公開日:2025.04.04

離婚後も安心して持ち家に住み続ける方法

離婚時に持ち家がある場合、住み慣れた環境を保ちたい、子どもの学校や生活環境を変えたくないという理由から、その持ち家に住み続けることを選ぶケースも少なくありません。

しかし、離婚後も持ち家に住み続けるには、いくつか注意すべき点があります。

特に元配偶者名義の家に住み続ける場合、勝手に家を売られることや、住宅ローンの滞納による強制退去といったリスクがあります。また、元配偶者とのトラブルなど、安全面での心配も少なくありません。

離婚後も安心して持ち家に住み続けるには、適切な準備や対策が必要になるため、確認しておきましょう。

離婚後も持ち家に住み続けるための準備

持ち家についての話し合いを進める際の大まかな流れは、次の3点です。

  • 持ち家の名義(所有権)の確認
  • 夫婦間で話し合い、合意を得る
  • 公正証書など合意内容を書面化する

それぞれの内容について詳しく解説します。

持ち家の名義(所有権)の確認

持ち家が夫婦のどちらか一方もしくは夫婦の共同名義と考えている場合でも、今一度、権利関係を確認しておきましょう。

先祖代々の土地を利用して建物を建てた場合には、相続登記がされておらず土地の名義が祖父母のままといったケースも珍しくありません。単独所有と思っていた土地が、他者との共有名義となっていたというケースもあります。

土地や建物といった不動産の権利関係は、登記簿謄本(全部事項証明書)で確認できます。登記簿謄本は、法務局の窓口もしくは郵送やインターネット上で受け取ることが可能です。
登記簿謄本の「甲区」の記載内容を見れば、土地や建物の所有者がわかります。持ち家についての話し合いを始める前に、登記簿謄本で自分が考えている権利関係と間違いがないのかを確認しておきましょう。

夫婦間で話し合い、合意を得る

夫婦である婚姻期間中に購入した持ち家は、原則として夫婦の共有財産となります。離婚後に共有財産である持ち家をどのように扱うかは、離婚条件の一つとして夫婦の合意によって決めなければなりません。
持ち家の取り扱いだけでなく、預貯金など他の財産分与や慰謝料、養育費などの離婚条件は、口約束で決めるのではなく、合意ができたら離婚協議書を作成します。離婚協議書とは、離婚の際に作成する離婚条件をまとめた書面のことを言います。
夫婦間の話し合いでまとまらない場合は、離婚調停や裁判で持ち家をどうするかを決めることになります。

公正証書など合意内容を書面化する

夫婦間の合意ができた場合は、離婚協議書を公正証書にしておくと安心です。
公正証書とは、公証人が依頼を受けて作成する公文書で、法律関係や事実に関する事項を証明するために利用されます。公正証書は、証拠としての価値が高い書類です。公正証書を作成しておくと、話し合いで決めた事項について後から争いが起こっても、内容を覆される可能性は少なくなります。また、公正証書で定めた内容に違反した場合には、強制執行の申立てができるようになります。
持ち家に関して公正証書に記載すべき事項は、次のとおりです。

  • どちらの所有とするのか
  • 住宅ローンの支払方法
  • 他の離婚条件との調整内容 など

持ち家の名義人と居住者の不一致によるリスク

婚姻時から夫名義の持ち家に夫婦で居住していた場合、離婚後に夫が家を出て妻が住み続けると、持ち家の名義人と居住者が一致しません。

持ち家の名義人と居住者が一致しない場合、次のようなリスクがあります。

  • 住宅ローンの規約違反に該当する可能性がある
  • 無断売却や住宅ローンの滞納による強制退去

それぞれのリスクの内容について詳しく解説します。

住宅ローンの規約違反に該当する可能性がある

住宅ローンの規約では、ローンを負担する人(持ち家の名義人)と実際の居住者が一致していることが条件とされているのが通常です。

持ち家の名義人と居住者が不一致となった場合に、金融機関への報告を怠ると住宅ローンの規約違反となり、ローン残高の一括請求を受ける可能性があります。離婚に伴い、名義人と居住者が一致しなくなる場合には、事前に金融機関に相談が必要です。

金融機関に相談しても、要望を受け入れてもらえない場合は、住宅ローンの借り換えをして、居住者に所有権を移転するのが最も安全な方法です。

しかし、ローンの借り換えを行うには審査が必要となるため、夫から妻への借り換えを認めてもらうのは、厳しいケースも多いでしょう。

無断売却や住宅ローンの滞納による強制退去

持ち家の名義を元の配偶者のままにしておくと、持ち家を勝手に売却されてしまう可能性もあります。持ち家を売却されてしまった場合、新しい買主に対して居住する権利を主張することはできないので、強制退去となる可能性が高いでしょう。

また、元の配偶者が住宅ローンを返済する持ち家に住み続けた場合、元の配偶者が住宅ローンを滞納すると、最終的には持ち家が競売にかけられて退去させられることになります。
名義人と居住者が一致しない状態が続くと、いつ強制退去させられるかもしれないというリスクを抱え続けることになってしまいます。

離婚後も安心して持ち家に住み続けるための対策

これまでの話を踏まえて、離婚後も安心して持ち家に住み続けるための対策としては、次のようなものが挙げられます。

  • 名義人と居住者を一致させる
  • 鍵の交換・セキュリティ強化
  • 身近な人(近隣や親族)への情報共有
  • 身の危険を感じたらすぐに警察に相談

それぞれの対策について解説します。

名義人と居住者を一致させる

無断売却やローンの滞納による強制退去のリスクを防ぐには、名義人と居住者を一致させるのが何より重要です。
こうしたリスクを軽減するには、公正証書で売却を禁止する、ローンの返済を管理できる状態にしておくなどの方法が考えられますが、強制退去を防ぐ絶対的な効果はありません。

名義人と居住者を一致させるには、住宅ローンの借り換え、ペアローンの一本化などの手続きが必要です。いずれにしても、居住者に残ローンを負担するだけの信用力が求められるため、手続きは簡単ではありません。

鍵の交換・セキュリティ強化

元配偶者が勝手に持ち家に立ち入るのではないかと心配な場合には、公正証書や離婚協議書で元配偶者に対してむやみに持ち家に立ち入らないというような取り決めをすることもできますが、元の配偶者が約束を守るとは限りません。約束が守られない可能性があるのなら、セキュリティの強化も検討しましょう。

家に関してセキュリティを強化する方法としては、次のものが挙げられます。

  • 鍵の交換する
  • 防犯カメラを設置する
  • インターホンをモニター付きに変更する
  • 警備サービスを利用する

家の状況や元の配偶者との関係に応じて、必要な方法を検討してみてください。

身近な人(近隣や親族)への情報共有

元配偶者とのトラブルを抱えているのなら、身近な人と情報共有しておくことも重要です。
近隣の住民に相談しておけば、問題が起こったときに駆けつけてくれたり、警察に通報してくれたりなどの協力が期待できるでしょう。親族は、自宅が危険な場合の逃げ場所ともなります。

身の危険を感じたらすぐに警察に相談

元配偶者との関係で身の危険を感じたらすぐに警察に相談してください。

ただし、残念なことに警察に相談するだけでは何も動いてくれないこともあります。裁判所への申立てで接近禁止命令を獲得しておけば、何かあったときにはすぐに警察が動いてくれるようになります。

接近禁止命令の申立てについては、弁護士までご相談ください。申立ての手続きには専門的知識が求められるため、離婚問題に詳しい弁護士のサポートを受けましょう。

持ち家に関する離婚時のトラブルは弁護士法人HALにお任せください

離婚後に安心して持ち家に住み続けるには、離婚の話し合いの段階から専門的知識のある弁護士に相談しておくことが重要です。弁護士のサポートを受けながら手続きを進めることで、離婚後に問題が起こるリスクも軽減できます。

弁護士法人HALでは離婚問題についての無料相談を受け付けています。土日を含む午前9時から午後8時まで、電話で無料相談のご予約が可能です。平日夜間や土日の相談にも対応しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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