコラムをご確認ください。
(1)離婚理由をまとめる
離婚をスムーズに進めるには、離婚の意思やその原因が配偶者に伝わるように準備をする必要があります。
配偶者に離婚の話を切り出したとき、理由を聞かれることがほとんどでしょう。その際に話す内容がまとまっていないと、勇気を出して時間をつくったのに目的を果たせずに終わってしまうかもしれません。
とくに、離婚理由のなかでも割合が多い「性格の不一致」では、DVや不倫と異なり、決定的な理由が存在しないため、なぜ離婚をしたいのかを配偶者に説明する必要があります。
離婚理由を事前にまとめておくことは、配偶者の理解や同意を得るために大きな役割を果たすのです。そのため、具体的な理由や思いを整理し、準備をしておくことが重要です。
■必要なことを簡潔に話す
離婚理由を伝えるときは感情的にならず、必要なことを簡潔に伝えることを心がけましょう。細かい経緯を話しすぎると時間がかかり、配偶者に伝えたいことが伝わらないことがあります。また、当時のことを思い出すことで感情的になり、話し合いが中断するかもしれません。そのような状況を避けるには、事前に以下の情報をまとめておくとよいでしょう。
- 離婚の意思
- 離婚理由
- 具体的な事例
配偶者を目の前にしたときに緊張で言葉に詰まりそうであれば、手紙などで伝える方法も有効です。
(2)有責行為の証拠を集める
離婚理由が配偶者の有責行為である場合は、必ず証拠を集めておきましょう。有責行為とは、不貞行為、悪意の遺棄(一方的な別居など)、身体的・精神的DVといった、夫婦生活の義務に違反する行為です。
証拠があれば配偶者は言い逃れができないため、有責行為を認めさせる時間がない分、話し合いや交渉がスムーズに進められます。もし、配偶者が有責行為を認めなくても、証拠があれば調停や裁判で有利に進められる可能性が高いです。
有責行為の証拠は、離婚を切り出す前に集めておきましょう。離婚を切り出してからだと配偶者に証拠を隠されてしまうかもしれません。また、なかには証拠として認められにくいものもあります。証拠集めに時間をかけても有責行為を証明できない場合があるため、何が有効な証拠かを事前に調べておくと安心です。
有責行為の証拠について、何を準備すればよいか分からず不安な方は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。
>不貞行為に該当する行為と証拠についてはこちら
>悪意の遺棄が認められるための条件はこちら
(3)離婚条件の整理
離婚の話し合いでは、離婚条件の取り決めも行います。離婚条件は、夫婦がお互いに自分にとって有利になるように進めてしまうものです。配偶者から一方的に決められてしまうと、不利な条件で離婚が成立してしまうおそれがあるため、有利な離婚条件で取り決められるように準備をしておきましょう。
■決めておくべき離婚条件は「お金」と「子ども」のこと
離婚条件には、大きくわけて「お金」と「子ども」の2種類があります。
■お金に関する離婚条件
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割
■子どもに関する離婚条件
- 親権
- 養育費
- 面会交流
条件を曖昧にしたまま離婚をすると、トラブルが発生したときに水掛け論に発展して、解決するまでに時間を要することがあります。また、もらえると思っていたお金がもらえなくなると、離婚後の生活に支障が出るおそれがあります。
>離婚原因に対する慰謝料の相場についてはこちら
>離婚時に必要になる子どもの手続きについてはこちら
>父親が子どもの親権を得るために必要な準備はこちら
なお、財産分与や慰謝料は、離婚した後からでも請求ができるため、離婚後に生活を整えてからの話し合いも可能です。しかし、離婚したあとに話し合いの場を設けて条件を取り決めるのは、時間や手間がかかるため、なるべく離婚前に決めておくようにしましょう。
(4)所有する財産の把握
夫婦が離婚をするときは、財産分与をして結婚期間中に築いた財産を分け合います。
財産分与の対象になるのは、結婚期間中に形成された財産です。財産の名義や夫婦のどちらの収入でつくられたかは関係ありません。
財産分与の対象になる代表的な財産は下記のとおりです。
- 現金や預貯金
- 株式
- 不動産
- 自動車
忘れがちですが、生命保険の契約返戻金や配偶者の退職金も対象です。
夫婦の財産は、結婚生活が長いほど細分化しやすく、財産分与を急いで行うと漏れが発生するおそれがあります。財産分与は、離婚後の生活資金として重要なものです。確定したあとから覆すことがむずかしくなるため、受け取り忘れがないように準備しておきましょう。
■財産の把握が難しければ弁護士に依頼をする
財産のなかに価値が把握しにくいものや、配偶者だけが管理しているものが含まれていて、把握が難しい場合は弁護士に依頼をしましょう。
弁護士は、依頼を受けた事件の証拠や資料の収集、事実調査のために金融機関や企業などの団体に対し調査・照会ができる「弁護士会照会」を利用できます。所有する財産の価値だけでなく、配偶者の隠し口座なども発見できるため、財産分与の正確な金額を把握しやすくなります。
なお、弁護士会照会は法律で定められた権利ですから、個人情報保護法に反することはありません。
(5)必要書類の取得
離婚を1日でも早く成立させる場合は、必要書類を事前に取得しておきましょう。夫婦の話し合いだけで離婚を成立させる「協議離婚」では下記の書類が必要です。
- 離婚届
- 戸籍謄本(本籍地以外の役所に提出する場合)
離婚届は、お住まいの地域を管轄する役所の戸籍課や市民課などで取得できます。有効期限はないため、早めに取得しておいても問題ありません。役所によってはWebサイトからダウンロードができることがあるため、確認してみましょう。離婚届は、書き損じることもあるため、予備として数枚用意しておくと安心です。
また、離婚届の提出を、本籍地を管轄する役所以外でする場合、戸籍謄本の提出を求められます。夫婦それぞれの戸籍謄本を提出するため、1通ずつ取得しておきましょう。
なお、離婚調停や離婚裁判を行う場合は別途書類が必要です。
>離婚成立に必要な書類についてはこちら
>離婚届を代筆する方法はこちら
2.離婚後に安定した生活を送るための準備
離婚後の生活は、各種手続きや新しい住まいでの生活などで忙しくなりますが、離婚前に準備をしておくことで安定しやすくなります。
離婚後の生活に必要な準備は次のとおりです。
- 安定した収入の確保
- 離婚後の住まい探し
- 公的支援の相談
配偶者と離婚することだけを考えて準備を進めると、離婚後の生活を安定させるまでに時間がかかることがあります。また、離婚をしたのに今住んでいる家から離れないという状況になる場合もあるため、準備を整えておきましょう。
(1)安定した収入の確保
専業主婦(主夫)などで、就労などをしていない場合は、給与所得などで安定した収入を得られる準備をしておきましょう。
離婚してから働き始めると、最初の給与を得るまでに1~2カ月ほどの期間が必要になるため、その間は無収入で過ごさなければいけません。仕事を探してもよい求人がすぐに見つかるとは限らず、新しい生活を始めるまでに時間がかかることがあります。
安定した収入は、離婚後の住まいにも関係します。賃貸住宅に住む場合は、入居前に審査がありますが、給与などの継続した収入がないと審査に通過しないおそれがあります。給与所得が毎月あれば非正規雇用でも審査を通過できる可能性が高いです。
また、結婚期間中に配偶者の扶養内で働いていた人は、離婚すると扶養から外れるため年金や健康保険を支払う必要がでてきます。給与から差し引かれるものが増えると、手取りが減るため生活に困窮することがあります。離婚後の生活費用がいくらかかるのか事前に計算しておきましょう。
(2)離婚後の住まい探し
離婚した後に、今まで住んでいた家を出る場合は、新しい生活拠点をさがしておくことも大切です。選択肢としては下記の方法があります。
- 結婚時の家に住み続ける
- 実家に住む
- 賃貸のアパートやマンションに住む
- マンションや戸建てを購入して住む
賃貸住宅に住む場合は、時期によって空きが少ないことがあり、家探しに時間がかかることがあります。また、公営住宅は家賃が周辺の賃貸と比べて安く、保証人がいれば安定した収入が無くても入居ができます。しかし、地域によって競争率が高く、応募しても入居できないことがあるため、不動産会社や役所の窓口で事前に確認しておきましょう。
(3)公的支援の相談
離婚した後に子どもの親権者になる可能性が高く、経済的な面で不安があるという場合は、事前に公的支援の相談をしておきましょう。国や市区町村では、ひとり親家庭等にさまざまな支援を行っています。
代表的なものに「児童扶養手当」がありますが、申請すれば子どもを育てるひとり親等に対して全部支給の場合は月額43,070円(2022年4月時点)が支給されます。また、一時的な資金が必要な場合は「母子父子寡婦福祉資金貸付金」を利用することで、無利子(保証人無の場合)でお金を借りることができます。
支援制度は、市区町村ごとに異なる場合があるため離婚前に利用できる公的制度を確認しておき、離婚したあとにすぐに申請できるように準備しておきましょう。
3.離婚準備で注意すべきポイント
離婚準備を行う際は、下記のポイントに注意しましょう。
- へそくりは財産分与の対象になる
- 準備が整う前に離婚の意思を伝えない
これらのポイントに注意しながら離婚の準備を進めることで、離婚手続きのスムーズな進行や、離婚後の生活の早期安定化につながる可能性があります。
(1)へそくりは財産分与の対象になる
結婚している間に貯めたへそくりは、夫婦の共有財産になるため財産分与の対象です。離婚後の生活に必要な金額が貯まったとしても、配偶者から財産分与を請求された場合は、原則2分の1ずつ分け合います。
財産分与を避けるために「財産隠し」をした場合でも、配偶者が弁護士に依頼をして弁護士会照会を行えば、銀行口座の存在や残高が知られてしまいます。
財産隠しが発覚した場合、財産分与が公正に行われなかったとして、損害請求の請求や財産分与のやり直しを請求されるおそれがあります。
(2)準備が整う前に離婚の意思を伝えない
離婚準備が整う前に配偶者に離婚の意思を伝えるのは避けましょう。離婚の意思があることを知った配偶者は、不利な条件で離婚が成立しないように準備を進めるおそれがあるためです。
たとえば、離婚原因が配偶者の不貞行為だった場合、慰謝料の請求を回避するために証拠を隠すかもしれません。不貞行為の証拠がなければ、離婚はできても慰謝料の請求が難しくなります。配偶者に離婚を切り出して、早く話を進めたい気持ちがあるかもしれません。しかし、有利な条件で離婚を成立させるためにも、準備を整えてからにしましょう。
4.離婚準備に不安があれば弁護士に相談してみる
離婚前にしておくべき準備は、その人の状況によって異なります。また、有責行為の証拠集め、調停や離婚をする場合は、専門知識が必要になる場合もあります。離婚準備に不安がある方は、弁護士にご相談ください。
弁護士法人新小岩法律事務所では、予約により平日20:00開始の無料相談も行っております。当事務所は新小岩駅南口徒歩1分の場所にありますので、小岩、新小岩、平井、亀戸、錦糸町など、総武線沿線の地域にお住まいの方は、仕事帰りにぜひご活用ください。当事務所では、上記の地域だけでなく市川、船橋や松戸の方からもご相談をいただいております。
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