公開日:2023.07.31 最終更新日:2024.09.24

離婚時に残された住宅ローンの解決策

住宅 ローン 離婚

夫婦でマイホームを購入したものの、さまざまな理由から離婚を選択することがあります。

結婚期間中に購入したマイホームは夫婦の共有財産になるため、離婚をするときに財産分与をして分け合います。しかし、住宅ローンが残っている場合、残りの金額と住宅の価値のバランスによって、財産分与の進め方が異なるため注意が必要です。

マイホームの財産分与と住宅ローンの処理を円滑に進められるように確認しておきましょう。

1.離婚後の住宅ローンは誰が返済するのか

住宅ローンの返済義務は離婚の有無に関係なく、名義人が負います。家に住んでいた期間が長いからと言って、名義人の配偶者や子どもに返済義務が移ることはありません。

また、夫婦が離婚をするときは財産分与を行い、共有財産を分け合いますが、マイナスの財産は対象外です。そのため、財産分与をしても住宅ローンの返済義務を負わされる心配はありません。

(1)ペアローンは離婚後も返済義務が残る

ペアローンは、一つの不動産に対して2つの住宅ローンを契約する方法です。一定の収入がある夫婦や親子などが、それぞれで住宅ローンを契約すると、名義人が1人の時よりも高額の融資を受けられることがあります。

夫婦がペアローンを組んで家を購入した場合、2人とも住宅ローンの名義人になります。そのため、離婚をしてもお互いに返済義務は残ったままです。

さらに、契約者が互いに連帯保証人になっているケースでは、離婚後にどちらか一方の名義人が住宅ローンを滞納した場合、もう一方が全ての返済義務を負います。

2.住宅ローンが残ったマイホームの財産分与

財産分与とは、夫婦が離婚するときに持っている財産を分け合う制度です。結婚期間中に形成された財産が対象になり、その中にはマイホームも含まれます。財産分与の割合は、原則2分の1ずつです。

しかし、マイホームは現金のように2分の1ずつ均等に分け合うことができません。そのため、「売却をして現金化してから分ける」または「夫婦のどちらか一方が住み続けて、もう一方に代償金を支払う」という方法で財産分与を行います。

たとえば、2,000万円の価値があるマイホームを売却して財産分与を行う場合、割合が2分の1ずつであれば、夫婦でそれぞれ1,000万円ずつ受け取ります。

また、離婚した後も夫がマイホームに住み続ける場合は、夫が妻に1,000万円を渡します。

法的な定めはないので、どちらの方法で進めるかは夫婦間の話し合いで決めます。

ただし、上記の例は住宅ローンがない状態のケースです。住宅ローンが残っている場合は、残債とマイホームの価値のバランスによって財産分与の方法が異なるため確認しておきましょう。

(1)最初に住宅ローンの残債とマイホームの価値を把握する

住宅ローンが残っているマイホームの財産分与を行う場合、最初に住宅ローンの残債とマイホームの価値を確認します。それぞれを確認した結果、住宅ローンの残債よりもマイホームの価値が高ければ「アンダーローン」、反対に住宅ローンの残債よりもマイホームの価値が低ければ「オーバーローン」となります。

■アンダーローン
住宅の価値が住宅ローンの残債よりも高い

■オーバーローン
住宅の価値が住宅ローンの残債よりも低い

(2)アンダーローンの場合の財産分与

マイホームの状態がアンダーローンだった場合の財産分与は次のようになります。

【マイホームを売却する場合】

  1. マイホームの売却代金で住宅ローンを完済する
  2. 残った金額を夫婦で分け合う

【マイホームに住み続ける場合】

  1. マンションの価値から住宅ローンの残債を差し引く
  2. 差し引いた後に残った金額の半分を、住み続ける方が相手に支払う

たとえば、住宅ローンが1,000万円残っている自宅のマンションを2,000万円で売却した場合、売却代金で住宅ローンを完済して残った1,000万円を夫婦で分け合います。財産分与の割合が2分の1ずつだった場合は、500万円ずつです。

一方、離婚した後に夫がマンションに住み続ける場合は、妻に500万円を渡してマンションを取得します。

このように、アンダーローンの場合は、マイホームの価値から住宅ローンの残債を差し引いた残りで財産分与を行います。

■住宅ローンを完済しないと売却ができない

マイホームを売却するときに住宅ローンを完済する必要があるのは、金融機関によって抵当権が設定されているためです。抵当権は、金融機関が不動産を担保にするために設定する権利のことです。抵当権が設定されている不動産は、住宅ローンの返済が滞ると差し押さえのリスクがあります。

抵当権が設定されたままの不動産を購入する人はほとんどいないため、基本的に売却することができないのです。抵当権は、住宅ローンを完済することで抹消できます。マイホームの売却代金だけで住宅ローンが完済できない場合は、自己資金などで補填することでも抵当権を抹消できます。

(3)オーバーローンの場合の財産分与

マイホームの状態がオーバーローンの場合、財産分与は次のようになります。

【マイホームを売却する場合】

  1. マイホームの売却代金を住宅ローンの返済に充てる
  2. 残った住宅ローンを自己資金で補填して完済する

【マイホームに住み続ける場合】

  1. 名義人が完済まで返済を続ける

たとえば、住宅ローンが2,000万円残っている自宅のマンションを1,000万円で売却した場合、自己資金で1,000万円を補填して完済をします。

オーバーローンのマイホームは、マイナスの財産になるため財産分与は行われません。しかし、離婚後、マイホームに誰も住まない場合は、財産分与の際に売却をしたほうが、住宅ローンの負担が無くなります。補填するための自己資金がない場合は売却ができないため、名義人が住宅ローンを完済まで支払うことになります。

また、オーバーローンのマイホームはマイナスの財産のため、離婚後に名義人が住み続ける場合も、相手への代償金などは発生しません。結婚期間中と同じように住宅ローンの返済が続きます。

3.マイホームに住み続ける場合の注意点

離婚後、夫婦のどちらかが住み続けるときは、下記の点に注意しましょう。

  • 住宅ローンの名義人を変更する
  • 連帯保証人を解除する
  • 返済計画をしっかり立てる

適切な手続きができていないと、財産分与でマイホームを取得しても、手放すことになります。また、相手がマイホームを取得した場合も、離婚後に住宅ローンの返済義務を負うリスクがあるため確認しておきましょう。

(1)住宅ローンの名義人を変更する

離婚後に、夫婦のうち住宅ローンの名義人でない方が住み続ける場合は、住宅ローンの名義人を変更する必要があります。住宅ローンの名義人が家を出ていき、もう一方が住み続けた場合、名義人が返済を滞納すると差し押さえのリスクがあるためです。

住宅ローンの名義は、返済途中で変更することが基本的にできません。しかし、配偶者が住宅ローンの残債を引き継ぎ、新たな名義で借り換えることで、名義変更することができます。

なお、借り換えには、金融機関の審査に通る必要があります。安定した収入がない場合は、返済能力が無いと判断され、審査に通過できないことがあります。

(2)連帯保証人を解除する

住宅ローンの連帯保証人になっている場合は、離婚する際に必ず解除しておきましょう。連帯保証人になったままだと、離婚後に元配偶者が住宅ローンを滞納した場合、返済義務を負うことになるためです。

高額な住宅ローンの返済義務をいきなり負わされると、日常生活を送ることが困難になるおそれがあります。

連帯保証人は、ただ解除するということができないため、代わりの人を立てる必要があります。名義人の親族などが連帯保証人になるケースが多いため、離婚協議の際に交渉してみましょう。

(3)返済計画をしっかり立てる

離婚後にマイホームを取得して住み続ける場合、住宅ローンの返済が続きます。毎月の返済額は、離婚前後で変化がないかもしれません。しかし、夫婦共働きだった場合、世帯収入が減少することで返済が難しくなることも考えられます。思い入れのあるマイホームに住み続けたいと思っても、返済を滞納すれば最終的には差し押さえられてしまいます。

そのため、マイホームを取得する場合は、返済計画をしっかりと立てるようにしましょう。

4.住宅ローンでお困りなら弁護士に相談を

マイホームは財産のなかで大きな割合を占めることが多く、住宅ローンも高額なため、財産分与の際にトラブルにつながることも珍しくありません。夫婦だけで住宅ローンの話し合いが難しければ、弁護士に相談してみましょう。

弁護士法人新小岩法律事務所では、予約により平日20:00開始の無料相談も行っております。当事務所は新小岩駅南口徒歩1分の場所にありますので、小岩、新小岩、平井、亀戸、錦糸町など、総武線沿線の地域にお住まいの方は、仕事帰りにぜひご活用ください。当事務所では、上記の地域だけでなく市川、船橋や松戸の方からもご相談をいただいております。

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