公開日:2023.08.27 最終更新日:2024.09.24

マンションの相続が発生したときの手順を解説

相続 マンション

マンションを相続することになったとき、手続きをどのように進めればよいか分からずに、悩む方が少なくありません。

マンションは相続する財産のなかでも高額になるため、正しい手順で進めないと、相続人同士のトラブルにつながりやすくなります。

ここでは、マンションを相続するときに必要な手順を解説していきます。

1.マンションを相続する手順

マンションの相続が発生した場合は、下記の手順で進めていきます。

  1. 遺言書の確認
  2. 相続人調査
  3. 財産調査
  4. 遺産分割協議

それぞれの手順のなかで漏れがあると、相続のやり直しが発生するおそれがあるため、慎重に行う必要があります。

(1)遺言書の確認

相続が発生したときに、はじめにすべきことが遺言書の確認です。相続では、被相続人の意志が最優先されるため、遺言書がある場合は、その内容に沿って遺産が分割されるためです。

被相続人の遺産は、法律で定められた相続人である「法定相続人」が、法律で定められた割合である「法定相続分」で相続することが一般的です。

しかし、遺言書のなかで、法定相続人以外の人に遺産を相続させることや、割合の記載があれば、法定相続分よりも優先されます。

そのため、被相続人の所有するマンションを法定相続分で遺産分割した後に、遺言書が見つかった場合、相続のやり直しが必要になることがあります。

相続のやり直しには手間や時間もかかるため、遺言書の有無は入念に確認しておくことが大切です。

■遺言書の探し方

遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」の2種類があります。それぞれの遺言書の違いと、探し方は次の通りです。

【公正証書遺言】

公正証書遺言は、公正証書として作成された遺言書です。遺言者が口頭で伝えた内容を基に、公証人が作成します。作成にあたり証人が2人必要になるため、偽造や不備による無効のリスクがほとんどありません。

公正証書遺言の原本は、公証役場に保管されているため、公証役場の遺言検索システムで検索ができます。遺言検索システムのデータは全国の公証役場で共有されているため、最寄りの公証役場で確認ができます。

【自筆証書遺言】

自筆証書遺言は、遺言者の自筆で残された遺言書です。条件が漏れなく正確に記載されていれば法的な効果があります。ただし、公正証書遺言とは違い、偽造や改ざんのおそれがあるため、開封前に家庭裁判所による「遺言書の検認」が必要です。

自筆証書遺言は、保管場所が決まっていません。2020年から法務局の自筆証書遺言書保管制度が始まっているため、こちらを利用していれば法務局で遺言書の有無を確認できます。

利用していない場合は、確認することができないため、家の中や関係しそうな場所を探していきましょう。

(2)相続人調査

相続人調査は、被相続人の相続人を明確にする調査です。

相続人調査が必要な理由は、相続が発生した場合、相続人が話し合いをして遺産相続の割合を決める「遺産分割協議」を行うためです。遺産分割協議は、相続人全員の同意がなければ成立しません。相続が終わったあとに新たに相続人が見つかった場合、やり直しが発生するおそれがあるため、相続人調査で正確に把握する必要があるのです。

相続人調査は、被相続人が出生してから死亡するまでの連続した戸籍謄本を確認して、全ての相続人を探し出します。相続人の中に連絡が取れない人や行方が分からない人がいる場合は、不在者財産管理人の選任や失踪宣告などの手続きが必要です。

相続人調査は、かなりの手間と時間がかかります。しかし、被相続人の戸籍謄本は、相続税の申告時や、マンションを相続するときの相続登記の手続きの際に提出を求められるため、省くことはできません。

相続人調査を正確に行うなら、弁護士へ依頼することも検討しておきましょう。相続人の代わりに相続人調査を行うことができるため、手間や時間をかけずに終わらせることができます。

(3)財産調査

財産調査は、被相続人の財産をすべて明確にする調査です。

現金や預貯金、不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も明確にします。相続した後に新たな財産が見つかった場合はやり直しになるため、被相続人しか把握していない財産の可能性も含めて、すべて確認する必要があります。

被相続人が所有しているマンションを確認するには、固定資産税の納税通知書を確認するのが一般的です。固定資産税の納税通知書は、不動産のある市区町村から、毎年6月頃になると送付される書類です。不動産の課税標準額や税率、納期などが記載されています。

毎年1月1日時点で不動産を所有している人に送付されるため、書類の内容を確認することで、被相続人が所有するマンションを把握できます。

■マンションの評価は建物部分と土地部分を分けて計算する

マンションの相続は、相続税評価額を計算していくらの価値があるのか計算します。マンションの相続税評価額は、建物部分と土地部分を分けてそれぞれの計算式で求めます。

  • 建物部分の評価 = 固定資産税評価額 × 1.0
  • 土地部分の評価 = 土地全体の評価額 × 持分割合

建物部分の評価に使う固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に記載されています。固定資産税評価額がそのまま建物部分の評価額になるため、計算は不要です。一方、土地部分の評価は、まず路線価を使って土地全体の評価額を計算します。路線価は、国税庁が毎年発表している1m2あたりの土地の価格です。

マンションの土地全体の評価額が計算できたら、次に被相続人の持分割合(所有する割合)をかけると、土地部分の評価が求められます。

建物部分と土地部分の評価を合計することで、マンションの評価額が計算できます。

■住宅ローンは相続されないことが多い

相続は、被相続人の借金やローンなどマイナスの財産も含まれます。しかし、マンションの場合、住宅ローンを契約する際、団体信用生命保険(団信)に加入しているケースが多く、保険料で完済されることがほとんどです。そのため、マンションを相続する際、住宅ローンを一緒に相続する可能性は低いでしょう。

(4)遺産分割協議

被相続人の財産と相続人が明確になったら、誰がどの財産を相続するかを話し合います。このことを遺産分割協議といいます。

遺産分割協議によって話がまとまると、その内容を基に遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書が有効になるには、相続人全員の署名と実印での押印が必要になるため、一人でも欠けた状態では進めることはできません。

被相続人の遺言書が無かった場合、法律で定められた割合で分割するのが一般的です。この割合を「法定相続分」といい、相続人ごとの割合は下記のとおりになります。

相続人が受け取れる法定相続分の割合
相続人 法定相続分
配偶者のみ 全ての財産を相続
子のみ 全ての財産を相続
(人数で均等に分割)
父母のみ 全ての財産を相続
(2人で均等に分割)
兄弟姉妹のみ 全ての財産を相続
(人数で均等に分割)
配偶者と子 配偶者:1/2
子:1/2
(人数で均等に分割)
配偶者と父母 配偶者:2/3
父母:1/3
(2人で均等に分割)
配偶者と兄弟姉妹 配偶者:3/4
兄弟姉妹:1/4
(人数で均等に分割)

また、マンションは現金のようにきれいに分割できないため、複数の相続人がいる場合は、下記の方法で分割を行います。

遺産の分割方法
分割方法 詳細
換価分割 マンションを売却して、現金化してから分割する方法
現物分割 財産の性質を変えずに、各相続人が相続する方法。
(マンションは配偶者、現金は長男、自動車は長女など)
代償分割 相続人の一人がマンションを相続して、
他の相続人に対して代償金を支払う方法
共有分割 複数の相続人がそれぞれの割合で1つのマンションを共有する方法

遺産分割協議に期限はありません。しかし、相続税の申告が相続発生から10カ月後までが期限になるため、そこまでに終わらせる必要があります。

■財産を相続したくなければ相続放棄をする

マンションを相続したくない場合は、相続放棄を行いましょう。相続放棄は、被相続人の財産を一切相続しないための手続きです。相続放棄をすると、プラス・マイナスの財産に関係なく、全ての財産を相続する権利が無くなります。

「マンションを相続しても住む人がいない」「マンションの価値より借金の額のほうが多い」というケースでは、相続放棄を選択したほうがよい場合もあります。

相続放棄ができるのは、自身のために相続が発生したことを知ったときから3カ月以内です。この期間を熟慮期間といい、期間を過ぎると自動的に財産を相続することになるため注意しましょう。

2.マンションを相続したあとの手続き

マンションを相続した後は、下記の手続きが必要になります。

  • 相続登記
  • 相続税の申告

手続きの期限を過ぎると、ペナルティを科させるおそれがあるため確認しておきましょう。

(1)相続登記の手続き

相続によってマンションを取得したら、相続登記の手続きが必要です。相続登記は、不動産の所有者を被相続人から相続人へ変更する手続きをいいます。

マンションの所有者は、相続しても自動的に変更されないため、登記を管理している法務局で相続登記の手続きを行う必要があります。相続登記を行う際は、登録免許税の納付が必要です。納付額は下記の計算式で求めます。

登録免許税 = マンションの固定資産評価額 × 0.4%(税率)

たとえば、マンションの評価額が2,000万円であれば、登録免許税は8万円です。相続登記は、2024年6月1日から義務化されます。マンションの所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請をしない場合、10万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

過去に相続したマンションも対象になるため、相続登記の申請を忘れずに行いましょう。

(2)相続税の申告

相続したマンションの評価額が一定額以上ある場合は、相続税が発生するため申告が必要です。相続税の税率は、相続する財産の合計額によって下記のように変動します。

相続税の税率
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

法定相続分に応ずる取得金額は、被相続人の財産の評価額から基礎控除額を差し引いた分です。基礎控除額は、相続する財産から無条件で適用される控除となり、次の計算式で求めます。

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

たとえば、被相続人の配偶者と子2人が、評価額3,000万円のマンションと現金1,000万円を相続する場合、基礎控除額は4,800万円になります。

この場合、相続する財産よりも基礎控除額の方が多いため相続税は発生しません。相続人が配偶者だけだった場合は、基礎控除額が3,600万円になるため、相続財産の合計額4,000万円から差し引いた400万円に対して相続税がかかります。

相続税が発生した場合、被相続人が死亡した日の翌日から10カ月以内に被相続人の住所地にある税務署に申告が必要です。

申告が期限に間に合わなかった場合、無申告加算税や延滞税が発生して、多くの税金を収めることになるため忘れずに行いましょう。

なお、相続する財産が基礎控除額以下だった場合は相続税の申告は不要です。

■控除を適用すると節税できる

相続税は、条件を満たすことでいくつかの控除が受けられます。基礎控除に加えて控除を適用することで節税が可能となります。

ただし、控除を受けるには、相続税を申告するときに申請が必要です。自動的には適用されないため注意しましょう。

3.マンションの相続に不安があれば弁護士に相談しましょう

マンションを相続するための手続きは複雑で、思ったよりも時間や手間がかかります。また、相続人が多ければ、遺産分割協議の際、分割方法がまとまらないことやトラブルが起きることも珍しくありません。

もし、マンションの相続に不安がある場合は、早めに弁護士に依頼をしましょう。弁護士に依頼をすれば、マンションの相続に関する手続きや分割方法について法的なアドバイスやサポートを受けられるため、円滑に進められます。

弁護士法人新小岩法律事務所では、予約により平日20:00開始の無料相談も行っております。当事務所は新小岩駅南口徒歩1分の場所にありますので、小岩、新小岩、平井、亀戸、錦糸町など、総武線沿線の地域にお住まいの方は、仕事帰りにぜひご活用ください。

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