公開日:2024.12.10
離婚で家を財産分与する方法は?ポイントや注意点を解説
離婚時の財産分与は、離婚後の生活を保障するために大切な制度です。特に、家やマンションなどの不動産は、財産分与の対象となる財産の中でも金額が大きく、分与方法を誤ると将来に大きな影響を及ぼす可能性があります。
しかし、財産分与に関する正しい知識がなければ、不動産が公平に分配されないなど、離婚後に自分が損をするリスクがあります。また、住宅ローンの処理や不動産の名義変更など、専門的な知識が必要な事項も多くあります。
この記事では、不動産の財産分与について正しく理解するために、財産分与の基本的な考え方、不動産を財産分与する具体的な方法、そして注意すべきポイントを詳しく解説します。
Contents
1.財産分与とは
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を、離婚の際に公平に分け合う制度です。
公平な分配という考えが制度の基本にあるため、共働き、片働き(一方が主夫/主婦)に関係なく、離婚するときに共有財産を原則2分の1ずつ分け合います。
また、夫婦いずれか一方の名義となっている財産でも、夫婦が協力して形成されたと判断されるものは財産分与の対象です。
例えば、夫の名義で土地や家を購入し、夫の収入から住宅ローンを返済していた場合であっても、婚姻期間中に取得したのであれば共有財産として扱われます。
なお、婚姻期間中に築いた財産を分け合うことを目的にした財産分与は「清算的財産分与」と呼ばれます。離婚における財産分与というと、通常はこの清算的財産分与のことを指します。
(1)清算的財産分与以外の財産分与について
財産分与には、先に説明した清算的財産分与の他にも、目的に応じて異なる種類があります。財産分与の金額を決定する際の重要な考え方となりますので、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
■扶養的財産分与
扶養的財産分与は、夫婦の一方が離婚後の生活に経済的な不安を抱える場合、もう一方が生活費を支援することを目的とした財産分与です。
例えば、長年専業主婦(主夫)として家事や育児に専念してきたため就労経験が少なく、すぐに収入を得ることが難しい場合や、高齢のため再就職が困難な場合などが該当します。また、病気や障害により就労が制限される場合にも、扶養的財産分与が認められることがあります。
扶養的財産分与の金額は、配偶者の年齢、健康状態、職歴、技能、資格の有無などを考慮して、再就職までの期間や将来の収入見込みなどを踏まえて決定されます。
ただし、扶養的財産分与は清算的財産分与や慰謝料を受け取っても賄えない場合の補助的なものとして考えられています。そのため、金額は支払う側の負担にならない範囲で決まるのが一般的です。
■慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与は、離婚によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料を、財産分与の中に含めて請求するものです。
本来、慰謝料と財産分与は性質が異なるため別々に請求するのが原則ですが、慰謝料的財産分与では、慰謝料の請求と財産分与を一緒に解決できます。
例えば、預貯金2,000万円の清算的財産分与に加えて、慰謝料300万円を請求する場合、合計2,300万円を慰謝料的財産分与として一括で解決するといった方法が取られます。
離婚に伴う財産分与と慰謝料を一括して解決することで、当事者双方の負担を軽減し、円滑な解決につながります。
■離婚までの生活費(婚姻費用)の精算
離婚までの生活費(婚姻費用)の清算とは、別居期間中に支払っていなかった生活費(婚姻費用)を財産分与の際に精算する方法です。
婚姻費用とは、夫婦の別居期間中の生活費を指し、未成年の子どもがいる場合には子の生活費も含まれます。夫婦が別居した場合でも扶養義務は継続しているため、収入の多い方がもう一方に対して生活費を支払う必要があります。
しかし、実際には婚姻費用を請求した時点からの分しか認められないケースが多く、請求時点より前の分は未払いとなってしまいます。そのため、このような不公平を解消するために、財産分与の際に婚姻費用の未払い分を含めて精算できます。
(2)財産分与の対象となる財産
夫婦が婚姻期間中に形成した財産は、どちらの名義であっても財産分与の対象です。
財産分与の対象になる財産は、具体的には以下のようなものがあります。
- 現金
- 預金
- 有価証券
- 不動産(土地、戸建て、マンション)
- 婚姻中に契約した生命保険や学資保険の返戻金
- 車
- 家具、家電
- 退職金
(3)財産分与の対象外となる財産
財産分与では、全ての財産が分与の対象となるわけではありません。夫婦が協力して形成したものではない財産は「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象外となります。
特有財産には以下のようなものが該当します。
- 結婚前から所有していた財産(預金、土地、家、株式など)
- 婚姻中に親から受け取った贈与や遺産
- 別居後に単独で形成した財産
特有財産は、夫婦の共同生活とは関係なく形成されたものと判断されるため、離婚時に分ける必要はありません。
2.不動産を財産分与する方法
戸建てやマンションなどの不動産は、共有財産の中でも金額が大きいため分与をめぐってトラブルになりやすい傾向があります。そのため、離婚時には法律に基づいて適切に対応する必要があります。
不動産を財産分与する方法には、主に以下の2つがあります。
- 不動産を売却して現金化してから分配する
- 夫婦のいずれかが不動産を取得して代償金を支払う
それぞれの方法について、以下で詳しく解説します。
(1)不動産を売却して現金化してから分配する
不動産を財産分与する方法の一つとして、家やマンションを売却して現金化してから分配する方法があります。現金化することで財産を正確に評価でき、夫婦間で公平に分けやすくなります。
この方法はシンプルでわかりやすい解決策ですが、売却予定の不動産にローンが残っている場合は注意が必要です。
■オーバーローンの場合
オーバーローンとは、不動産の売却金額よりも住宅ローンの残高が多い状態のことです。財産分与は夫婦が婚姻中に形成した「プラスの財産」を分け合う制度であり、マイナスの財産(負債)は対象とはなりません。そのため、オーバーローンの不動産は、基本的には財産分与の対象外です。
離婚を機に不動産を売却する場合は、まず住宅ローンを完済する必要があります。これは、住宅ローンが残っている不動産には金融機関による抵当権が設定されており、売却するためにはこの抵当権を抹消しなければならないためです。
一般的な解決方法としては、売却代金をまずローンの返済に充て、不足分は財産分与の対象となる預貯金などの財産から補充します。その上で、残った財産を改めて財産分与の対象として分配することになります。
■アンダーローンの場合
アンダーローンとは、不動産の売却金額が住宅ローンの残高を上回っている状態のことです。つまり、売却することで利益が出る状態を指します。
この場合の財産分与は、以下の手順で進められます。
- 売却代金で住宅ローンを完済する
- 不動産売却時に必要な仲介手数料や登記費用などの諸費用を支払う
- 残った金額を夫婦で分け合う
不動産の売却には一般的に6カ月程度の期間が必要になるため、早めの準備が必要です。また、売却価格は市場の状況や買主との交渉次第であり、必ずしも希望の金額で売却できるとは限らない点に注意が必要です。
(2)夫婦のいずれかが不動産を取得して代償金を支払う
夫婦のうちの一方が離婚したあともマイホームに住み続ける場合は、一方が不動産を取得し、その代わりに相手方へ代償金を支払う方法があります。
たとえば、評価額5,000万円のマンションを夫が取得する場合、財産分与の原則に従って、半額の2,500万円を妻に代償金を支払います。
この方法は、子どもの教育環境を維持したい場合や、現在の生活スタイルを大きく変えたくない場合に有効な選択肢となります。ただし、不動産の価値が高額な場合、取得する側は多額の現金を用意する必要があるため、資金面での準備が重要です。
また、マイホームに住み続ける方が名義人ではない場合、不動産の名義を変更する必要があります。名義変更をしないと、相手方が勝手に不動産を売却してしまうおそれがあるためです。住宅ローンが残っている場合は、名義人でない方が住み続けることは住宅ローンの契約違反となる場合があるため注意が必要です。
住宅ローンの名義を変更するには、再度審査を受ける必要があり、収入が少ない場合は承認されない可能性があります。
(3)ペアローンなどで共有名義の場合の財産分与方法
ペアローンは、一つの不動産に対して夫婦がそれぞれローンを組む方法で、お互いが相手の連帯保証人になります。
単独で借りるよりも借入額を増やせる、夫婦ともに住宅ローンの控除を利用できるなどのメリットがありますが、ペアローンで購入した家は共有名義の財産となるため、離婚をする際には以下のようなトラブルにつながるリスクがあります。
- 売却する場合は2人の合意が必要
- 名義人のどちらかが亡くなった場合に相続が複雑になる
したがって、離婚時はペアローンを解消するように動くのが合理的です。
アンダーローンの状態であれば、住宅を売却しローンを完済することで解決します。オーバーローンの場合は、ローンを一本化する、共有名義のままローンを返済するなどの方法がありますが、それぞれリスクがあります。
離婚時のペアローン解消については、弁護士などの専門家に相談する選択肢も検討しましょう。
3.不動産を財産分与する際の流れ
ここでは、離婚時に不動産を財産分与する際の流れを解説します。
(1)不動産の価値を把握する
不動産の財産分与は、購入時の価格ではなく、原則として財産分与を行う時点での価値を元に行います。不動産の価値は、不動産会社や不動産鑑定士に依頼して確認します。不動産会社に依頼する際は、複数社に査定してもらう方が安心です。
また、住宅ローンが残っている場合は、残債や名義人についても確認しておきましょう。
(2)不動産の分配方法を決定する
動産を売却するのか、どちらかが家に住み続けるのか、ペアローンをどう処理するかなど、現在の状況に合わせて分配方法を決定します。
財産分与の原則では不動産も2分の1ずつの分配となりますが、夫婦間の話し合いで合意ができれば、その割合を変更することも可能です。
たとえば、一方が不動産を取得する代わりに、他の財産を相手方に多めに分配するなど、柔軟に対応できます。
財産分与の内容が決定したら、その内容を離婚公正証書として残しましょう。
話し合いで決めた内容も、必ず守られるとは限りません。トラブルが発生した際に公正証書があれば、裁判を経ずに強制執行で財産の差し押さえが可能になります。
財産分与の内容を離婚協議書に記載するという方法もありますが、離婚協議書は私文書になるため、法的拘束力が低いというリスクがあります。
(3)売却金の分配や代償金の支払いを行う
離婚の成立後に取り決めた条件で財産分与を行います。不動産を売却した場合は売却にかかった諸経費を差し引いた残金を分配します。また、どちらかが家に住み続ける場合は、不動産評価額の半額を代償金として相手に支払います。
なお、具体的な支払い時期や方法については当事者間で決められますが、後々のトラブルを防ぐため、必ず書面で取り決めを残すようにしましょう。
財産分与の請求期限は離婚成立後から2年以内です。2年経過後は財産分与の請求ができなくなる点に注意してください。
離婚成立から2年が経過すると裁判所への申し立てができなくなり、財産を公平に分けられない可能性があります。相手との話し合いが長引いている間に2年が過ぎてしまったという状況を避けるために、財産分与の請求期限は把握しておきましょう。
4.不動産の財産分与でお悩みなら弁護士にご相談を
財産分与は法律で定められた権利ですが、離婚の際に当事者間だけで話し合いをすると、まとまらないケースも珍しくありません。また、離婚成立から2年が経過すると財産分与の請求権が消滅してしまい、最悪の場合、財産を受け取れません。
このようなリスクを回避するためにも、早めに弁護士に相談をして、自分の財産を適切に守りましょう。
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