公開日:2024.03.21 | 最終更新日:2024.10.19
養育費の未払いを防ぐ方法と未払いが発生したときの対策
離婚により親権を得た人が、経済的に困窮してしまう原因のひとつに養育費の未払いがあります。離婚をするときにしっかりと条件を決めていても、支払いが途中で止まることや一切支払われないというケースも少なくありません。
では、養育費の未払いを防ぐには、どのような対策が必要なのでしょうか。養育費の未払いを防ぐ方法と、未払いが発生した場合の回収方法について解説します。
1.養育費とは
養育費とは、親が子どもを育てるために必要なお金のことです。子どもが健やかに育つには、食べ物や衣服、教育、医療などにお金がかかります。しかし、子どもが小さいうちは、自分でお金を稼いで支払うことができないため、経済的な援助が欠かせません。
そのために、親が養育費を支払い、子どもが安心して成長できる環境を整える必要があるのです。民法でも、親は子どもの生活を支える扶養義務があるとされ、子どもが自立した生活をおくれるまで、この義務を果たす必要があることが規定されています。
養育費は、子どもにとって生きるために必要なお金です。子どもをもつ親であれば、養育費の支払いは重大な義務であり、未払いは許されないことなのです。
(1)親子関係である限り養育費を支払う義務がある
養育費の支払いは、法律上の親子関係が存在する場合に発生する義務です。親子関係は、離婚をして夫婦関係が解消してもなくなりません。
さらには、離婚によって子どもの姓が変わったり、一緒に住まなくなったりした場合でも親子関係は継続します。養育費の未払いは、両親の不仲が原因で発生するケースもありますが、親子関係があれば両親の都合に関係なく支払う義務があります。
(2)養育費は母親が支払うこともある
養育費は、子どもと一緒に暮らしている親に対して、もう一方の親が支払うのが一般的です。子どもと一緒に暮らして世話や教育をする権利を監護権といい、日本では母親が得る事例が多くなっています。そのため、養育費は、父親が母親に対して支払うものと思われがちです。
しかし養育費の支払いは監護権によって決まるため、収入や性別は関係ありません。仮に父親が監護権を得て養育費を請求した場合は、母親が支払うことになります。
2.養育費の未払いを防ぐための方法
養育費の未払いは、事前に対策をしておくことで防げる可能性が高くなります。
以下は、養育費の未払いを防ぐためにしておくべき一般的な対策です。
- 離婚協議書を公正証書にしておく
- 面会交流に応じる
- 高額な養育費を設定しない
状況によっては、一刻も早く離婚してしまいたい気持ちがあるかと思います。しかし、養育費の未払いが起きてしまうと、回収は簡単ではありません。離婚後の生活をスタートさせるためにも、事前の準備をしっかりと整えておきましょう。
(1)離婚協議書を公正証書にしておく
養育費の未払いを防ぐ方法として最も効果が高いのが、公正証書の作成です。公正証書は、法的効力と強制力を持った公文書です。離婚条件を公正証書にしておけば、取り決めた養育費が支払われない場合に、裁判をしなくても強制執行をして回収できます。
離婚の話し合いで決まった条件は、離婚協議書に記録しておくケースが多いのですが、離婚協議書のままでは法的効力がありません。養育費の未払いを回収するには、双方で話し合いをして解決します。それでもだめなら調停や裁判での請求が必要です。離婚協議書があれば有利に進む可能性が高くなりますが、回収できるまでに時間がかかることがあります。
しかし、公正証書を作成しておけば、最初から強制執行ができるので、養育費の回収に手間や時間がかかりません。また、強制執行があることを相手側が理解していれば、養育費の未払いが起きにくくなるでしょう。
なお、公正証書は、公証役場で作成が可能です。
(2)面会交流に応じる
監護権を持たない親には、子どもと定期的な面会や交流ができる面会交流権があります。面会条件は、話し合いのときに決めておきますが、しっかりと守ることで養育費の未払いを防ぐ効果があります。
理由としては、子どもとの交流で親子関係が良好に保たれることで、親としての責任感が高まるためです。また、子どもから近況などを直接聞き、養育費の必要性を感じることができれば、未払いが発生しにくくなるでしょう。
反対に、子どもとの面会が条件通りに行われない場合や、面会に全く応じなければ、相手側から養育費の減額を要求されるリスクもあります。
(3)高額な養育費を設定しない
養育費の金額には法的な定めはありません。夫婦が合意をすれば、金額は自由に決められます。しかし、収入に見合っていない金額を設定すると負担が大きくなり、結果的に未払いが発生するリスクが高くなります。そのため、養育費の未払いを防ぐには、金額の設定を慎重に行うことが大切です。
養育費の目安は、裁判所のWebサイトにある「養育費・婚姻費用算定表」で確認できます。養育費の金額について、話し合いがまとまらない、少しでも多くほしいという場合は、弁護士にご相談ください。
3.養育費の未払いが発生したときの対策
万が一養育費の未払いが発生した場合、下記の方法が有効です。
- 公正証書があれば強制執行を行う
- 養育費請求調停を申し立てる
養育費の支払いは親の義務ですが罰則はありません。1円も支払わなくても懲役や罰金が科せられることがないのです。そのため、未払いが発生したらきちんと対策をして回収する必要があります。
(1)公正証書があれば強制執行を行う
養育費に関する取り決めを公正証書に残している場合は、強制執行を行い未払い分の回収をします。強制執行は以下の手順で行います。
- 公証役場に行き、公正証書の正本に「執行文」の付与をしてもらう
- 執行文の付与と同時に送達証明書の申請をする
- 公証役場が相手側に公正証書の正本を送達する
- 公正証書の正本が送達されると「送達証明書」が発行される
- 家庭裁判所に債権差押命令の申し立てをする
申立てには、口座預金の差押であれば銀行名と支店名が必要です。給与の差押であれば、事業者の住所と社名が必要になるため、あらかじめ準備しておきましょう。
なお、強制執行の手続きに不安がある人は、一度弁護士にご相談ください。
(2)養育費請求調停を申し立てる
公正証書がない状態で養育費の未払いが発生した場合は、裁判所に養育費請求調停を申し立てましょう。養育費請求調停は、裁判所を通して、養育費の支払いを相手に求めるものです。
調停では、調停委員が間に入り、養育費の支払い意志の有無、金額、支払い期限などについて双方と面談を行います。その後、調停委員が問題の解決に向けた解決策を提案し、双方が提案に合意をすれば終了です。
双方だけで話し合いをしても、相手が養育費を支払わない場合は、養育費請求調停をすることで、解決できる可能性が高くなります。
ただし、1回の調停で合意が得られなければ、2回、3回と調停が開催されます。調停の日程は裁判所が決定し、ペースはおおよそ月に1回です。調停が長引くほど養育費を受け取るまでの期間が長くなるおそれがあるため注意が必要です。
早期解決を目指すのであれば、弁護士への依頼を検討しましょう。
4.弁護士に相談する
養育費の未払いは、対策をすることで防げる可能性が高くなります。しかし、対策をすれば未払いが絶対に起きないというわけではありません。未払いが起きてしまったときは、適切な方法で請求をして回収する必要があります。
養育費の未払いについて、対策や回収に不安がある人は、早めに弁護士にご相談ください。
弁護士法人HALでは、予約により平日20:00開始の無料相談も行っております。当事務所は新小岩駅南口徒歩1分の場所にありますので、小岩、新小岩、平井、亀戸、錦糸町など、総武線沿線の地域にお住まいの方は、仕事帰りにぜひご活用ください。
当事務所では、上記の地域だけでなく市川、船橋や松戸の方からもご相談をいただいております。
また、土日の相談にも対応しておりますので、お気軽にご連絡ください。