公開日:2025.04.04
離婚時のペアローン問題を解消する3つの方法

夫婦で住宅ローンを組む「ペアローン」は、共働き世帯の増加や不動産価格の高騰を理由に利用されるケースが増えています。
しかし、ペアローンは、夫婦がそれぞれに住宅ローンの債務者となるだけでなく、お互いに連帯保証人となるため、離婚する際にトラブルの原因となることも少なくありません。
トラブルを避けて円満に離婚するには、マイホームの取り扱いを早期に決定し、金融機関への相談や借り換えの検討、専門家を交えた話し合いなど計画的な対応が必要です。
ここでは、ペアローンを組んでいる状態で離婚する場合に生じる問題点と、円満に解決するための具体的な対策について解説します。
Contents
ペアローンの返済義務は離婚後も続く
離婚をした場合でも、ペアローンに関する契約および返済義務はそのまま継続します。
金融機関の立場からすれば、婚姻関係の変化に関わらず、契約者である両者に対して返済を求める権利を持ち続けるためです。
離婚後は、住居の確保、家具家電の購入、引越し費用といった新たな生活基盤を整えるための費用が発生します。そこにペアローンの返済義務が加わることで、経済的な負担は一層大きくなります。
また、子どもがいる場合は養育費も必要となり、経済的な余裕がさらに失われていきます。このような状況でペアローンの返済を継続していくことは、非常に厳しい現実をもたらす可能性があります。
滞納をすると連帯保証人に返済義務が移る
ペアローンを組んでいる場合、夫婦それぞれが独立した債務者であると同時に、互いに連帯保証人となっています。
そのため、一方がローンの返済を滞納した場合、金融機関は連帯保証人に対して返済を求めます。この仕組みは離婚後も変わることはありません。
そのため、相手の収入が不安定になったり、意図的に返済を拒否したりするケースでは、突然多額の返済義務を背負うリスクがあります。
また、連帯保証人としての返済実績は信用情報に記録されるため、相手の滞納によって将来的な借入れにも悪影響を及ぼす可能性があります。新たな住宅ローンやカードローンの審査にも影響するため、離婚後の生活再建を妨げる要因ともなり得るのです。
売却には共有者の同意が必要
ペアローンで購入したマイホームは、通常「共有名義」となっています。
マイホームを売却してペアローンを解消する場合、相手が同意しなければ手続きを進めることはできません。特に離婚の場合は感情的な対立があるケースも多く、相手の同意を得られずに売却が頓挫してしまうことがあります。
共有名義は離婚後も残るため、売却できないまま離婚が成立すると、その後も元夫婦間で不動産に関する問題が継続します。このため、離婚協議の早い段階でマイホームの取り扱いについて合意を形成することが極めて重要です。
離婚時にペアローンを解消する3つの方法
離婚時にペアローンを解消するためには、下記の3つの方法があります。
- マイホームを売却して財産分与を行う
- 住宅ローンの一本化を実施する
- 住宅ローンの借り換えを行う
マイホームを売却して財産分与を行う
離婚時にペアローンを解消するためには、マイホームを売却して財産分与を行うのが一番シンプルな方法です。双方が売却に同意している場合は、契約上も、問題が少ない方法となります。
ただしここで問題となるのが、住宅ローンの残債とマイホームの市場価値のバランスです。
マイホームの市場価値が住宅ローンの残債を上回っているアンダーローンのときは、売却代金でローンを返済することができるため問題は特にありません。
しかし、住宅ローンの残債がマイホームの価値を上回るオーバーローンのときは、基本的に売却ができません。また、売却ができたとしても、残債から売却金額を差引いた残額の返済義務は残ることになります。
このように、オーバーローンの場合は売却しても住宅ローンを完済できないため、残りの債務をどのように返済するかが大きな課題となります。
この状況では以下のような対応策が考えられます。
- 差額を自己資金で補填: 両者が合意のうえで貯蓄や親族からの援助などで不足額を用意し、売却と同時に返済する
- 金融機関との交渉: 一部債務免除や返済計画の見直しについて金融機関と交渉する(ただし、容易には応じてもらえないケースが多い)
- 個人間の合意形成: 売却後の残債を元夫婦でどのように分担するか明確な合意書を作成する(例:50%ずつ負担するなど)
いずれの場合も、法律の専門家や不動産の専門家、そして金融機関との十分な協議が必要です。特にオーバーローンの状態で離婚を進める場合は、将来的な支払いトラブルを避けるために、詳細な合意内容を公正証書等の書面でで残しておくことが重要です。
住宅ローンの一本化
離婚時にペアローンを解消する方法としては、住宅ローンの一本化もあります。
住宅ローンの一本化とは、それぞれが契約しているペアローンを夫婦のどちらか一方にまとめることをいいます。離婚後も当該住宅に住み続ける人が、もう一方の債務を引き継ぐことが一般的です。
この場合は、夫婦間の同意だけでなく、債務を引き継ぐことによる返済能力について、金融機関の再度の審査が必要です。引き継ぐ人の収入が不安定な場合や、金融機関との交渉がうまくいかない場合は、他の方法を検討することが大切です。
住宅ローンの借り換え
離婚時にペアローンを解消するためには、住宅ローンの借り換えという方法も有効な選択肢です。
特に、金融機関との交渉による住宅ローンの一本化がうまくいかない場合は、住宅ローンの借り換えを検討した方が現実的な解決策となるでしょう。
ただし、新たに住宅ローンを契約する必要があるため、従来はペアローンで夫婦二人の収入で返済計画が立っていたものが、離婚後は一人の収入だけで返せるかどうかが問われるため、審査に通らない可能性もあります。
借り換えによるローンの一本化を成功させるには、以下の準備が必要です:
- 事前に自身の返済能力を客観的に把握しておく
- 複数の金融機関に相談し、金利などの条件を比較検討する
- 必要に応じて親族を連帯保証人に設定するなどの対策を検討する
- 借り換えに伴う諸費用(手数料、保証料、登記費用など)の準備をする
住宅ローンの借り換えは、計画的な対応と十分な準備期間が必要です。早めに専門家のアドバイスを受けながら、最適な借り換え条件を模索することをおすすめします。
ペアローンの解消で起こるトラブル
離婚時のペアローン解消は、多くの夫婦が直面する深刻な課題です。単なる手続きの問題ではなく、経済的な将来に大きく影響する重要な問題であり、様々なトラブルが発生する可能性があります。
相手の同意が得られない
ペアローンの解消で起こるトラブルの最大のものは、相手の同意が得られないことです。
ペアローンを解消する方法は、夫婦で合意しないと進められないということが大問題です。
離婚しようという不安定な状態で合意しなければならないのはかなりの重荷になります。特に、離婚協議中の感情的対立により、本来は双方にとって最適な住宅・ローン解決策の選択が困難になるケースもあるかもしれません。
さらには、離婚のための財産分与の交渉が長引くこともありますが、その間も当該ローン返済は継続しています。このため思わぬ経済的負担が増大することも、十分にありえます。
現在所有している共同名義の物件の売却には、共同名義人全員の同意が必要です。一方が不動産の売却を望んでいても、もう一方が拒否すれば、売却は全くできません。片方が住み続けることを希望する場合は、収入面などを踏まえてお互いが納得できるようにとことん話し合うことが必要です。
話し合いが平行線になる場合は、離婚前であれば離婚調停、離婚後であれば共有分割請求を行うことで解決を図ることになります。これらの手続を行えば、共有状態を解消することが可能ですが、これらにも困難がつきまといます。
自己資金・収入の不足
ペアローンの解消で起こるトラブルとして、自己資金や収入の不足も関与します。
物件の売却価格よりも残債のほうが大きい場合は、オーバーローンとなり、資金の問題がつきまといます。
自己資金と残債の額とにどの程度の差異があるかが、自己資金で対処できるかどうかを左右することになります。購入時と比べて近隣相場が大きく下がった場合や、ローンの返済期間が長い場合、ローン契約に設定されている金利が高い場合にはオーバーローンになるリスクも高くなります。
また住宅ローンの一本化や借り換えを希望しても、自分の収入不足で金融機関の審査に通らないということもありえます。ペアローン契約時より、自身の収入が大幅にアップしていれば問題ありませんが、あまり変わらない場合は、注意が必要です。
ペアローンのトラブルは弁護士に相談して早期解決
ペアローンの解消で起こるトラブルにはいろいろなものがあり、個人では対処しきれない問題も数多くあります。
このような場合は、弁護士に相談して早期解決を図るのも有効です。
弁護士への相談をためらう理由の一つに、費用への不安があります。本来なら早期に解決できたはずの問題が、相談が遅れたことで深刻化してしまい、解決までに時間がかかることも少なくありません。
弁護士法人HALでは、どのような悩みも気軽にご相談いただけるよう、初回相談を無料としております。費用の心配をせずに問題解決までの道筋や見通しについて弁護士とご相談いただけます。
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